2024年11月14日( 木 )

ネットバブルの寵児、折口雅博氏の自伝『アイアンハート』を読む~逃避先の米国で、あのトランプ前大統領の知遇を得て再起!!(5)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 ネットバブルの寵児が戻ってきた。人材派遣大手グッドウィル・グループ(株)元会長・折口雅博氏が自伝『アイアンハート』(昭文社刊、税別定価1,500円)を出版した。副題は「ゼロから12年で年商7,700億円企業を創った不撓不屈の起業家」とある。日本ですべてを失い、米国に渡り再起、日本にカムバックしてきたのだ。早速、手に取って読んだ。逃避先の米国で何をしていたかを知るためだ。政治エンターテインメント「トランプ劇場」で米国社会の対立と分断を深めたドナルド・トランプ前大統領の知遇を得て蘇ったのだ。びっくり仰天である。

米国で再起し、レストラン業界最高峰の「シックススター・ダイヤモンド」を受賞

 折口雅博氏はGWGを追われ、2009年破産宣告を受けた。逃避先の米国に移住した折口氏に、GWGを手に入れたファンドから連結対象から外すため、ニューヨークのMEGUを購入しないかと打診があった。しかし、破産の身ではカネはない。親戚に連絡して買い取ってもらい、折口氏が経営を任された。折口氏は再び「雇われ社長」になった。

 カネがなくても発展させる方法はないか。そこで浮かんだのが世界でフランチャイズを展開させることだ。超高級レストランのフランチャイズの例はないが、地元の名士をオーナーにした。モスクワ、ドーハ、ニューデリー、スイスで超富裕層が集まる場所に出店した。

 12年、ニューヨークのMEGUが、レストラン業界最高峰のシックススター・ダイヤモンド(6つ星)を受賞した。トランプ・ファミリー全員がMEGUニューヨーク本店で行われた授賞式に駆け付けてくれた。

「さすがに、大統領への立候補が取りざたされていた時期でもあり、トランプ夫妻は出席できなかったが、ドンJr(長男のドナルド・トランプJr)氏、次男のエリック・トランプ氏、イヴァンカさんは、ハリウッド女優でMEGUの大ファンのアン・ハサウェイさん、ミス・インターナショナル、ミス・アメリカと一緒に、メインテ―ブルに陣取った。そして、私がMEGUのチェアマンとして賞を授与された瞬間、大きな歓声と拍手を贈ってくれた。

 その4年後、メディアの大方の予想に反して、確実と言われていたヒラリー・クリントン氏を制して、トランプさんがアメリカ合衆国大統領になった。彼がもっと身近だったころのことが頭をよぎり、鳥肌が立つような興奮が走った。

 『これはすごい大統領が誕生したぞ』と心から思った」

「MEGU」を売却し、起業家コーチに身を投じる

 折口氏は米国で始めた高級レストラン「MEGU」の多国間展開で成功。フィリピン・マニラでカジノのブロジェクトを進めている日系企業に「MEGU」を売却した。ファンドから買い取ったときの買収額の70倍の値段で売却した。

「自分が起こして育て上げた事業に、自分の判断で幕を引き、そこから新たな道へ踏み出す。この時私は長い事業家人生で初めて、ポジティブなイグジット(株式売却による投資回収)を実現することができた」

 18年に日本に戻った。現在、ニューヨークと東京に拠点をもつブロードキャピタル・パートナーズのCEO(最高経営責任者)として、起業家らをサポートする起業家インキュベーターとして活動している。

 しかし、折口氏は暖かく迎えられたわけではない。情報誌『FACTA(20年1月号)』が「旧ウッドウィル総帥・折口が借金取り立て地獄」と題し、踏み倒された大和証券が、折口氏に遅延損害金含め約23億円の支払いを求めるレターを送り、ついに提訴に踏み切った、と報じた。

 折口氏は、自伝を出版した動機につていて、「私が直面した理不尽からいかにして立ち上がってきたかをお伝えしたいと思ったから」と語っている。

 折口氏はメディアの寵児であった。成功者としてもてはやされたが、介護保険の不正請求が発覚すると、一転して、バッシングの嵐にさらされた。新聞社への説明広告の掲載は7社に拒否された。メディアの手のひら返しや借金の取り立ては、折口氏にとって、理不尽な出来事だったようだ。

 折口氏の七転び八起の人生は、怪物経営者にふさわしい。まさにアイアンハート(鋼の心臓)の持ち主である。

(了)

【森村 和男】

(4)

関連キーワード

関連記事