中洲の灯は絶えない（4）【緊急座談会】名物ママが語る「コロナと夜の街」　“中洲（ここ）”で生きていく（後）

＜参加者＞
（有）艶「くらぶ艶」代表　東 美幸さん
ハーモナイズ・エンターテインメントサービス（株）　代表取締役　舛元 光二 氏
ラピス　ママ　田中 正子さん
（株）福一不動産 代表取締役　古川 隆 氏

夜の街でしか生きられない女性も

　――周囲で、コロナ禍を機会に撤退するような話ありますか。

　田中　私の知り合いでは3軒お店を閉めました。

　古川　多店舗経営していて、いまは縮小したところをよく見かけます。

　東　移転したという話もよく耳にします。

　――以前、福一不動産さんに取材したときには、居抜き物件が増えていることもあって、逆にこれをチャンスと捉えて出店したいという相談が増えているとお聞きしました。

　古川　やっぱり、夜の世界でしか生きられない娘（こ）、あるいは子どもを抱えたシングルマザーでお金が必要な娘たちっていうのが確実にいるんですよ。だからお店に「経営縮小するから来なくていいよ」って言われたら、自分で店をやるしかない。実際に新店は増えてます。週に2日～3日しか来なくていいなんて言われたら生活できないでしょう。コロナ禍は女の娘たちの独立のきっかけにはなったと思います。一方、学生アルバイトは出て来なくなったし、数字をあげられない娘は昼の仕事に戻る。本当に仕事のできる、働ける娘たちが独立したのです。

　先ほど、閉める店が増えたという話がありました。しかし私に言わせれば、その店はこれまで「閉店ボタン」を押してなかっただけなんだと思います。だいたい55歳を過ぎると、店を維持できない人が増えてきます。夜の店は一代限りなんですね。だから、本当はもっと前に閉まってもおかしくなかった店が、コロナを機に閉めたっていうケースが相当数あるのです。

　マスコミは「コロナで閉店」と聞くとセンセーショナルに報道しがちですが、実態はそれ以前から開店休業状態の店が結構あったのです。コロナ前と現在を比べてみて閉店数にそれほど大きな差はないのですが、世間的には閉店が10倍、20倍に増えたという印象をもたれているのではないでしょうか。

　舛元さんのお店も移転したのだから、閉めたことには変わりありません。しかし、移転という情報は伝わりにくいからお客さんは「閉まった」という印象をもってしまい、風評被害も多いようです。マスコミの方は、「コロナによって中洲が深刻なダメージを受けている」とどうしても言いたいようですね（笑）。

中洲はダメで天神はOK？

　――「夜の街」がターゲットにされたことについて、どう思われますか。昨年、小池都知事が「夜の街を控えるように」と言いはじめ、福岡では「中洲」という固有名詞がわかりやすいターゲットにされました。

　田中　夜の8時を過ぎたら急に感染率が高くなるの？って言いたいですね（笑）。政治家が「4人まではOK」とか言いますが、根拠は？って思います。細かいことですけど、中洲はダメですぐ隣の天神なら大丈夫っていうのも疑問です。

　東　ちょっと意地悪ですけど、小池都知事は水商売のことをよくご存じなんだなって思いました。スナックはカウンター越しに1人の女性が3～4名のお客さんを相手にするのに対して、クラブは至近距離で1対1の接客をします。それを知ってるんだな、って。

　――今回の緊急事態宣言はおそらく2月いっぱいまで延長されるとみられています。2回目の緊急事態宣言とその延長はかなりの打撃となるため、給付金を満額もらった後に閉めるという決断をする店が中洲でも結構出てくるのではという予測もあります。

　舛元　そういう人も人もいるかもしれません。個人的には、緊急事態宣言を2月7日に解除したところで、お客さんは戻って来ないと思います。それならば2月末まで宣言を延長してもらい、3月になって人が「動きたいな」と思い始めたときに解除した方がいいのでは。新規感染者をたとえば1桁から2桁台まで減らしたうえで、「感染対策しながら、みんなで楽しくやりましょう」って言った方が安心するでしょう。

　――中途半端な段階で解除するよりは、きっちりやった方がいいと。

　古川　今回の緊急事態宣言では、どの店も閉める判断が前回より早いですね。中洲の店全体の判断力が上がり、6万円給付を決めた行政の判断も早かった。皆さん早めの対応をしています。しかし、それでも開けている店の数は最初の緊急事態宣言時より多いので、そういう店は潤っていると思いますね。

