中洲の灯は絶えない(4)【緊急座談会】名物ママが語る「コロナと夜の街」 “中洲(ここ)”で生きていく(前)
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コロナ禍における緊急事態宣言では飲酒を伴う夜間の飲食店が特に感染を広げる可能性が高いとされ、営業時間短縮要請の対象となっている。「夜の街」が忌避され、あるいはバッシングのターゲットとなる一方で、与党政治家の銀座クラブ通いが発覚して辞職に追い込まれるなど、本音とタテマエが見え隠れするこの問題。最前線にいる女性たちは何を思うのか。中洲を代表するクラブ、スナック、キャバクラの代表に話を聞いた。
<参加者>
(有)艶「くらぶ艶」代表 東 美幸さん
ハーモナイズ・エンターテインメントサービス(株) 代表取締役 舛元 光二 氏
ラピス ママ 田中 正子さん
(株)福一不動産 代表取締役 古川 隆 氏応援消費で客単価が倍以上に
――福岡県は1月14日から2月7日まで緊急事態措置(緊急事態宣言)の実施区域になりました。昨年4月に次ぐ2度目の緊急事態宣言。コロナ禍における、中洲の接客業最前線の現状をお聞きしたいと思います。まずは、『くらぶ艶』のオーナー兼ママの東さん。昨年、緊急事態宣言が出たときはどんな対応をとられましたか。
東 宣言が出る前から、「近いうちに緊急事態宣言が出る」という話は耳にしていたので、3月20日過ぎには金融機関に融資を申し込み、月末には融資OKが出ましたので4月2日から休業しました。
――2回目の緊急事態宣言では。
東 予約が入っていたので1月15日まで営業し、16日の土曜日から休業しました。
――営業時間の短縮要請に応じた店舗には1日6万円が給付されます。この金額についてはどう思われますか。
東 お店の規模によって、貰いすぎではと思うところもあれば、まったく足りていないところもあると思いますね。当店に関しては、家賃分だけなら給付金で賄うことができますが、それ以外の部分は持ち出しになるので利益は出ていません。
――最初の緊急事態宣言が解除された後、お客さんの戻りは早かったのですか。
東 当店ではそれまで、通常の客単価が2万4,000円くらいだったんですね。でも7月に店を開けてからは常連さんからの応援もあり、同月の客単価が8万5,000円まで伸びました。税理士さんもこの数字を見て驚いていました。銀行によれば、中洲の飲食業者は大きく分けてウチと同じか、あるいは真逆(まったく客が戻らない)の2パターンに分かれているそうです。
従業員が陽性反応~保健所は素早い対応
――続いて『ラピス』の田中さん。昨年の緊急事態宣言時(4月7日~5月6日)は、いつ休業されましたか。
田中 4月8日です。西日本新聞から取材を受けて、そこで閉めるという話をしました。その後、銀行の融資を受けています。ご予約いただいたお客さまがいたので7月15日に営業再開して、10月の売上は前年並まで回復していたのですが、11月、12月は前年同月比でいうと半分以下にまで落ち込んでしまいました。12月は通常、忘年会シーズンでもあり、稼ぎ時なのですが、キャンセルが相次ぎました。
東 逆にいうと、年末シーズンに予約が入ってたんですか。すごいですね。ウチは1件しかありませんでした。
舛元 ウチは12月の団体予約がゼロでした。店を始めてから、こんなことは初めてです。
田中 忘年会の団体予約というよりも、「~日に〇人で行くよ」というかたちでの予約が結構あったんです。営業時間は午後9時から午後11時にして、ボックス席は閉鎖。そうなると1組入れたらほかのお客さんは入れません。だから1日の売上が女の子の給料より少ないことはざらでしたし、1週間のうち4日間、売上ゼロの日もありました。
――感染防止策は講じていますか。
田中 店が狭いので、カウンターにパーテーションを置いていても、お客さんが「邪魔だ」って言って取っちゃうんですよ(笑)。それで、次亜塩素酸噴霧器と空気清浄機を設置しています。あと、カラオケのマイクが感染を広げる可能性が高いので、お客様1人につき1本を用意するようにしました。
東 ウチも次亜塩素酸噴霧器と空気清浄機を置き、女の子はフェイスシールドを着用しています。希望されるお客さまにもフェイスシールドをお貸ししていますよ。
