【コラム】マンション管理士のつぶやき(1) 管理状況は資産価値に影響
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「買って終わり」でいいのか?~丸投げされるマンション管理
散歩の途中、「高級」と冠のつくマンションの横をよく通るのだが、気になって仕方がないことがある。通りに面したごみステーションの鉄製の扉が壊れて開けっ放しになり、中のごみが丸見えになっているのだ。
「12月20日の車両事故により扉が破損したため取り外しております(後日交換予定)」との貼り紙がしてあった。気に入らない。冬が終わり、桜の季節も過ぎたのに、対応が遅すぎる。「高級」マンションのはずなのに誰も何も言わないのだろうか……。そう思っていたら、4月も半ばになってようやく、壊れたまま放置されていた扉が撤去されて新しい扉が取り付けられた。4カ月ぶりのごみステーション正常化に他人事ながらほっとしている。
マンション管理にまつわる問題は、こうした小さなことからマンションの憲法といわれる管理規約の制定や見直し、あるいは十数年に一度の大規模修繕工事までいろいろある。マンションには多様な価値観の人々が住む。小さなトラブルが大きな遺恨につながることもある。そうなってからでは対処のしようがない。マンション管理の主体は管理組合、つまりマンションの住人である。だが、無関心の壁が問題への直面を阻む。忙しい、面倒くさい、そう言って管理会社に丸投げすることになりがちだ。
増える「スラム化マンション」
昨年6月に成立した改正マンション管理適正化法が、来年4月に施行される。改正の目玉は新たに制定される「管理計画認定制度」だ。国交相が示す基本方針に基づき地方公共団体がマンション管理適正化推進計画を作成し、適切な管理計画を有するマンションを認定するというもの。要は、誰が見ても納得のいく修繕計画を立て、その計画に沿った積み立てを実施しているか、また理事会、総会を定期的に開くなど管理組合の運営は良好か、などのマンション管理状況を評価するという内容。認定されればマンションの資産価値は上がり、健全な地域コミュニティの一員としてまちづくりにも貢献できるということだ。
国が重い腰を上げ、制定から約20年を経て法改正に乗り出した背景には、管理不全あるいは管理不能な“スラム化マンション”増加の懸念が現実味を帯びてきている現状がある。建物は老朽化が進み、居住者の高齢化で管理組合役員の担い手不足も深刻化している。国交省によると、築40年以上のマンションは約81万戸(2018年末現在)、これが10年後には198万戸、20年後には367万戸になる見込みなのだから、マンション管理改革はもはや待ったなし。管理状況の良し悪しでマンションを差別化し、意識の低い管理組合や区分所有者の目を覚まそうというわけだ。
「無関心」ではぼったくられて当たり前
目論見通りに事が運ぶかは不明だが、住人の意識改革を促すことに異論はない。マンション管理士のひとりとして、そのモチベーションを高めるための事例を紹介しよう。マンション管理新聞(3月5日発行)が産経新聞からの引用として掲載した。<修繕費、入札で4割抑制 大阪のマンション 業者提案うのみにせず 見積もり1億6,000万円→9,630万円に>との見出しで、「管理会社や建築事務所などプロと呼ばれる人々の提案は本当に適正なのか。第三者にも検証を依頼するなど、組合が疑いの目をもって主体的に行動しなければ、高い無駄金を払うことになりかねない」と記事は訴えている。
無関心、他人任せでは、ぼったくられてもしかたがない、ということだ。あなたや、あなたの周りの区分所有者みんなが月々律儀に納めて膨れ上がった修繕積立金を、悪徳業者がかすめ取ろうと狙っている。よくわからないから、では済まされない。忙しいから、もつまらぬ言い訳だ。自分の財産を守るために目を覚まそうではないか。
【マンション管理士&フリーランスライター 山下誠吾】
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