2024年12月19日( 木 )

日台のビジネスマッチングをサポート、海外事業で台湾企業との連携を(前)

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台湾貿易センター福岡事務所長 林 志鴻 氏

 台湾経済部(経済産業省に相当)と業界団体の支援により設立された非営利の貿易振興機構「台湾貿易センター(中華民国対外貿易発展協会、TAITRA)」。その福岡事務所は40年以上にわたり、九州7県、山口県、沖縄県で日台企業のビジネスマッチングをサポートしている。コロナ禍で往来が制限されるなか、日本企業は今後の成長のために台湾の企業・産業をどう向き合っていくべきか。林志鴻・福岡事務所長に話を聞いた。

商談会やセミナーなど全イベントをオンライン化

 ――コロナ以降、台湾の事業環境はどう変わりましたか。

林 志鴻 氏
林 志鴻 氏

 林志鴻氏(以下、林) 台湾では新型コロナウイルス発生当初から水際対策を徹底したことが功を奏し、防疫に成功してきたため、国内に限れば事業環境に大きな変化はほぼありません。人々はマスク着用、手指の消毒、検温など基本的なウイルス対策を行ったうえで、コロナ以前と同じような働き方をしています。海外のようにコロナ対策でリモートワークが普及したということもありません。 

 ただ、台湾は国内市場に限りがあり、貿易が経済の要です。コロナの世界的な流行のため、台湾企業は従来のように海外での見本市に参加して新規顧客を開拓したり、海外の顧客を回ったりすることができず、海外バイヤーが台湾を訪問することも難しいため、ビジネス上の影響は小さくありません。 

 産業別に見ると、世界的な半導体不足を背景に半導体産業とその周辺産業はフルに稼働している一方で、一部の産業や企業はスムーズなビジネス展開ができないという課題を抱えています。 

 ――コロナ以降、センターの業務はどう変わりましたか。

  林 例年、福岡市内で商談会を年間3~4回、セミナーを年間2~3回開催し、日本企業に対して台湾企業とのビジネスマッチングの場や産業への理解を深めてもらう場を提供してきました。しかし、コロナ禍で日台間の往来が困難となり、2020年2月にセミナーを2件開催したのを最後に、管轄内での当センター主催によるオフラインのイベントはすべてキャンセルとなり、今後の開催予定も未定です。 

 また、従来は日本など海外のバイヤーを、当センターが台湾で主催する年間約40の国際専門見本市や各種商談会、セミナーなどに招致していましたが、これも同様に行えなくなっています。ただ、台湾貿易センター台湾本部は昨年から国際専門見本市のオンライン(バーチャル)での開催や、商談会とセミナーのオンライン化に取り組んでおり、現在ではあらゆるイベントをオンラインで開催しています。 

 ――コロナ以降に始めた取り組みと、企業からの反応や主な成果について紹介してもらえますか。 

 林 台湾貿易センターは以前から「個別オンライン商談マッチングサービス(日本企業の調達希望品目に合わせて台湾サプライヤーをマッチングし、オンライン商談の場をアレンジする無料のサービス)」を提供しています。当事務所の管轄地(九州7県、山口県、沖縄県)は台湾と地理的に近いことから、地場企業には直接台湾へ赴いて台湾企業と会って話すスタイルを好む傾向が強く、以前はオンライン商談のニーズは大きくありませんでした。 

 しかし、コロナ禍の長期化で台湾へ渡航できない状況が解消されないため、日本企業のマインドに変化が見られるようになり、オンライン商談やオンラインセミナーへの抵抗感が薄れてきたと感じています。当センターは商談会、セミナーをすべてオンライン形式に切り替えて開催しています。また、気軽に参加してもらえるように、可能な限り通訳サポートを行っていることもあり、利用企業は増加傾向にあります。 

 20年が25回目の開催となった「台湾生活用品及びパテント商品(オンライン)商談会」は、例年はホテルで行っていましたが、昨年は初のオンライン開催となりました。九州7県、山口県、沖縄県からは18社の日本企業が参加し、台湾企業と延べ81の商談を行いました(日本全体では117社、延べ449商談)。同商談会は今年もオンラインにより、9月29日に開催する予定です。 

台湾生活用品及びパテント商品(オンライン)商談会
台湾生活用品及びパテント商品(オンライン)商談会

 ――台湾の産業界ではDX(デジタルトランスフォーメーション)が進展しているのでしょうか。

 林 企業活動に関してではなく国全体に関するDXの調査ですが、スイスの国際経営開発研究所(IMD)の「世界デジタル競争ランキング2020」によれば、台湾は調査対象63カ国・地域のうち11位(19年13位、18年16位)であり、ちなみに日本は27位(19年23位、18年22位)でした。 
 台湾はICT産業が発達しているために、DXを展開しやすい環境であることがこの調査結果に表れていると思います。とはいえ、台湾の産業構造の特徴は、全企業数に占める中小企業の比率が97.65%(経済部『2020年中小企業白書』)と非常に高いことであり、DXを推進する体力がない企業も少なくはなく、すべての企業でDXが順調に進んでいるとはいえません。 

(つづく)

【茅野 雅弘】


<OFFICE INFORMATION>
代 表:林 志鴻(福岡事務所)
所在地:福岡市博多区博多駅前2-9-28(福岡事務所)
設 立:1980年(本部は1970年) 


<プロフィール>
林 志鴻
(りん・しこう)
1970年生まれ、台湾高雄市出身。国立交通大学(現・国立陽明交通大学)卒、国立中興大学でEMBA修士。エバー航空、彰化県職員などを経て、2004年に台湾貿易センターへ。17年1月に大阪事務所長、20年11月から福岡事務所長を兼務。

(後) 

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