2024年12月29日( 日 )

喉元過ぎて熱さ忘れる利権優先菅内閣

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事を抜粋して紹介する。今回は、東京五輪開催を強行し、4~5月に新型コロナ感染爆発を引き起こすならば菅首相は退陣するしかないと訴えた3月20日付の記事を紹介する。

緊急事態宣言そのものの効果というよりも、コロナに関するさまざまな情報を集約して人々がどう行動するかがカギを握る。

昨年春に感染第1波が観測された。新規陽性者数がピークを記録したのは4月10日。全国の新規陽性者数は708人。これに先立って人の移動指数はピークアウトしていた。

ちょうど1年前、昨年3月20日がピーク。東京都の小池知事が「ロックダウン」という言葉を用いた。3月20~22日が3連休だった。この3連休に人出が拡大したが、ピークを記録したのがちょうど1年前の3月20日。3月20日をピークに5月5日まで人の移動が急激に減少した。緊急事態宣言が全国で解除されたのは5月25日だが、人の移動がボトムを記録したのは5月5日。

新規陽性者数は人の移動変化から3週間遅れて数値となって表れる。人の移動ピークが3月20日で、新規陽性者数ピークが4月10日だった。

私はアップル社が提供している人の移動指数を用いているが、人々の行動変化が正確に捉えられる。人の移動指数は、自動車、交通機関、徒歩の3種類に分けて数値が発表されている。人の移動が高水準で推移したのが7月下旬から11月末までだった。

安倍内閣は7月22日にGoToトラベルを前倒し始動させた。観光業界への利権付与が優先された。GoToにともなう人流拡大が11月末まで続いた。11月21日の3連休初日に人の移動がピークを記録した。11月に入って新規陽性者数は明瞭に増加に転じていた。

感染第3波発生は明瞭だった。11月3連休前に強い対応が必要だったが、菅義偉首相はGoToトラベルの全面的展開を強引に12月28日まで維持した。この影響で新規陽性者数がピークを記録したのは1月8日になり、その数は7,844人に達した。2020年4月ピークの10倍水準になった。

新規陽性者数激増にともない医療が崩壊。感染しながら病院にも宿泊療養施設にも収容されずに、自宅で死亡する放置民死が多発した。

新規陽性者数の波動を形成する2つの主因は、世界全体の感染波動と人の移動指数変化。人の移動指数は12月入り後に減少に転じた。緊急事態宣言発出は遅れたが、人々が自衛的に行動して人の移動が急低下した。ボトムを記録したのは12月31日だった。

1月に入り、遅ればせながら緊急事態宣言が発出された。この影響もあって2月中旬までは人の移動が抑制された。しかし、2月中旬以降は人の移動が明瞭に再拡大に転じている。季節的にも人の移動が拡大しやすい時期に移行する。

緊急事態宣言解除の思惑が強く影響している。抑制されていた人々の行動が一気に爆発しやすい状況にあることも影響している。

1年前は3月20日に人の移動はピークをつけて急激な減少に転じた。東京五輪延期が正式決定されたのは3月24日。宮城県で聖火到着式が実施されたのが3月20日。航空自衛隊アクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が上空に五輪のカラースモークを描くことになっていた。

ところが、五輪の輪は描かれずに強風に吹き流された。東京五輪の行く末を象徴する聖火到着式になった。この日から人の移動指数は急落。3週間後の4月10日に新規陽性者数がピークを記録して急速な減少に転じた。

今年は3月21日をもって緊急事態宣言が解除される。世界的に感染第4波が生じるなら、日本において4月、5月に感染爆発が生じる条件が整えられつつある。

3月25日に予定されているサッカーの日韓戦開催のため、外国人の入国制限がなし崩しで緩和される。外国人の入国は遅ればせながら1月13日に厳しく制限された。菅首相は昨年12月28日に入国規制強化を発表したが、完全なザル規制だった。外国人入国の太宗を占めるレジデンストラック、ビジネストラックを入国規制の対象から外したのだ。

サッカーの日韓戦に合わせて「スポーツトラック」設定が目論まれている。スポーツ選手の入国後2週間待機措置などが外される。すべては東京五輪開催強行に向けての措置である。

国民の命より利権。これが菅内閣の基本姿勢。GoToトラベル強行、入国規制妨害、五輪強行のすべては利権優先のスタンスから生じる行動だ。

日本ではワクチン接種が進まない。安全性が確認されていないワクチンを忌避する国民が多い。ワクチン認可には通常、長い時間がかかる。とりわけ重要なのが第3相治験。時間をかけてワクチンの有効性と安全性を確認する最重要のプロセスだ。コロナワクチンにおいては、この第3相治験が省略されている。当然のことながらリスクをともなう。

重大な副反応が発生した場合、製造者が免責される条項が盛り込まれた。製造者にとっては濡れ手に粟の暴利をむさぼることができる構造だ。ワクチン利権のためにコロナ大騒動が創作されているとの疑いも払拭できない。

ワクチン接種後の死亡事例が多数存在する。因果関係の立証は容易ではない。因果関係がないと判定されれば救済措置は取られない。こんなリスクの高いワクチンなど接種したくないと考える人が多数発生して当然だ。そもそも、日本では若年の健常者がコロナで重篤化するリスクが低い。

コロナ情報が氾濫しているが、政府はコロナ感染者の詳細なデータを公表しない。どのような属性の人が重篤化するのか。死亡者の実際の経過などが詳細に報告されるべきだ。この現実の情報によって、どのような人がどの程度、コロナを警戒すべきかが明らかになる。

若年の健常者が仮に感染しても重篤化するリスクが低いなら、安全性が十分に確認されていないリスクのあるワクチンを接種する合理性は著しく低くなる。ワクチン接種が十分に進まなければ、感染拡大のリスクは低減しない。また、変異株のなかにワクチンが有効でないものが登場し始めている。

日本国内においても感染の中心が変異株に移行すると見られている。外国からの人の流入を緩和すれば変異株が次から次に国内に流入する。感染力が高い変異株、毒性の強い変異株が国内に流入し、感染を拡大させる可能性がある。

政府が優先すべき施策は感染の収束である。感染を収束させるには人々に行動抑制を求めなければならない。また、検査を広範に実施して陽性者を特定する必要がある。陽性者を隔離することによって感染拡大を防ぐしかない。感染症対策の基本は「検査と隔離」であることを改めて認識すべきだ。

五輪開催強行はコロナ感染収束と完全に矛盾する。人流が急拡大する時期に合わせて緊急事態宣言を解除して、4月、5月に感染爆発を引き起こすなら、菅首相は退陣するしかない。決定権限を持つ人間がギャンブルに走ることをだれも止められない。この現実がある限り、その責任者が責任を取る以外に選択肢はない。

コロナ感染拡大で被害を被る人々は、緊急事態宣言解除によって、それぞれ個人の「緊急事態宣言」を発出しなければならない状況に追い込まれた。政策運営が失敗した場合の罪は万死に値することになる。


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植草一秀の『知られざる真実』

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