2024年12月22日( 日 )

食品スーパー大手ライフコーポレーションの清水信次会長が現役引退~驚嘆!95歳まで現役の経営トップを貫いた超がつく「怪物経営者」(4)

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 大手スーパー「ライフ」を展開する(株)ライフコーポレーションの創業者、清水信次氏の現役引退が報じられた。(株)ダイエーの創業者の(故)中内功氏、(株)イトーヨーカ堂創業者で、(株)セブン&アイホールディングスの名誉会長・伊藤雅俊氏、ジャスコ創業者で、イオン(株)名誉会長・岡田卓也氏と同じ、日本に流通革命をもたらしたスーパーの第1世代だ。同世代の創業者が現役を退くなかで、清水氏は現役の経営者であり続けた。超がつく「怪物経営者」である。

後継者の実弟を解任

 どの会社でもそうであるが、後継者問題は経営の最大課題である。ライフも例外ではない。

 清水氏は1982年2月、ライフが大証2部に上場したのを機に、実弟で自分の右腕だった清水三夫氏に社長を譲り、自らは会長に就任して営業の第一線から退いた。その後、ライフは東証二部、東証一部に上場するなど順調に成長を続けた。しかし、バブル経済の終盤にさしかかったとき、三夫氏は株式運用にのめりこみ、肝心の本業が疎かになった。当時は、名立たる企業が財テクにのめり込んだ時代だ。

 これに危機感をもった清水氏は88年3月、電撃的に開いた役員会で三夫社長を解任し、自ら会長兼社長に就任した。

後継者を15年かけて育てる

後継者問題 イメージ 実弟を後継者にして失敗した清水氏は、会社は子どもや孫に継がせない、最も優秀な人に継がせるべきだと考えた。92年に三菱商事(株)と業務提携(現在・三菱商事は19.76%出資する筆頭株主)し、人材派遣を受ける関係となっていた。

 94年2月、清水氏は三菱商事本社を訪れ、相談役・三村庸平氏、諸橋晋六氏、会長・槙原稔氏、社長・佐々木幹夫氏に会った。清水氏はかねてから社長の人材派遣を要請していた。

 このとき、白羽の矢を立てていたのが、岩崎高治氏。彼はまだ30歳。三菱商事の若手社員の1人にすぎなかった。

 「岩崎君をこちらに派遣してもらえないだろうか」

 清水氏が岩崎氏と最初に出会ったのは、英国のロンドン。岩崎氏は慶応義塾大学経済学部を卒業、三菱商事に入社。英国の食品製造会社、プリンセスに出向していた。ヨーロッパの小売業を視察中の清水氏が、ロンドンを訪れた際、出迎えたのが岩崎氏。スーパーやデパートを視察した清水氏は、このときから「この人物と一緒に仕事をしたい」と思うようになったという。

 帰国後、三菱商事の重鎮らに直談判し、将来の幹部候補生だからと渋る同社を何とか説得。岩崎氏をライフに出向させた。99年には取締役に就任。

 2006年3月、岩崎氏は三菱商事在籍のまま、ライフコーポレーションの社長兼COOに就いた。岩崎氏40歳のときだ。

 商社マンは小売業に向かないと言われてきた。商社は企業相手の商売であるが、小売業は消費者に日々向き合う。フィールドがまるっきり違う。時間をかけて、小売業の経営者に育てていった。

 今回、清水信次氏は現役を引退する。岩崎氏を真の後継者に定めたということだ。創業者にとって、事業を承継する後継者選びは、最後の大仕事だった。

ライフコーポレーション業績

(了)

【森村 和男】

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