2024年11月14日( 木 )

【コロナで明暗企業(1)】ロイヤルHD、資本支援策の衝撃~筆頭株主、双日の持ち分法適用会社に組み込まれ、創業事業の機内食は売却(中)

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 新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、業績が悪化した企業が増える一方、「巣ごもり需要」などで業績を伸ばした企業もあり、明暗が分かれている。
 シリーズ初回はファミリーレストランの「ロイヤルホスト」などを営む外食大手、ロイヤルホールディングス(株)を取り上げる。同社への資本支援策は衝撃的であり、筆頭株主となる総合商社、双日(株)の持ち分法適用会社に組み込まれる内容だ。さらに、創業事業である航空機の機内食事業を売却する。コロナ禍で苦境の外食チェーン大手のなかで、筆頭株主が変わる業界再編の先陣を切った。ロイヤルホールディングスの経営難を徹底分析する。

双日は「棚ぼた」でロイヤルHDを手に入れる

 一方、双日には今回のロイヤルHDの資本提携は「棚ぼた」だったようだ。総合商社は、伊藤忠商事(株)の(株)ファミリーマートや、三菱商事(株)の(株)ローソンに代表されるように、各社とも消費者と直結する事業を通じて市場の変化をとらえ、商社のサプライチェーン(調達、供給網)に生かす取り組みを加速させている。

 しかし、双日は、小売分野の取り組みが弱い。持ち込まれたのはロイヤルHDへ支援する話で、加えて持ち分法適用会社としてグループ化することも可能だ。こんなおいしい話はない。「双日の藤本昌義社長は、今回の提携話は『渡りに船』だと、その心情を吐露した」(『産経新聞』2月15日付)というのも納得がいく。

 双日は、ロイヤルHDの社外取締役に、山口幸一氏(常務執行役員 航空産業・交通プロジェクト本部長)と村井宏人氏(執行役員 リテール・生活産業本部長)を送り込む。就任は3月31日の予定。

 双日は、ニチメン(株)と日商岩井(株)が2004年に合併して誕生した。総合商社7社の2021年3月期の最終損益(見込み)は、伊藤忠商事が4,000億円で悲願のトップを達成。以下、三井物産(株)2,700億円、三菱商事2,000億円、丸紅(株)1,900億円、豊田通商(株)1,000億円、双日300億円。住友商事(株)は1,200億円の赤字転落だ。

 双日はほかの大手商社に大差をつけられている。コロナ禍で新規の海外投資案件が開拓できない事情も、双日を提携に向かわせた。ロイヤルHDとの資本業務提携は「千載一遇のチャンス」(藤本昌義社長)だった。

大赤字の機内食事業を連結対象から切り離す

 ロイヤルHDは、ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」や「天丼てんや」の外食事業、空港内・高速道路内のレストランや社内食堂の受託などのコントラクト事業、機内食事業、リッチモンドホテルのホテル事業が主要4事業だ。

 昨春の緊急事態宣言発令による休業に時短営業を経験した20年5月に構造改革に着手。不採算店閉鎖では合計約90店の閉鎖を計画し、すでに約70店を閉店。希望退職募集も行い、21年1月末に315人が退職した。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、外食のほか、機内食やホテル事業が落ち込み、20年12月期の連結決算は惨憺(さんたん)たる結果で終わった。連結売上高は前期比40.0%減の843億円、経常損益は198億円の赤字(前期は46億円の黒字)、最終損益は275億円の赤字(同19億円の黒字)だ。

<主要セグメント別損益>
(単位:百万円 カッコ内は前期比増減率%)

 なかでも落ち込みが激しかったのが、機内食事業である。新型コロナウイルスの感染拡大で国際線の便数が激減し、国際線の旅客数の落ち込みで、20年5~6月の機内食事業の売上高は前年同期比94%減と、ほぼ壊滅した。国内線は徐々に再開し始めたが、機内食の大半を占める国際線の本格的な再開は進んでいない。20年12月の機内食の売上高は前年同月比85%減だ。

 機内食事業を運営するのがロイヤルインフライトケイタリング(株)(RIC)。関西、福岡、沖縄の3カ所に機内食工場をもつ。福岡空港、関西国際空港、那覇空港、成田国際空港、東京国際空港で、日本航空(株)(JAL)や全日本空輸(株)(ANA)など40社から業務を受託している。

 ロイヤルHDの菊地会長は、RICを双日に渡して、連結対象から外す理由について、「創業事業で、参入障壁も高い事業だが、(海外渡航が制限されるなかで)どなたかの手を借りないと回復は難しい」と説明している。
「そこまでやるか!」と衝撃をもたらしたのは、この機内食事業の売却である。機内食事業は、ロイヤルHDの一丁目一番地、創業の原点であるからだ。

(つづく)

【森村 和男】

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