――昨年の緊急事態宣言時は、ことさらに「夜の街」「夜の店」がターゲットになっていたようにも感じました。キャバクラでのクラスター(集団感染)が続いたことも報道されましたが、その影響はいかがですか。
舛元 昨年は4月末に店を閉じて6月から再開したのですが、6~7月の2カ月間は赤字でした。11月に現在のグラン中洲ビルに移転し、移転オープン景気で11月は黒字だったのものの、12月はまた赤字でした。
――お客さんの年齢層はどれくらいですか。
舛元 通常のキャバクラほど若くはなく、40代、50代が中心です。
――面積が広い分、感染防止対策が大変では。
舛元 オゾン除菌と脱臭器を2台設置しています。じつは当店では洗い場の従業員が1人感染したんです。従業員全員が濃厚接触者ということになり、PCR検査を受けたのですが、幸いなことに全員陰性でした。
東 お客さんとの接触がなくて良かったですよね。
古川 当社の管理物件でも同様のケースがありましたが、保健所の対応は非常に迅速ですね。あっという間にフロアをシャットアウトしてしまう。
舛元 確かに、それは実感しました。感染発覚のその日のうちに店内を徹底的に消毒して、仮に次の日にお客さんを入れたとしても大丈夫なぐらい万全の対応をしていただきました。
「中洲は危ないから行くな」
――感染者が出ると、報道で店名が公表されることもありました。
古川 それは公表してもらえると、なお良いと思います。
田中 初めのうちは「コロナが出た店には行きたくない」っていう声もあったようですが、店をやっている側から言わせていただくと、その店からうちに来られる方もいたので逆に公表してくれたほうが助かります。早めに休業したのはその影響もありますから。
古川 某キャバクラは感染者が出たことを隠していたことが発覚してイメージが悪化、お客さんが激減したそうです。
――接客の際にはどうしてもお客さんとの距離が近くなります。感染を恐れて辞めた従業員などはいますか。
東 うちは幸い1人もいませんでした。
舛元 出店してこなくなった子が何人かいます。親から、「中洲は危ないから行くな」と言われた子もいるようですね。
――社内で規定を設けて「中洲出入り禁止」にした大手企業もありました。官公庁なんかもそうだと思いますが、その辺の影響も大きかったのでは。
東 影響は大きいですね。本当にお客さまの数が激減しています。福岡っていわゆる「支店経済」じゃないですか。「七社会」(※)は当然ですけど、東京や大阪に本社がある大企業の支店長族の皆さんも全部アウトになりました。当店のお客さまは、比率でいうと6割が勤め人で、残り4割が経営者です。今は経営者のお客さまでなんとか回している状態ですね。お勤めされている方々は会社から御達しが出たら中洲に来ることができませんので。それでも大企業に勤める少数の方たちは熱心なファンで、自費でいらっしゃっていただいています。
舛元 そういう熱心なお客さまを抱えているといいですよね。うちは団体客がメインだったこともあり、客数は7割減です。
(つづく)
【聞き手・まとめ=データ・マックス編集部】
※:九州電力、西部ガス、西鉄、福岡銀行、西日本シティ銀行、九電工、JR九州の7社からなる任意団体 ^
<BAR INFORMATION>
『くらぶ艶』
(有)艶「くらぶ艶」代表 東 美幸さん
業 態 :クラブ
所在地 :福岡市博多区中洲2-5-15第1ラインビル4F
敷地面積:30坪
在籍女性:14人
客単価 :2万4,000円『艶やかに華やかに』
ハーモナイズ・エンターテインメントサービス(株) 代表取締役 舛元 光二 氏
業 態 :ニュークラブ(キャバクラ)
所在地 :福岡市博多区中洲4-2-14 グラン中洲ビル5F
敷地面積:36坪
在籍女性:20人
客単価 :6,000円~8,000円『ラピス』
ラピス ママ 田中 正子さん
業 態 :スナック
所在地 :福岡市博多区中洲2-6-7ジョイフルヤマモトビル6階
敷地面積:15坪
在籍女性:4人
客単価 :約1万円関連キーワード
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