2024年12月04日( 水 )

ピンチをビジネスチャンスと捉え 「屋根の上に庭」をスタンダードに

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(株)栄住産業

コロナ禍で工務店も打撃 新しい営業スタイルを提案

 コロナ禍の自粛ムードで、住宅業界はかなりの打撃を受けている。家づくりにはだいたい半年から1年ほどの期間を要するので、2020年の上半期はまだ影響はあまりなかったが、この自粛ムードが長期化してくると、かなりの影響が出てきそうだ。コロナ禍で先行きが不透明ななか、住宅需要が大きく落ち込み、小規模な工務店を苦しめているという。

 そうしたなか、(株)栄住産業の主力商品である「スカイプロムナード・OSORAリビング」は好調を維持している。フラットな屋根に、オリジナル技術の金属防水加工を施すことで、屋上に庭をつくるという斬新な商品だ。これまでに培った全国3500カ所の工務店との取引のなかで、1万5000棟を超える屋上施工実績を誇る。

「スカイプロムナード・OSORAリビング」

 栄住産業の顧客は工務店であり、宇都正行会長の考える使命のなかに、「地場工務店のお役に立つ」というものがあるため、とりわけ少人数で経営している地場工務店との取引が多い。栄住産業はそんな取引先の営業を円滑に進めるために、「4Dバーチャル展示場」を、取引のある工務店に無償提供している。バーチャル空間に、図面通りの住宅展示場をつくるというもので、消費者にとっては、自分がつくりたい家のイメージがわきやすい。もちろん、バーチャルの図面だけでなく、見積もりづくりから工程管理に至るまで、すべての工程が円滑に進むように、システム構築されている。栄住産業のフィリピンのITチームとともに手がけ、6年かけて現在のかたちになったという。

 営業スタイルも変化を迫られている。栄住産業は全国に23拠点をもち、以前から、東京、大阪など4つの大きな拠点とはテレビ会議を行ってきたが、営業拠点間でもZOOMを活用した会議を取り入れている。取引先の工務店ともZOOMでの営業も始めていて、新しい営業スタイルが定着しつつある。

コロナのピンチをビジネスチャンスと捉える考え方が大切

 栄住産業は、20年度で46期目となる。バブル崩壊やリーマン・ショックなど、これまで幾多の苦難を乗り越えてきた。宇都会長によると、バブル崩壊やリーマン・ショックのころは、それほど影響も大きくなかったが、今回のコロナ禍は、企業規模も大きくなり、これまでのピンチとは比べ物にならないぐらいの大変さだという。とはいえ、経営者の真価が問われるのは苦難の只中にあるときだ。

 宇都会長によると、苦難に陥った際、経営者は大きく3つのタイプにわかれるという。1つは、現実逃避タイプ。現状から逃げたいあまり、酒や遊びにはまるなどする、もっとも良くないタイプだ。2つ目は、何もしないタイプ。嵐が過ぎ去るのをただ待つという考え方で、今は自粛という言葉が当てはまる。そして、3つ目のタイプは、ピンチをチャンスと捉えるタイプだ。これまでの宇都会長の経験上、3つ目のタイプは10人に1人ぐらいではないかと話す。栄住産業は、バブル崩壊やリーマン・ショックのときに、あえて支店や営業所を増やすなど、積極的な攻めに転じたというが、今回のコロナ禍も、宇都会長自身は追い風と見ている。

国のお墨付きをもらい災害に強い技術をアピール

「ジャパン・レジリエンス・アワード」表彰の様子
「ジャパン・レジリエンス・アワード」表彰の様子

 20年3月、栄住産業の金属防水工法「スカイプロムナード」が国から表彰を受けた。次世代に向けた国の強靭化政策の一環で、強くてしなやかな国づくりに貢献する活動に取り組む企業を表彰する「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)」において、最優秀賞を受賞したのだ。

 住宅業界は保守的な考え方の人が多いため、「屋根は三角のこう配屋根が当たり前、フラットの屋根なんて、雨漏りが怖くて、あり得ない」という意見が主流だ。そのなかで、「フラット屋根の上に庭をつくる」という斬新な発想に懐疑的な工務店は、いまだに多いという。

 19年9月に、観測史上最大風速を記録した台風15号は、房総半島の家屋に甚大な被害をもたらした。そのエリアにもスカイプロムナードで施工した屋上住宅があったものの、どの家屋も雨漏りが起こることもなく、被害を免れたという。そして、近年とくに頻発する局地的豪雨の水害では、あまりに短時間で豪雨になることから、避難所に逃げるよりも、国は「垂直避難」(建物の上方に避難すること)を推奨するようになっている。

 宇都会長は、「水害の際に家が流されなければ、屋上の庭に避難すれば命は助かる。避難所に逃げるよりも安全だ」と話す。スカイプロムナードの安全性は国のお墨付きをもらったことで、より価値を増している。

 コロナ禍で行動の自粛を余儀なくされ、在宅の時間が長くなっているなか、屋上に子どもたちが自由に遊べる庭がある環境は、今の時代にマッチしているのではないだろうか。もともとは狭小住宅にも庭をつくってあげたい、子どもの情操教育のためには庭をつくってあげたいと考えた宇都会長の想いから生まれた「スカイプロムナード・OSORAリビング」。土地が狭く、さらに、災害の多い日本では、屋上に庭をつくる家がスタンダードになるかもしれない。


<COMPANY INFORMATION>
代 表:宇都 正行
所在地:福岡市東区原田3-5-6
設 立:1976年2月
資本金:9,800万円
TEL:092-622-6292
URL:https://www.eijyu.co.jp


宇都 正行 氏<プロフィール>
宇都 正行
(うと まさゆき)
1944年7月、鹿児島市生まれ。68年3月、鹿児島経済大学卒業。75年9月に栄住産業を創業。76年2月に法人改組し、(有)栄住産業を設立。89年2月に株式改組。趣味はゴルフと旅行。

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