2024年11月23日( 土 )

世界ではウェアラブルからBMIへの大転換が加速中!

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 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。今回は、2021年3月12日付の記事を紹介する。

 「フェイスブック」のマーク・ザッカーバーグ社長は世界初のテレパシー・ネットワーク構築を計画し、その実用化に向けて余念がない。具体的には脳とコンピューターを結びつける研究を継続している。すでに毎秒100ワードを考えただけでタイプできる縁なし帽を開発した。というのも、世界では30万人以上が内耳インプラントによって音を電気信号に変換することで聞こえる力を獲得しており、医療面でもさらなる応用が期待できるからだ。

 同様の動きはイーロン・マスク社長の「ニューラリンク」でも進んでおり、BMI(脳とマシーンの合体)技術で人をオーガニック・コンピュータへ転換させるビジネスの土台が生まれつつある。メリーランド大学のベントレー教授の下では、生物学的細胞をコンピューターの意思決定過程に一体化させる研究が進化を遂げている。つまり人体の細胞の周囲にエレクトロンを配置することで、細胞が電流を起こし、通信用の電波を発信するという仕掛けに他ならない。将来的には人体による発電も可能になるという。

電脳 イメージ 極めつきはマサチューセッツ工科大学(MIT)の開発するコンピューターとのインターフェース「アルターエゴ」であろう。これは話さなくともコンピューターを操作できるデバイスである。まさにウェアラブルの新革命といえそうだ。顎や顔の動きで神経細胞のシグナルを受信し、コンピューターを動かすという画期的なもので、マシーン・ラーニングへの応用も想定されている。

 こうした新たな研究開発の先導役をはたしているのが「Google」のエンジニアリング部門の責任者で、世界的に著名な未来学者レイ・カッツウェル博士であろう。彼の発想は人類の歴史を大きく変える可能性を秘めている。なぜなら、自らが「永遠の命を目指す」と宣言しているのみならず、亡くなった父親をアバターとして蘇生させる計画をも推進しているからだ。

 その意味では、人工知能(AI)の世界は2029年に大転換期を迎えることになるだろう。というのは、カッツウェル博士の予測では「その年までにコンピューターは人間の知性を超える」からだ。いわゆる「2045年シンギュラリティ論」である。いうまでもなく、世界はその方向を目指し、猛スピードで進み始めている。このプロセスは止まりそうにない。ましてや人と人との接触を減らすコロナ禍はそうした動きを後押ししていると言っても過言ではないだろう。

 先日、日本史上最高の4.9兆円という収益を叩き出した「ソフトバンク」の孫正義会長も同様な考えのようだ。孫氏は「シンギュラリティは2047年」と予測している。その結果、「人間の脳はクラウドと接続することになり、人間の能力は飛躍的に進化を遂げる」と断言。BMIによって、ロボットとの対話も人間同士のコミュニケーションもテレパシーで可能となる。「フェイスブック」や「ニューラリンク」の新規ビジネスも、そうした流れを受けてのこと。

 実は、「人間の進化の次の段階はサイボーグ化」と言われて久しい。30年代までには体内にマシーンが当たり前のように装着されるというわけだ。「鉄腕アトム」が現実化する世界が間近に迫っているといえるだろう。なぜなら、思考を司る脳の一部である新たな外皮をクラウドと接続する実験が進んでいるからだ。新たな外皮が誕生すれば、人はより楽しい存在になり、音楽やアートに長けるようになるに違いない。

 現在もパーキンソン病の患者は脳内にコンピューターを埋め込むことで、治療に活路が見出されている。30年代には脳内に埋め込んだチップで記憶力も判断力も格段に向上するに違いない。

 また、こうした埋め込みチップの電力を人体から発電する装置の研究も着実に進化している。コロラド大学のシャオ教授の下では人体から熱を吸収し、安定的な電力源にするリング状のデバイスを開発したと公表。アップル・ウォッチやFitbit のようなウェアラブルの動力源になる。

 しかも、バッテリーが不要という。従来のバッテリーはレアアースなど腐食性物質を材料としており、人体には有害と目されてきた。それに代わる人体ベースの発電方法となれば、体と皮膚から電気を得ることができるわけで、ペースメーカーや心筋梗塞予防装置などの動力源としても安全性が確保されることになる。

 現在、人体は食事から得るエネルギーの25%しか機能的にはアウトプットできていない。今後、体内に内蔵した電動デバイスの発電にも活用が可能となれば、アウトプット比率は大きく向上するだろう。さらに驚くべきことに、この発電デバイスは故障した場合には自ら修理する自己修繕能力があるという。

 こうしたウェアラブルの国際市場規模は25年までに700億ドルに拡大すると予測されている。スマートウォッチの市場に限っても、18年に130億ドルだったものが、21年には32%増加し180億ドルへ拡大することが確実である。スマート歯磨きブラシ、ヘアーブラシも人の行動パターンや利用状況のデータを蓄積することで、利用する人間の健康管理にも役立つようになる。そうなれば、IoT市場は19年に2,500億ドルだったが、27年までに1兆4,630億ドルへ飛躍的に拡大するであろう。

 要は、人間の体も頭脳もウェアラブルやIoTのお蔭で、サイボーグ化することは既定路線になりつつあるわけだ。問題は、そうした恩恵を我々がどこまで享受できるのか、ということであろう。確かに、永遠の命を手にすることは夢のある話だろうが、我々の生身の人間にとって、そうした新たなデバイスを受け入れる心と肉体の準備が45年に間に合うのだろうか。その点が多いに気になるところではある。


著者:浜田和幸
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