自主廃業のタカクラホテル、6月までに資産売却し会社清算か
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地場の老舗シティホテル・タカクラホテル福岡は11日、1月31日付で自主廃業すると発表した。「自主廃業」としたのは、コロナ禍の収束が見通せない状況で事業を継続すれば、最悪の場合、従業員や債権者に迷惑をかける可能性が出てくることを懸念してのことのようだ。
1月末のホテル営業終了後も、運営会社の(株)タカクラホテル福岡は存続するが、その後の方針は「確定していない」(同社管理部)という。M&Aや法人の解散を経て清算といった動きが想定されるが、「廃業」という表現から基本路線は清算とみられる。仮に清算となった場合、欠かせないのが資産(不動産)の売却だ。ホテル運営、土地建物の所有はともに(株)タカクラホテル福岡。同社は、創業者・高倉光雄氏の子息で3代目となる現社長・高倉照矢氏が株式の大半を保有するオーナー企業だ。
土地はもっとも古いところで取得から53年が経過しており、簿価はかなり低く計上されている。仮に売却すれば、どれだけ売却額を低く見積もっても大きな売却益が見込めるはず。一部報道で土地建物の売却に関する情報が流れたことに対し、「不動産会社からの問い合わせが相次いだが、売却することを決定しているわけではない」(同社管理部)と売却ありきではないことを強調しているが、決算期である6月が売却時期の1つの目安となるだろう。
大改装にともなって買収した隣接地を含め、ホテルの敷地面積は約700坪。建物自体はリニューアルされているとはいえ、築50年を越えている。幹線道路・城南線には面していないが、西鉄天神大牟田線と地下鉄七隈線が乗り入れる薬院駅北口からは徒歩1分という好立地。建ぺい率80%、容積率400%の商業地域で、天神ビッグバンの範囲からわずかにはみ出ているものの、マンション、オフィスなどさまざまな建物開発が検討できる。
現在登記されている根抵当権の極度額合計は約40億円。根抵当権はすべて、親和銀行(現・十八親和銀行、以下十八親和銀行)と福岡銀行の共有名義だ。つまり、最大債権者は両行を子会社とする(株)ふくおかフィナンシャルグループ(以下、FFG)になる。
いずれの根抵当権も設定時の債権者は十八親和銀行(2007年にFFG傘下入り)だったが、09年2月13日の会社分割を登記原因として福岡銀行と十八親和銀行の共有名義となった。なお同日、十八親和銀行(当時・親和銀行)の審査部融資審議室が所管する事業再生事業および不良債権関連事業を分割し、福岡銀行が承継した。
土地建物が仮に売却となった場合、最大債権者であるFFGが売却の手綱を握ることになるだろう。最後まで地場独立系ホテルとして運営されてきた歴史があり、豊富な選択肢を検討できる中心部の希少な土地だけに、福岡のまちづくりの観点からも歴史と立地が生きる売却となることを期待したい。
【永上 隼人】
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