【IR福岡誘致開発特別連載56】IR長崎、ハウステンボス倒産危機の失敗を繰り返すな
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長崎県は8月30日、RFP(事業者選定)に関わる入札時の問題(中国系カジノ企業2社から不正があったとして訴訟を起こされかねない状況)を抱えたまま、欧州のカジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン(以下、カジノ・オーストリア、オーストリア政府系)とのIR基本協定契約の締結を強行した。
しかし、本音は、表面上連携している米国モヒガン・ゲーミング&エンターテイメントと、隣国の賭博好きの金持ちをたくさん連れて来る中国系オシドリ・コンソーシアムとの間で実行したかったのだ。それが、米中覇権争いなか、日米経済安全保障問題などに気付くことができず、思惑通りに行かなかった。
さらに、本音を隠すためなのか、「オーストリア企業が日本で活躍することをうれしく思う」というオーストリアのセバスティアン・クルツ首相やマルガレーテ・シュラムベック経済立地相からの祝辞を掲載した企業ホームページを県が自ら披露している。
1992年3月のハウステンボス(HTB)開業時、当時のオランダ政府とオランダ王室のベアトリクス女王から「つくるのであれば限りなく本物に近いオランダ王宮を」と許可された話を披露し、創業者の神近義邦氏(故人)に大賛辞を贈った。開業時には日蘭の皇族が多数参加した。筆者には、今回の長崎県の姿勢が当時と重なって見える。
当時のHTBプロジェクト費用の総額は約2,200億円(実際は3,000億円超ともいわれる)、敷地面積は当時の東京ディズニーランドの2倍の154haで、アムステルダムやユトレヒトの街並み、王宮などを見事に再現し、パーク内には運河やオランダの高級住宅街ワッセナー(250戸)まで完成させた。バブル期の終わりに登場したすばらしいテーマパークであった。まさに、神近氏と当時の日本設計名誉会長・池田武邦氏(97歳)の情熱と行動力による賜物だ。
当時のHTBプロジェクトの事業開発運営母体(コンソーシアム)には、日本興業銀行(現・みずほ銀行)をメインバンクに、サントリー(現・サントリーHD)、キリンビール、松下電器産業(現・パナソニック)、雪印乳業( 現・雪印メグミルク )などの大手に加え、地元の長崎自動車や複数の地方銀行などが名を連ねた。これが本来のRFPであり、IR大阪でもIR横浜でも同様としている。
長崎県が発注し、行政御用達の民間アドバイザリー会社が作成した基本計画は、HTBプロジェクトの総額をはるかにしのぐ総事業費3,500億円、年間集客数を840万人とはじき出している。バブル期後期にあたるHTB開業時は、年間375万人の最高記録を残した。しかし、HIS運営継承後に300万人を超えたのは2018年の1度だけである。
HTBは過去に3度の閉鎖危機を経験している。すなわち、2000年の神近代表取締役辞任後の日本興業銀行の承継、03年の会社更生法提出後の野村ホールディングス、10年の九州財界(主に福岡財界7社会)への救済依頼である。これをカジノ・オーストリアがIRとして運営しても大同小異であり、世界的に著名なアドバイザリー会社の事前調査でも集客数は最大で年間300万人だと言い切っている(当時は、九州電力、西部ガスによる地元ハウステンボス町へのエネルギー供給施設がHTB園内にあるため、両者からのたっての依頼で金融機関を除く5社が現在の資本金15億円の33%を出資)。
本来ならば、すでに前述の国内大手企業や金融機関、九州地元財界の各社が名を連ねてIR事業のコンソーシアムを形成し、元JR九州相談役・石原進氏が自ら率先して、地元財界がまずは参加すべきである。
しかし、誰もが年間840万人を集客できるなどと信じていないのだ。HTB運営の中心人物であるエイチ・アイ・エスの澤田秀雄氏などは、参加するどころか、安く買った隣接地(本件候補地)を約200億円で事業母体に売却・譲渡するとしている。
長崎県知事と佐世保市長は政治ショーをやめて、これから出て来るであろうIR福岡に期待して、北海道と同様の結論を出すべき時期である。
【青木 義彦】
法人名
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