被災地復興や新型コロナ禍への対応 高まる業界団体としての存在感(後)
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(株)森商事 代表取締役
(公社)福岡県産業資源循環協会 会長
森 史朗 氏産業廃棄物を適正処理することは生活環境の保全と国民経済の発展を図るために不可欠なうえ、近年は大規模災害の多発などで被災地における災害系廃棄物の処理も大きな社会問題となっている。(公社)福岡県産業資源循環協会は産業廃棄物処理業者と排出事業者などが会員となって運営される業界団体で、協会員は400社超。会長として業界をリードする森史朗氏は、さまざまなリスクの高まる現代社会で廃棄物処理は社会に欠かせない「エッセンシャルワーク」だと自負する。
「労災ゼロ」を目指して
――人手不足以外に、国や県に対する要望などはありますか。
森 具体的な要望としては、軽油引取税についてですね。軽油は一般的にディーゼルエンジンなどに利用されて軽油引取税がかかりますが、最終処分場で使う重機については減免されています。この減免期限が22年3月31日に迫っているため、最終処分場業者からはこれまで通り課税をしないでほしいという要望が出ていましたが、連合会の働きかけなどによって24年度まで延長されそうです。
さらに、これは業界に限った問題ではありませんが、不法投棄の問題が後を絶ちません。廃棄物をたくさん集めて放置して逃げるような場所がいまだにあります。その撤去費用に関しては義捐金を出捐していますが、財源が乏しくなりつつあるという状況です。環境省の提唱で撤去費用については当団体も出捐し、基本的には各会員が協力していますが、不法投棄された大きな案件が1件でもあると費用がかさばって財源を圧迫してしまいます。
「働く」という観点で見ると、残念ながら私たちの業界は他業種に比べて労災事故の発生率が高いという現状もあります。厚生労働省からは「度数率(100万延べ実労働時間あたりの労働災害による死傷者数)が高いので、業種として労災事故を減少・撲滅させるための方策を講じてほしい」旨の要望も出ています。
――具体的にどういった事故が多いのでしょうか。
森 いろいろなケースがあります。たとえば車の荷台に乗ってシートを引っ張った際に転倒して後頭部を打つ、あるいは挟まれたり、巻き込まれたりするなど身近にいろいろな危険が潜んでいます。想定外の事故は数え切れません。福岡県の場合、前年度は死者数がゼロでしたが、けがで4日以上休業の労働災害は他業種を大幅に超えているという現実があります。ただし、事故を起こした事業者が協会員か非協会員かはわかりません。労基署は「廃棄物処理業」と一括りにしていますが、そのなかに非協会員の方がどれくらいいるかを把握するための統計はとっていませんから。行政側にすれば、協会員であろうが非会員だろうが関係ありません。現在協会では、労働災害の撲滅に向けて、たとえば標語を募集して優秀賞を表彰したり、ヒヤリ・ハット事例を取りまとめたりしています。連合会では安全衛生委員会、県協会ではリスク対策部会という部署で取り組んでいますが、最も大きなスローガンは当然「事故の撲滅」ですね。
産廃処理業は「エッセンシャルワーク」
――新型コロナウイルスの感染拡大が始まって1年以上が過ぎました。業界として影響を受けたことはありますか。
森 たとえば、許可更新の際に必要になる(公財)日本産業廃棄物処理振興センター主催の産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会はオンラインで行われています。受講人数を絞って開催している関係上、環境省では修了証の添付を後日でもかまわないとする特例措置などを設けています。
また、これはコロナ禍による問題というわけではありませんが、中間処理業者などは申請しても許可が出るまでに時間がかかるという不満があります。その結果、許可期限中に更新に行っても期限までに更新が間に合わないというケースもあります。その間については担当窓口の受理捺印をもらっているような法的に問題がない場合でも、クライアント側は設備に不備があるのではないかとの心情が働き、ビジネスに影響します。このため、もう少しスピード感をもってほしいとの意見もあります。
コロナ禍で実感したことですが、我々の仕事は「エッセンシャルワーク」(必要不可欠な仕事)なのですね、やはり。たとえば今、飲食業や宿泊業は甚大な被害を受けていますが、我々の業界では経営環境が悪くなったという話はあまり聞きません。というのも、業種で少し偏りはありますが、半導体やIT関連など巣ごもり需要で業界環境が良くなった業種は間違いなくありますし、私たちはそうした業界から仕事を受託しますので廃棄物が出ないということはありません。私たちを必要とするクライアントは基本的にベーシックな素材型産業ですから、業界自体がすべて低迷することはありません。
九州管内に限ればコロナ禍というよりもむしろ、冒頭に申し上げたように、自然災害にともなう初動を含めた行政側との緊密な連携と対応をさらに推し進めていきたいですね。まさにエッセンシャルワークであり、この気候変動に関する取り組みは今後の大きな課題になると思います。
(了)
【内山 義之】
<INFORMATION>
(公社)福岡県産業資源循環協会
所在地:福岡市博多区吉塚本町13-47
TEL:092-651-0171
FAX:092-651-1065
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