ストラテジーブレティン(288号)激変自民党総裁選、脱派閥力学、河野氏の公算
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NetIB‐Newsでは、(株)武者リサーチの「ストラテジーブレティン」を掲載している。
今回は2021年9月6日付の記事を紹介。派閥力学無効に
菅首相の自民総裁選不出馬により、政局は急速に流動化した。安倍前首相と麻生財務相は最大派閥(細田派97人)、第二派閥の麻生派(54人)と総議員数の4割を支配する圧倒的影響力をもち、事実上のキングメーカーであった。しかし安倍・麻生両氏が押していた菅氏不出馬により両氏の影響力は失われた。派閥が領袖の下で一本化し、領袖の采配で総裁を決める派閥力学は働かなくなった。早くもメディアなどで主要プレーヤーが明らかになり、総裁選の輪郭もみえてきた。岸田氏、河野氏、高市氏、石破氏が立候補の意向を示し、野田氏が考慮中と伝えられる。
安倍氏高市支持、菅氏河野支持
注目すべきは派閥の枠を超えて、政策による議員結集が起き始めそうなことである。安倍氏は国家観やアベノミクス継承など、政策が近い高市氏(無派閥) 支持を表明し、麻生氏は自派でありながらかつて女系天皇検討、脱原発などリベラル色の強い主張をしてきた河野氏支援を留保している。菅氏はいち早く河野氏支持の意向と伝えられている。行政改革、デジタル改革、脱カーボンなど、菅政権の看板政策を任せられる人物と考えているのであろう。
これに対して自派以外の支援が期待できそうもない岸田氏は、コロナ対策4本柱、健康危機管理庁創設を打ち出した。しかし財政再建路線の堅持姿勢に加えて、対中態度のあいまいさから米国サイドが懸念をもっているとの報道もある。
総選挙で勝てる候補者は河野氏
9月17日総裁選告示、9月29日投票開票と続く自民党総裁選の過程で立候補者の討論が展開される。日本をめぐる諸問題の検証と対策は、ポストオリンピック、コロナ報道の氾濫に食傷気味であったメディアと国民の注目の的になっていくだろう。総裁選において政策論争とともに、重要なのは国民人気である。次期衆院選で勝てる候補者の選出が総裁選においては重要な要素になる。議論沸騰の後に選出される新リーダーの下での衆院総選挙では、自民党の優勢が予想される。
9月6日の読売新聞は次期紙首相候補に誰がふさわしいかという緊急世論調査を実施し、河野氏の優勢を伝えた。全体では河野氏23%、石破氏21%、岸田氏12%、高市氏3%、野田氏2%、自民党支持者に限ると、河野氏30%、石破氏21%、岸田氏12%、高市氏5%となっている。
飛躍しすぎとのそしりを承知の上で予測すれば、今後河野氏優勢はますます強まっていくのではないか。(1)現首相でリアリスト、政策実行力の高い菅氏の支援を得ていること、(2)自分の言葉で話す発信力、(3)現実離れした理想主義、リベラルの傾向は、安倍内閣・菅内閣時代の閣僚の経験から封印する可能性が高い、(4)小泉進次郎氏も支持を表明しており、選挙の顔としてパワフル、などの条件はほかを圧倒している。
2001年の総裁選の際に、一匹オオカミと見られていた小泉純一郎氏が、党員予備選において圧倒的支持を獲得し、本命の橋本龍太郎氏を破った、前例がある。既存の派閥の枠を破った小泉劇場再現の可能性がある。
期待値大底の日本に訪れるポジティブサプライズ
欧米先進国はどの国も国論の分断が大きく、国民の糾合が困難である。そのなかで理性的政策論争による次期リーダーの選出が行われるとすれば、日本に対する評価、日本株人気は一気に高まるかもしれない。コロナ感染者率は先進国最低、ワクチン接種急進展(ワクチン接種回数世界第5位)にもかかわらず、コロナ対策の失敗が菅政権の命取りになったと喧伝されている。
「外国人は何でもある日本で唯一ないのは希望だけ、と見ている」(ある企業経営者のお話)。最低の株式バリュエーション、自虐的メディア・専門家の存在、など日本にはこれ以上のダウンサイドはないほど期待値が低い。そこで出てくるポジティブサプライズのインパクトは想像を超えるものかもしれない。
長谷川幸洋と高橋洋一NEWS チャンネル「長谷川幸洋と高橋洋一の緊急対談」(9月3日) における高橋洋一氏のコメントをぜひ参照されたい。
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