2024年11月18日( 月 )

【ヒット化粧品の舞台裏】超ロングセラー「馬油といえばソンバーユ」、激動の時代も「変えない」という選択(後)

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 トレンドの変化が激しい化粧品業界。毎年、多くの新商品が発売されるなか、変わらずに長く使い続けられている化粧品もある。30年以上のロングセラーであり、日経POS情報で平成の売上No.1(ボディーオイル部門)となったヒット化粧品「ソンバーユ」の秘密に迫る。

ネット通販、ドラッグストア、直販店が主力

 「ソンバーユ」の販売チャネルは、自社の通販サイトや全国のドラッグストア、直販店が主力。メイン商品の無香料タイプは、販売チャネルを問わずに幅広く展開している。自社通販サイト向けとドラッグストア向けで、それぞれ商品仕様が異なる。ドラッグストア向けは、店頭で手軽に購入しやすいやや小さめの70mlサイズで、自社通販サイト向けは少し大きめの75mlサイズ。ヒノキやバニラの香りなど幅広い商品をラインアップしている。

 製造元の同社から直接買いたいという消費者も多く、また多量の購入の場合に優待価格が設定されていることもあり、自社通販サイトからの購入も多いという。

「ソンバーユ」(左:自社通販サイトなどの通販向け、右:ドラッグストア向け)

 「ソンバーユ」の発売は、消費者から寄せられた声がきっかけだった。薬師堂グループの(株)筑紫野物産研究所が梅からつくった健康志向食品「梅雲丹」を全国のデパートの物産展で販売するときに、馬油のサンプルを配ったところ、「商品として販売してほしい」という声が聞かれた。遠方の消費者が購入しやすいように、通販チャネルの活用も始めた。

 薬師堂取締役・高橋光晴氏は「デパートの物産展は、今も新しいお客さまとの出会いの場として大切にしています。社員が全国のデパートに出張して1週間から2週間ほど出展し、リアルな場で人とのつながりを築くことが必要だと感じています。また、商品を詳しく説明できる物産展がきっかけで長く使ってくださるお客さまも多く、商品の良さを知ってもらう入り口となる対面販売は欠かせません」と語る。

 保湿系化粧品は肌の乾燥を感じる冬場にとくに販売が伸びるが、「日差しが強く汗をかきやすい夏こそ、気づかないうちに肌が乾燥していることも多いのでケアが必要です」と季節を問わずに使用することを推奨している。

肌だけでなく、心のケアも必要な時代

(株)薬師堂取締役・高橋光晴氏
(株)薬師堂取締役・高橋光晴氏

 薬師堂では優れた商品づくりを重視。これとともに、人と人のつながりの大切さも、コロナ禍で改めて見直しているという。通販については、発送時に手紙を添えたり、利用者からの手紙やはがきを社内で回覧したりすることで、人とのつながりを感じ、声を届ける体制を築いている。

 気分よく過ごしていると肌の調子が良いと感じ、逆に肌の調子が良いと気分も軽くなるように、「肌のケアだけでなく、お客さまの心により添えるように工夫していきたい」(高橋氏)と、人とのつながりを感じられる新たな取り組みを企画している。

 5~6年前には訪日中国人観光客による「ソンバーユ」の爆買いがあり、製造に2年かかることから一時品薄になった。高橋氏は「国内の利用者に迷惑がかからないように、当時の経験を教訓として、これまでと同様に国内での販売を優先しています」と話す。

 一方、肌の乾燥は世界共通の女性の悩みであり、海外販売のポテンシャルもある。訪日しなくても買えるように、中国最大のネット通販モール「天猫(T-mall)」に旗艦店を昨年オープンするなど、他社と提携しながら海外向けネット通販も行っていく方針だ。

(了)

【石井 ゆかり】

(前)

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