2024年11月14日( 木 )

【コロナで明暗企業(1)】ロイヤルHD、資本支援策の衝撃~筆頭株主、双日の持ち分法適用会社に組み込まれ、創業事業の機内食は売却(前)

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 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、業績が悪化した企業が増える一方、「巣ごもり需要」などで業績を伸ばした企業もあり、明暗が分かれている。
 シリーズ初回はファミリーレストランの「ロイヤルホスト」などを営む外食大手、ロイヤルホールディングス(株)を取り上げる。同社への資本支援策は衝撃的であり、筆頭株主となる総合商社、双日(株)の持ち分法適用会社に組み込まれる内容だ。さらに、創業事業である航空機の機内食事業を売却する。コロナ禍で苦境の外食チェーン大手のなかで、筆頭株主が変わる業界再編の先陣を切った。ロイヤルホールディングスの経営難を徹底分析する。

筆頭株主、双日の持ち分法適用会社に組み込まれる

 ロイヤルホールディングス(以下、ロイヤルHD)は2月15日、総合商社の双日と資本・業務提携すると発表した。双日は100億円の第三者割当増資を引き受け、ロイヤルHD株式の12.83%を保有する筆頭株主となる。払込期日は3月末。

 ロイヤルHDは、取引行であるみずほ銀行、日本政策投資銀行、福岡銀行、西日本シティ銀行に対して、計60億円の議決権のない優先株を発行する。双日に対しては、行使可能期間が6年間の78億円相当の新株予約権も交付する。双日は予約権をすべて行使すれは株式の20.07%を握り、ロイヤルHDは双日の持ち分法適用会社となる。

 また、ロイヤルHDの機内食事業の子会社ロイヤルインフライトケイタリング(株)(以下、RIC、大阪府泉南市)も、双日が第三者割当増資で株式の60%を取得して連結子会社に組み入れ、同事業はロイヤルHDの連結対象から外れる。RICは4月1日付で社名を「双日ロイヤルインフライトケイタリング」に変更する。

 新株予約権を含めて調達した238億円は、構造改革とアフターコロナを見据えた投資をする。昨年本格化した冷凍商品「ロイヤルデリ」の増産に向けた工場の投資などに使い、双日のネットワークを活用した海外事業の拡大を進める。

 ロイヤルHDは、2019年12月期末に49.6%あった自己資本比率が20年12月期末には19.7%まで下がった。今後、赤字経営が続くと、自己資本比率は一段と低下する。経営破綻を招かないためには、資本増強が緊急を要する課題となっていた。

創業家は筆頭株主の座を明け渡す

 ロイヤルHDが受けた資本支援の最大のポイントは双日に対する新株予約権の付与にある。第三者割当増資だけでは、双日は筆頭株主とはいえ、持ち株比率は12.83%で、大株主にとどまるが、新株予約権を行使すると、持ち株比率は20.07%に高まり、ロイヤルHDは双日の持ち分適用会社になる。つまり、双日はロイヤルHDをグループに取り込むことができるのだ。

 双日への事実上の身売り―――。これが、資本増強策の本当の意図である。

 ロイヤルHDの菊地唯夫会長、黒須康宏社長兼CEOと双日の藤本昌義社長は15日、オンライン共同記者会見を開いた。菊地会長は、双日との資本提携に至った理由を説明した。財務基盤の回復や経営の効率化を実現するには「パートナーが必要」として、昨年9月ごろから証券会社などを通じて相手先候補を探していた。

 『産経新聞』電子版(2月15日付)は、「双日はロイヤルHD株の持ち株比率20%で合意したうえで、資本業務提携の中身を詰めてきたという」と報じた。最初に「持ち株比率20%で合意した」。これが、提携の肝だ。ロイヤルHDのトップは、交渉にあたり、双日の傘下に入ることを決断していたことを意味している。

 双日が一気に20%出資すれば、「身売りだ」「乗っ取りだ」と大騒ぎになるのは、目に見えている。まず、第三者割当増資を引き受けて、筆頭株主となり、後日、新株予約権を行使して出資比率を20%に高めて、持ち分法適用会社に組み入れる二段階作戦をとった。

<新株予約権の行使による普通株式発行後の出資比率>
双日(株)
 発行前:――― / 発行後:20.07%
(公財)江頭ホスピタリティ事業振興財団
 発行前:6.20% / 発行後:4.95%
キルロイ興産(株)
 発行前:4.11% / 発行後:3.28%

 ロイヤルHDの大株主は創業家の財団の江頭ホスピタリティと、創業家の資産管理会社キルロイ興産がそれぞれ1位、2位であったが、双日はそれらを大きく上回り、圧倒的な立場を誇る筆頭株主になる。資本の組み換えが行われ、筆頭株主が入れ替わった。

 コロナ禍で苦境に陥る外食チェーンでは劣後ローンなどによる資金支援が増えているが、筆頭株主の交代まで踏み込んだのはロイヤルHDが初めて。これが、衝撃をもたらした理由だ。

(つづく)

【森村 和男】

(中)

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