「焼き肉」戦国時代の幕開けか ヌルボンをJR九州が買収
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JR九州は10月1日付で、(株)綱屋が展開する「焼肉ヌルボン」など飲食店15店を買収する。
綱屋は精肉店出身という目利き力に加え、九州産和牛の一頭買いという仕入スタイルにより、上質な肉をリーズナブルな価格で提供することで消費者の支持を獲得。1997年に1号店を福岡市南区に出店して以降、多店舗展開につなげてきた。コロナ下で営業時間の短縮やアルコール飲料の売上減などにより売上低下を余儀なくされたが、相応の集客を維持してきた。
今回のM&Aでは、JR九州が新会社を設立し、綱屋の飲食事業と関連会社の食材卸事業を譲受する。JR九州は、これまで不採算の鉄道事業を補うためにグループで多様な事業に進出。飲食事業ではFCを含めて居酒屋、うどん店、とんかつ店など多様な業態を手がけていたが、焼き肉業態はなかった。
注目されるのは、ヌルボンがロードサイドに店舗を配していることだ。主要駅を再開発し、商業施設「アミュプラザ」を設置して鉄道集客とのシナジーによる成長を目指してきたが、コロナ下で都心部や郊外への出店を本格化する準備が整った。
コロナ下でも好調とされる焼き肉店だが、JR九州の参入により、大手を含めた競争が激しさを増すのは必至だ。「焼肉きんぐ」を展開する(株)物語コーポレーションは、九州地区でのドミナント出店を強化し、人口10万人未満の商圏にも出店を進める計画。地方都市で数店舗を運営する中小チェーンでも、FCによる福岡進出が始まっている。居酒屋が主力の大手ワタミ(株)も「焼肉の和民」の多店舗展開へ向け、大量の中途採用に踏み切った。
参入障壁が低いだけに、今後さらなる新規参入も予想される。業界関係者は付加価値と差別化をいかに図っていくのかが問われる。消費者にとっては選択肢が増えるが、最終的には二極化と寡占化が進むとみられる。
【鹿島 譲二】
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