2024年11月24日( 日 )

バイデン大統領東京五輪科学基準とは

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「バイデン大統領は東京五輪について、『2021年夏の開催の安全性は科学的見地から担保されない』という含意を示している」と訴えた2月8日付の記事を紹介する。

東アジア地域はコロナ被害が極端に小さい地域である。
不幸中の幸いと言える。
その理由は定かでないが、いくつかの仮説は提示されている。

第1は遺伝子要因。
ネアンデルタール人由来の遺伝子多様体を保持する者が重篤化しやすいとの学説が提示されている。
東アジアの民族ではこの遺伝子多様体を保持する者が極めて少ないため、コロナ死者数が抑制されている。

第2は免疫要因。
インフルエンザなどの流行が盛んで東アジアに住む人々が何らかの免疫能力を保持しているため、コロナ被害が軽微であるとの説。

第3は食料要因。
コメの糠に含まれるLPSという物質が免疫能力を高める。
コメを主食とする地域の住民のコロナ被害が軽微であるとの見解が提示されている。

いずれにせよ、コロナ被害が軽微であることは不幸中の幸いだ。
しかし、その東アジアのなかで日本のコロナ被害は最大である。

隣接するベトナムまで含めて人口100万人当たりのコロナ死者数を見ると、

台湾   0.4人
ベトナム 0.4人
モンゴル 0.6人
中国    3人
香港    25人
韓国    29人
日本    50人

になっている。

日本が突出して悪いパフォーマンスを示している。
日本政府のコロナ対応失敗が鮮明だ。
日本政府のコロナ対応に失敗した理由が3つある。

第1は「検査と隔離」の基本を無視し続けていること。
第2は政策対応が右往左往していること。
第3は政府が感染拡大推進策を実行したこと。
この3つに尽きる。

コロナ対応を基軸にすれば経済が持たない。
これが菅首相の持論だった。
そのために、感染収束を確実に実行せずにGoToにのめり込んだ。

GoToは感染拡大推進策である。
GoToによって感染爆発を引き起こしたために緊急事態宣言に回帰させられた。
典型的な右往左往である。

「後手後手 小出し 右往左往」が菅コロナ対応3原則になっている。
この菅コロナ対応3原則によって、経済活動が極めて深刻なダメージを受けている。

「コロナ収束優先」と「Stop&Go」のどちらが適正かを考える必要がある。
答えは明白だ。
「コロナ収束優先」で進む方が、はるかに損失が小さいのだ。

昨年の事例を見ると、人の移動が最小になったのは5月5日だった。
3週間後の5月25日には新規陽性者数が著しく減少した。

このタイミングで安倍晋三氏は
「わずか1ヵ月半でコロナ収束に成功した。日本モデルの力を示した」
と豪語したが、人の移動はすでに5月5日以降、再拡大に転じており、1ヵ月後の7月入った後には感染が明確に再拡大し、4月ピークを更新してしまった。

今回、人の移動が最小になったのは12月31日。
1月28日ころまでは人の移動が抑制されていたが、1月29日以降、人の移動が明らかに再拡大に転じている。

人の移動拡大は3週間後の新規陽性者数を拡大させる。
2月下旬以降に新規陽性者数が再拡大するリスクが存在する。

菅内閣は早くもGoTo再開検討を始めた気配を示すが、Stop&Go政策が最悪の結果をもたらす。
そもそも、菅内閣は「徹底した検査と感染者の保護」という基本を守っていない。

直近の新規陽性者数減少が検査数減少によるものとの疑いも強い。
徹底的な「検査と隔離」によってコロナ感染を収束させることが先決だ。

Stop&GoのGoTo政策は観光業界の基礎体力を奪いつつある。
GoTo依存体質が強まると、GoTo後に観光事業者が軒並み倒れる事態が発生することになるだろう。

東京五輪に対して菅内閣は適正な行動を示せない。
菅内閣の五輪優先姿勢がすべてを悪化させている。

菅内閣は外国人の入国規制を一気に緩和した。
このために、11月の外国人入国者数は昨年5月比34倍に激増した。
ビジネストラック、レジデンストラックの入国を緩和したためだ。

ところが、12月中旬に英国でコロナの変異株が確認された。
南アフリカ、ブラジルでも確認された。
直ちに水際対策を強化することが必要だったが、菅義偉首相が入国規制強化に抵抗し続けた。

菅首相は12月28日に「先手先手の対応で」入国規制を強化すると公言したが、ウソだった。
菅義偉首相が強く反対して、ビジネストラックとレジデンストラックの規制強化を排除した。
菅首相が入国規制強化に動いたのは1月13日になってから。

水際対策に失敗して変異株が国内に流入した。
すでに国内での変異株市中感染が確認されている。
その最大の責任を負うべき人物が菅義偉首相。

昨年のケースでは人の移動が最小値を記録したのが5月5日。
ここから人の移動は微増に転じた。
緊急事態宣言を全国で解除した5月25日以降、人の移動は急拡大し、7月に感染の明確な拡大を招き、8月7日にピークが記録された。

8月から9月にかけての新規陽性者数減少は季節性によると考えられる。
今回は12月31日が人の移動のボトム。
1月末から2月初旬にかけて、新規陽性者数減少が強調されて、緊急事態宣言解除ムードが一気に高まっている。
これを反映して、人の移動が明確に増加し始めている。

昨年の経験に照らして考えると、3月に入って新規陽性者数増加が明確になるリスクを払拭できない。
3月は季節的に人の移動が拡大しやすい時期でもある。
緊急事態宣言解除と共にGoTo再開の動きが顕在化する可能性もある。
Stop&Goを絵に描いたような展開だが、このことによって、感染が再拡大するリスクを払拭できない。

直近10日間のコロナ死者数平均値は約100人。
1日100人の死者が出ている。
年率換算で3万6,000人ペース。
「コロナはただの風邪」でないことが明白だ。

菅内閣はGoToにかまけて必要な病床、宿泊療養施設さえ確保してこなかった。
「放置民、放置民死」が多数発生している。
利権を優先して国民の命と暮らしを守るという基本をないがしろにしている。

五輪を開催する場合、選手と関係者だけで1万5,000人を超える外国人が入国する。
コロナの水際対策を完全に実現することは不可能だ。
日本国内で変異株の流行を発生させ、その感染拡大が外国人の本国に持ち戻される可能性が高い。

日本でのワクチン接種は遅々として進まない。
そもそも、ワクチン接種を忌避する国民が多数存在する。

東京五輪が差別推進五輪であることも全世界に発信されている。
この状況が広がっても、誰も事態の収拾に乗り出そうとしない。
海外から東京差別五輪ボイコットの動きが広がるだろう。

バイデン大統領はコロナ対策優先を掲げて大統領選を戦った。
東京五輪について「科学基準主義」を明示した。
「科学基準主義」の含意は「2021年夏の五輪開催安全性は科学的見地から担保されない」というもの。
すべてにおいて失格の日本為政現実を日本の主権者は直視しなければならない。


▼関連リンク
植草一秀の『知られざる真実』

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