GoTo緊急事態繰り返す菅二階内閣
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NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、「GoToで、政治家も官僚も自分の利益だけを優先している」と訴えた2月24日付の記事を紹介する。
菅内閣の基本原則は
「後手後手、小出し、右往左往」
である。コロナ対策の後手後手対応は安倍内閣から引き継いだもの。
昨年1月にコロナ感染が重大視された時点から、対応は後手後手に終始した。昨年1月23日に中国・武漢市が封鎖された。
その翌日に、安倍首相は在中国日本大使館HPを通じて、中国国民に対して春節の休みを利用しての日本訪問を呼びかけた。
3月24日に東京五輪の延期が正式決定されるまで、安倍内閣は東京五輪の昨年7月開催を目指していた。国民の命より五輪を優先したのだ。
これが「後手後手対応」の主因だった。
コロナ対策では不完全対応を続けて今日に至る。コロナ収束に成功した国は、感染初期に感染拡大の封殺策を採用した。
感染拡大封殺を実現するには強い措置が必要だ。
全数に対する検査も必要になる。強い措置は経済活動に打撃を与えるが、長い目で見れば、断固とした対応で感染拡大を封殺してしまうことが得策である。
台湾やニュージーランド、オーストラリアがこの手法で成功を収めた。日本の対応は「小出し」の連続。
PCR検査は1回2,000円で可能なのだから、1億回実施しても2,000億円。
10億回の予算を確保しても2兆円だ。GoToに2.7兆円もの血税を投入する余裕があるなら、そのまえに検査を拡充すべきだ。
検査で陽性者を特定し、この陽性者が感染を拡大させないように対応することが重要なのだ。最悪の政策がGoToだ。
GoToは人の移動を拡大させる。
人々の会食機会を激増させる。
感染拡大の原因にならないわけがない。政府はGoToで確認された感染者数が少ないと説明するが、すべての陽性者にGoTo利用の有無を尋ねていない。
政府はGoToトラベル利用者が延べ人数で8,000万人超だと説明しているが、このなかでコロナ陽性者数が300人以下であるわけがない。また、延べ人数で8,000万人超と説明すると、圧倒的多数の国民がGoToトラベルを利用したように見えるが、多数回利用している人が多数存在する。
重複分を除外した計数を発表しなければ実態がわからない。
人の移動と感染拡大には明瞭な因果関係がある。人の移動指数変化と新規陽性者数変化に3週間のタイムラグがある。
この要因とグローバルな感染拡大波動が合わさり、日本の感染拡大波動が形成される。昨年春の流行では、人の移動がピークを付けたのが3月20日。
「ロックダウン」の可能性が示されて、人々の行動が急激に変化した。
人の移動がボトムを記録したのが5月5日。
3週間後の5月25日に緊急事態宣言が解除されたが、このときにはすでに人の移動が増加し始めていた。7月、8月に感染が拡大し、新規陽性者数は8月7日にピークを記録した。
このなかで安倍内閣はGoToトラブル事業を本格推進した。11月に入って、感染拡大が鮮明になった。
しかし、菅義偉首相は12月28日までGoToを全国規模で停止しなかった。
その結果として感染爆発が生じた。日本国民は状況の悪化を認識して、11月3連休の11月21日以降、行動抑制を強めた。
その結果として、新規陽性者数は1月8日をピークに減少に転じた。
世界の感染拡大波動と同一の波動が形成されている。人の移動は12月31日にボトムを記録したが、その水準は昨年5月5日の水準よりはかなり高い。
また、2月中旬以降、人の移動は目に見えて再拡大に転じている。
これから4月にかけて人の移動が拡大する時期にさしかかる。
誤ったメッセージが示されれば、4月から5月にかけて感染第4波が発生するリスクが生じる。菅内閣がGoTo再開を検討し始めたと報じられている。
究極の「右往左往政策」だ。
GoTo再開検討があり得ないことを確認しなければならない。感染第4波が生じれば東京五輪中止が確定する。
東京五輪は速やかに中止を決定すべきだが、菅首相は国民大多数の意思を踏みにじって開催を強行する姿勢を示している。
IOCも放映権収入のために開催強行を目論んでいる。
菅内閣もIOCもJOCも五輪組織委員会も、自分たちの利益しか考えていない。その姿勢を端的に示したのが森喜朗氏の
「コロナがどんなかたちでも必ずやる」
発言だ。組織委員会の歪んだ正体を鮮明に浮かび上がらせた。
IOCはきれいごとを並べるが巨大な放映権収入を得るために五輪開催強行のスタンスを維持している。こんなオリンピックを誰が歓迎するのか。
「平和の祭典」でなく「守銭奴の祭典」でしかない。
五輪が営利目的の営利事業であるなら、1円たりとも税金を投入すべきでない。
利権関係者が自前資金で実施すべきだ。公共施設の利用には膨大な費用がかかる。
これらの費用もすべて自己負担して実施すべきだ。
また、国家にとって営利団体の営利事業は優先されるべきものでない。政治の最大の責務は国民の命と暮らしを守ること。
国民と命と暮らしを守る視点から、五輪開催は正当化されない。五輪開催が変異株流入をもたらすリスクが極めて大きいからだ。
変異株が流入して感染拡大が生じれば、多数の日本国民が損害を蒙る。
このリスクを払って営利団体の営利事業を強行する理由は存在しない。GoToは一握りの事業者に法外な利益を供与するもの。
医療従事者や介護従事者にとって「百害あって一利のないもの」だ。
基礎疾患を持つ人、高齢者にとっても「百害あって一利のないもの」だ。1泊4万円の宿泊に税金から2万円を拠出する正当な理由がない。
GoTo実施時期だけ、航空機が満席に近い状況になる。
飛行機を使う宿泊旅行がGoToの対象になるからだ。
航空会社に巨大な税金を投入しているのだ。他方で、コロナ不況で苦しみながら、何らの支援策を受けられない事業者が多数存在する。
生活苦が極限に迫る国民が多数存在する。GoToイートではグルメサイト運営者に巨大な利益が提供された。
菅義偉氏は自分と関係が深いグルメサイト事業者に特別の利益を供与している。
二階氏は利益を供与する見返りに旅行業協会から多額の献金を受領している。
基本的に汚職の構造が垣間見られるのだ。財政資金は透明、公正、公平に配分される必要がある。
1人10万円の一律給付は、この点で優れていた。
富裕層にまで10万円給付が必要かとの意見があったが、この問題は給付金を課税対象にすれば大きく緩和される。73兆円もの巨大な新規支出を計上しながら、すべての国民にまんべんなく、透明に配分される予算は12兆円に過ぎない。
政治家も官僚も自分の利益だけを優先している。
GoToで感染再拡大を招けば、経済活動の再生は遠のくばかりだ。補正予算審議でGoToを削除すべきだった。
野党はGoTo削除を要求しながら、予算案の採決をそのまま容認した。
GoTo予算をPCR検査に振り替えるだけなら1日で予算修正も可能だ。野党も結局は与党の利権優先政策に加担していると評価されざるを得ない。
本当の意味で国民目線に立った政策運営を明示する政治勢力の登場が待望される。
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