2024年12月23日( 月 )

【地場ゼネコン特集】好決算続くも建設投資減少見込み コロナ禍への対応は(後)

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 建設不況を経て生き残った地場企業の体質はもともと強固だ。福岡地区上位各社は好決算を叩き出し、有利子負債削減や内部留保に余念がない。「天神ビッグバン」を含め多くの再開発計画もある。こうしたなかで発生した、新型コロナウイルスの影響に今後いかに対応していくか、各企業の施策が問われる。

再開発が本格化

 そのようななか、福岡市および近郊では再開発案件が相次いで行われる。「天神ビッグバン」第1号案件の天神ビジネスセンターに通信販売大手のジャパネットたかたを傘下に置くジャパネットホールディングスが、東京の拠点機能の一部を移転させる。旧大名小学校跡地の再開発は、西鉄と積水ハウス、三菱地所の連合がオフィス・ホテルを含む24階建ての複合施設を建設。19年7月8日に着工され、目玉とされたホテルは、九州初となる「ザ・リッツ・カールトンホテル福岡」。ほかにも、「天神一丁目地区計画」の原案も公表された。

香椎駅前周辺土地区画整理事業

 香椎駅前の再整備も進んでいる。事業計画から20年以上にわたる案件「香椎駅前周辺土地区画整理事業」だ。同事業は、西鉄貝塚線の鉄道高架化をはじめ、幹線道路や区画道路、駅前広場などの一体的な整備により総合的な要諦としてのまちづくりを図ろうというもの。交通の強化に加え、既存商業の高度化や居住環境の向上を目指すとともに、千早エリアと機能分担および連携した広域拠点の形成を目指している。

 公共施設計画では、幹線道路として既存の香椎駅前線に加え、香椎駅西線、香椎駅北線、千早香椎線、香椎駅南線を配置。さらに、JR香椎線西側に3,400m2の駅前広場、西鉄香椎駅西側に2,500m2の駅前広場と東側に400m2の交通広場を設けて道路網を整備する。事業施工期間は1999年10月28日から2021年3月31日まで、総事業費約575億円が投じられる。

青果市場跡地に商業施設

 博多区那珂の青果市場跡地の再開発を三井不動産、西鉄、九電で構成する企業連合が手がける。九州初進出となる職業体験型テーマパーク「キッザニア」の注目度が高い。多くの小売業者が消費スタイルをモノからコトへの転換を摸索するなか、付加価値の高いコト消費を実現している。2020年11月13日に、商業施設の概要が明らかになった。施設の防災・環境対応策として、省エネ効果に優れた高効率機器の採用やエネルギー源の多重化が図られているほか、ウィズコロナへの対応として、屋外の広場設置、建物の開口を広く設けるなど、自然換気を促進するデザインが採用されている。工事は20年11月着工、竣工・開業は22年春ごろの予定だ。

九大学研都市駅周辺エリア

 05年から始まった九州大学の移転・統合。住宅・商業施設の整備は土地区画整理事業のなかで進んでいく。先行して「伊都土地区画整理事業」が行われた。現在は、「北原・田尻土地区画整理事業」が進められている。施工期間は18年9月から22年9月まで、総事業費は約28億円。対象エリアは11.8haにおよぶ。現在、松尾建設(株)が造成工事を進めている。同工事の落札額は約13億円で、工期は21年9月末までとなっている。同事業では住宅や、多様な商業施設の新設が予定されており、旧マルタイ工場跡地では地区のシンボルとしてタワーマンション計画も進められている。

 また、福岡市西区元岡地区では、九州大学伊都キャンパスの存在を生かした「研究開発拠点」の形成が計画されている。主にダイハツ九州所有地と福岡市土地開発公社所有地を合わせた3万1,224.68m2の敷地を活用する。事業予定者には大和ハウス工業を代表とする、西部ガス都市開発、九州TSUTAYA、正晃、大和情報サービスの5社グループが選定された。同グループは、人やコト・モノが関わり合う出会いの『結び目』となるような交流拠点の創出を通じて、まちづくりや人を育むことを目指す。施設の開業およびまちびらきは、22年10月を予定している。

コロナ禍を機に変わる働き方

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「三密」を回避することが必要とされるなか、満員電車や都心のオフィスなど「都市の過密」という課題が改めて顕在化し、都市における働き方や住まいの在り方が問われている。また、テレワークの導入や公園の価値が再評価されるなど、ライフタイルや価値観が大きく変えられている。

 建設業界における新型コロナウイルスの影響は、資材の納期遅延や工期の延期、工事の中止、工事の白紙化などのほか、感染予防のため面会を避けることによる打ち合せや会議・会合の中止、人手不足などに表れている。

 コロナ禍において、業務のデジタル化、IoT利用の必要性は加速していくだろう。事務作業のテレワーク化は進んでおり、建設業界の働き方もICT化で変わりつつある。国交省が進める「i-Construction」は、建設業の生産性向上を目的にITC技術を活用する取り組みのこと。ドローンなどによる3次元測量、3次元測量データによる設計・施工計画実施などがある。

 21年も老朽化したインフラの維持、毎年発生する災害に対する防災・減災対策により建設業界は堅調を維持する見込みと思われる。さらに、福岡市の実情を見てみると再開発だけでも今後10年は一定の建設需要が見込まれる。

 今後は人手不足やそれによる事業継承の対応が重要になると見られる。人材難は建設業界に限ったことではないが、異業種以上に高齢化が著しいのが現状だ。
 いずれにしても現状認識と将来展望の見極めは今後さらに難しくなっていくだろう。より慎重な自己分析が求められる。

(了)

【内山 義之】

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