【IR福岡誘致開発特別連載38】IR和歌山、中華系サンシティが突然の撤退
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これまでお伝えしてきたことが、また1つ現実となった。今月12日、最有力候補とみられていた中国マカオに本拠を置くサンシティグループ ホールディングス ジャパン(東京都港区)が、今夏のRFP(提案依頼書)提出を前に突然の撤退を発表したのだ。
撤回の理由について、コロナ禍による業界の甚大な被害と、我が国の本件スケジュールの変更などを挙げている。また一部報道では、同社の本業であるジャンケット事業(カジノ貸金業)に絡むマネーロンダリング疑惑についてオーストラリア政府から指摘されたことによる影響も取りざたされている。
現状、中国人の海外カジノへの観光は習近平政権によって渡航制限など強い規制を受けている。加えて、米中覇権争いのもと、日米が経済安全保障をめぐり連携を強めている状況だ。しかし、コロナ禍やオリンピックに振り回されている我が国の政治家と各行政機関には、このような危機意識はまったくないようだ。
筆者は、本件に参戦しているIR横浜とIR長崎の中華系カジノ投資開発企業について、当初から無理があり、政府はこれらを選択すべきでないことを説明してきた。今回、突然の撤退によって右往左往しているが、近いうちに長崎や横浜でも同じことが起こる可能性は否定できない。
IR和歌山の残る1社は、カジノオペレーターではないIR投資企業のクレアベストニームベンチャーズ(カナダ・トロント)。同社はあくまでも投資開発企業であり、いずれかのゲーミングオペレーターなどとの提携により、IR事業開発組織の主体として構築するのが目的である。ただし、米国ではないカナダの企業にどれだけのチャンスがあるのかという疑問も残る。この2社は、過去にも北海道苫小牧市のIRで失敗している。
本件は、米国のトランプ前大統領と安倍前首相の“密約”で始まった。従って、和歌山のカナダ企業であっても長崎のオーストリア企業であっても対象ではなく、チャンスはない。本件は、IR大阪とIR福岡の2箇所にしか可能性はない。つまり、IR大阪の米国MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックス、IR福岡の米国企業しか対象にならないことを繰り返し断言する。
さらに、コロナ感染拡大にともなう度重なる緊急事態宣言の発出の影響を受け、IR大阪をはじめとしてどの候補地も本件の申請締め切り日(来年4月末)に間に合うとは考えにくく、今夏予定されている横浜・和歌山・長崎のRFP提案と選抜も困難とみられる。このため、政府は早急に来春の申請締め切り日を再延長する必要があるだろう。これらは、我が国の危機意識の無さと危機管理の甘さに起因する問題だ。
【青木 義彦】
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