2050年代を見据えた福岡のグランドデザイン構想~連載を終えて
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C&C21研究会 理事 下川 弘 氏
3カ月弱、全61回にわたり連載した「2050年代を見据えた福岡のグランドデザイン構想」の著者の下川氏から、連載を振り返っての所感などについて寄稿していただいたので掲載する。
5月11日から8月5日まで全61回にわたって、「2050年代を見据えた福岡のグランドデザイン構想」と題して、新空港構想を中心に「現空港跡地活用構想案」「都市高速第2環状線構想」「地下鉄ネットワーク構想」などを提言させていただきました。いかがでしたでしょうか。
日々の内容によってアクセス数も異なりましたが、多い記事には約1万3,000アクセスがあり、平均して4,000~5,000、トータルでは約30万ものアクセスがあったとお聞きし、その反響の大きさに驚いています。併せて、直接的にも間接的にも、本構想に対して多くのご意見をいただきましたことに改めて感謝申し上げます。
ただ、増設滑走路も完成していないうちのフライング気味の構想の配信でしたので、国・県・市のご担当部署の方々、そして、とくに空港運営に携われていらっしゃる福岡国際空港(株)(FIAC)の皆さまにとっては、ひょっとしたら迷惑な話だったかもしれません。この場を借りてお詫び申し上げます。
さて、本構想のうち第1部にあたる「空港問題の振り返り」(連載2回~22回)と第2部にあたる「新空港構想」(連載23回~36回)については、福岡空港の総合的調査(PI)が行われていた2004~09年の間にC&C21研究会が独自に検討した配置案をベースに、「福岡空港問題の本質は何なのか」「増設滑走路ができたら福岡空港の問題は解決するのか」、そして「福岡に必要な空港規模とはどういったものなのか」を日々考えながら、東アジア各国の空港やヨーロッパ各国の空港を見学して、少しずつブラッシュアップしてまとめたものです。
また、第3部にあたる「福岡空港跡地活用構想」(連載37回~50回)は、前述の福岡空港の総合的調査(PI)では議論・検討されていなかった跡地活用について、まちづくりの観点から書かせていただきました。
というのも、国に土地を貸している地権者の方々にとってみれば、空港が移転した後の活用方法が示されなければ、ただ土地の権利収入がなくなるわけですから、諸手を挙げて空港移転に賛成するわけがありません。私も同じ立場であれば、同じ考えをするでしょう。
また当時、空港問題に無関心の人々(あるいは飛行機を定期的に利用しない人々まで)も、「移転すると利便性が失われる」という安易な意見が多かったように思います。
本構想のように、仮に空港が移転すれば跡地に「ディズニー・フォレスト」(本構想が最適かどうかはさておき)ができるというのであれば、市民・県民(とくに若い世代の人たち)の空港移転に対する賛否は大きく変わってくるかもしれません。このため、“今後「新空港建設計画」と「空港移転跡地計画」は並行して考える必要がある”ことをお伝えしたく、跡地構想案を提言させてもらいました。
第4部にあたる「交通インフラネットワークの整備拡大」(連載51回~60回)については、日常利用する都市高速環状線の渋滞状況や、最近非常に多くなってきた地震や豪雨による災害時の緊急避難移動や災害救助移動のことを考えると、都市高速の多重化環状線の重要性が求められてくることから、新空港島を経由した「都市高速第2環状線構想案」を提言させていただきました。
また、福岡市地下鉄についても、ようやく七隈線(3号線)が博多駅に乗り入れられるようになりますが、なぜ最初の計画時点で、薬院から住吉通りを通ってまっすぐ博多駅に乗り入れをしなかったのか。さらには、シーズン中は毎日のように何万人もの観戦客が訪れる大規模スポーツ施設(PayPayドームやベスト電器スタジアム)へ直結できる地下鉄路線を計画しなかったのか。不思議でなりませんし、当時の政治的・社会的思惑や力関係が透けて見える気がします。
そうした意味も含めて、地下鉄難民エリアの解消と南北・環状線を意識したネットワーク構想案を提言させていただきました。
今回の連載記事では、新福岡空港問題を中心に、主に交通インフラ系のグランドデザイン構想を提言させていただきましたが、まだまだ計画が不十分なところもありますので、今後、詳細部分についても内容を詰めていく予定としています。
ライト兄弟が世界初飛行に成功したのが1903年ですから、飛行機の歴史は実はたったの118年しか経っていないのです。本連載のテーマに掲げている「2050年代」という30年後の世界は、人によっては遠い先のように感じますが、あっという間の時間だと思います。いろいろな技術開発や環境問題の解決などによって、ますます豊かな世界が広がっていることでしょう。
福岡の都心部も天神ビッグバンや博多コネクティッドという国家戦略特区の活用によって、街並みが大きく変わってきています。時代の流れに沿って変化していくことはとても大事なことではありますが、その一方で、20世紀を代表する建造物が50年前後で取り壊されていくことに、昭和・平成という時代が消えていってしまうような寂しさも覚えます。
そうした足元の開発が、行きあたりばったりの都市づくりにならないように、今こそ私たちは、政界・行政・経済界・市民団体が一緒になって、30年後、50年後、さらには100年後、200年後の子孫のために「福岡のグランドデザイン構想」を描く必要があるのではないかと思っています。
最後に、本構想の内容が、今後の持続可能な社会を目指した福岡の将来像・都市構想計画の一助になれば幸いに思います。
<プロフィール>
下川 弘(しもかわ・ひろし)
1961年生まれ、福岡県出身。熊本大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程を修了後、87年4月に(株)間組(現・(株)安藤・間)に入社。建築設計第一部や技術本部、総合企画本部企画部などを経て、99年1月には九州支店営業部に配属。その後、建築営業本部やベトナム現地法人、本社土木事業本部営業部長などを経て、2020年9月から九州支店建築営業部営業部長を務める。社外では99年9月からC&C21研究会事務局長(21年8月から理事)を務めるほか、体験活動協会FEA理事、(一社)日本プロジェクト産業協議会の国土・未来プロジェクト研究会幹事、(一社)防災教育指導協会顧問など数々の要職に就いている。関連キーワード
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