2024年11月22日( 金 )

NPB主力選手が戦線離脱、故障の原因を探る(後)

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野球 イメージ プロ野球選手のけがが多発している原因について、筆者独自の視点から述べてみたい。

 けがの大きな原因は、人工芝グラウンドでのプレイだと考えらえる。NPBの公式戦が開催されるメインスタジアムのうち、天然芝グラウンドは楽天・阪神・広島の3カ所のみ。人工芝の導入により、けがの数が減ったとするレポートがある一方で、けがが増加したとするレポートもある。

 「とくに肉離れやアキレス腱の痛み、膝や足首の靭帯損傷は人工芝が原因だと考えられます。近年けががどれくらい増え、1・2軍、キャンプ地を含め人工芝の球場がどれくらい増えたかを検証する必要があります。関連性は十分あると思います」(前編に登場のトレーナー)。

 NPBの試合時間の大半はナイトゲームである。スタジアムの全方向から、カクテル光線が照らされる。気温35℃の場合で人工芝60℃超、天然芝40℃超の体感温度が計測されたというレポートがある。

 不透明な点もあるが、カクテル光線によりグラウンド内の気温が上昇することは明らかだ。体感温度が40℃でも身体への負担増になる。50~60℃の体感温度ではどうなのかはいうまでもない。パフォーマンスと判断力が鈍り、集中力が低下する。これらの要因が重なると、けが発生の確率は高まる。

 また、人工芝グラウンドにおける走行時の加速度は、土や天然芝よりもアップ(体感値として)することは選手側から報告されている。とくに第五中足骨疲労骨折は足底外部への圧力増が大きな原因とする論文がある。下肢の靭帯損傷や捻挫などの発生事例も多数ある。野球だけでなく、サッカーやラグビーでも同様の症例が報告されている。

 40歳となる今シーズンも現役として活躍する鳥谷敬選手(千葉ロッテ)はプロ入団前、人工芝ではない球団を希望した。学生時代(早稲田大学)神宮球場で4年間遊撃手としてフル出場し、人工芝グラウンドでの身体への負担を痛感したという。

 彼と同期でプロ入りした青木宣親選手(東京ヤクルト)は6シーズンMLB(米国メジャーリーグ)に在籍し、大半のゲームを天然芝グラウンドでプレイできたことが選手寿命を延ばせている要因の1つともいわれている。「あるMLB球団は1人の日本人選手を調査した。獲得を前向きに検討したものの、調査2年目にパフォーマンスが急激に落ちたことが数値化され、獲得を断念したという。パフォーマンスが落ちた原因は、人工芝で行うプレイによる負担増と結論づけられた」(NPB関係者)という話もある。

 プロ野球選手のけがが多発している要因のすべてが、人工芝グラウンドとはいわない。人工芝にはメリットもあり、けがが減ったとするレポートや論文がある一方で、人工芝グラウンドでのプレイによって慢性的なけがに悩まされ、現役生活にピリオドを打った選手がいるのも事実である。

 近年、人工芝の品質と技術が向上し、身体への影響が改善されつつある。ハイブリッド芝も徐々に導入され始めている。けがを減らし、選手寿命を延ばすためには、相応の投資が必要であることは明白である。

(了)

【河原 清明】

(前)

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