緊急事態宣言を利用して稼ぐ店も

　――灯かりを全部消したうえで、常連を呼んで秘密パーティーをしているという話はよく聞きます。

　古川　それは6万円をもらったうえで稼ごうという、セコい店でしょう。むしろ、「うちは緊急事態宣言に対応しないよ」って大っぴらにやってる店もあります。

　舛元　うちみたいな店の場合、今の状況で開けてもお客さんが入らないとわかっていたので閉めたのですが、まだ開けている店にはお客さんがたくさん入っています。

　古川　40坪～50坪の店の場合、1日6万円給付をもらう意味はありません。

　田中　15坪ぐらいのうちのような店は開けない方がいいです。お客さんがゼロかもしれないのに女の子を2人入れて毎日開けてても……。それならば、6万円をいただいて給料を渡した方がいいですね。

　――クラスターが出てしまった場合、店名を公開されるリスクもありますが・・・。

　古川　公表されたところで逆に宣伝になってお客さんが来ると思ってるから、全然気にしないですよ。

　――どういった業態の店が開けてるのですか。

　古川　キャバクラが多いですね。

　東　社会的な制約がないお客さんが多いですからね。

　舛元　「この人、何の仕事をしているんだろう」という雰囲気のお客さんが多いですね。初回の緊急事態宣言時、ものすごく人が少ないときでも30店舗ぐらい開けてましたから。今回は100店舗ぐらい開けてるのではないでしょうか。ウチはキャバクラとはいえお客さまの年齢層が高く、会社関係が多いです。そうした店は営業を続けていると風評被害のほうが大きくなってしまうので開けられませんが、そうしたことと関係がない店は平気で開けています。

　古川　昨年の緊急事態宣言で開けたままにして旨味を知った店にとって、今回の緊急事態宣言はむしろ「待ってました」という感じかもしれません。

店と客の双方で中洲を盛り上げる

　――中洲を盛り上げるアイデアはありますか。

　古川　マスコミは、「中洲の景気が悪い」とあまり言わないでほしいですね。できれば、中洲を応援してほしい。あるママは、「住所が中洲ではないところに引っ越したい」と相談に来ました。中洲という住所でなかったらお客さんがくるそうなんです。

　田中　中洲っていうブランドがダメなんですかね？

　舛元　会社が「中洲はダメ」って言ってるからですね。

　田中　飲食がダメではなく、中洲がダメって言ってる。

　舛元　住所が中洲では領収書がきれないから（笑）。

　東　行ってあげたいけど、社員に「行くな」って言っている手前、自分たちが行くわけにいかないという経営者はたくさんいますね。

　舛元　でも、緊急事態宣言を2月いっぱいまで延長して感染者数が減ってきたら、3月には復活しそうな雰囲気はありますよね。

　田中　しかも年度末なので、普段だったら転勤とかいろいろあるじゃないですか。

　東　昨年3月の頭から、七社会的には歓送迎会も禁止になっているのがちょっと不安材料です。

　舛元　たとえばちょっと狭い店なら、上場企業のVIP組が自前で女の子を連れてきて店を90分間貸し切り、また別の店に移って貸し切り、というふうにまわしているという話もあります。皆さん中洲が好きだから、特定の店に偏らないように行くようにしてるし、店側もそれには対応していきます。お店とお客さまの双方で中洲のまちを支えていく、中洲文化の灯を消さない、そうあってほしいと思いますね。

（了）

【聞き手・まとめ＝データ・マックス編集部】

＜BAR INFORMATION＞
『くらぶ艶』
（有）艶「くらぶ艶」代表　東 美幸さん
業　態　：クラブ
所在地　：福岡市博多区中洲2-5-15第1ラインビル4F
敷地面積：30坪
在籍女性：14人
客単価　：2万4,000円

『艶やかに華やかに』
ハーモナイズ・エンターテインメントサービス（株）　代表取締役　舛元 光二 氏
業　態　：ニュークラブ（キャバクラ）
所在地　：福岡市博多区中洲4-2-14 グラン中洲ビル5F
敷地面積：36坪
在籍女性：20人
客単価　：6,000円～8,000円

『ラピス』
ラピス　ママ　田中 正子さん
業　態　：スナック
所在地　：福岡市博多区中洲2-6-7ジョイフルヤマモトビル6階
敷地面積：15坪
在籍女性：4人
客単価　：約1万円