2024年12月26日( 木 )

ステーブルコインは金融市場を混乱させるトリガーになるか(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

ステーブルコインとは

仮想通貨 市場 イメージ 価値を安定させるため、米ドルやユーロなどの法定通貨と1対1での交換を可能とした仮想通貨のことをステーブルコインという。他の仮想通貨は価格変動が激しいため、決済手段として用いられるにはまだ課題があるが、ステーブルコインは価値の変動が少なく、仮想通貨同士の取引に利用されたり、分散型金融など仮想通貨をベースにした金融商品にもよく活用されている。ステーブルコインの裏付けとしては、米ドルなどの法定通貨だけでなく、幅広い種類の資産が使われているのが現状だ。

 代表的なステーブルコインであるテザー(USDT)は、2014年にローンチされた最古参のステーブルコインの1つであり、最も人気のあるステーブルコインだ。テザーの時価総額は618億ドルで、ビットコイン、イーサリアムに次いで、暗号資産のなかで3位にランクされている。22日のコインマーケットキャップ(CoinMarketCap)の発表によると、ステーブルコイン市場はテザー(USDT)、USDコイン(USDC)、バイナンス(Binance)USD(BUSD)が市場を牽引しているという。ステーブルコインの成長ぶりは目を見張るものがあり、ステーブルコイン市場全体の時価総額は、20年7月~21年6月までの1年間で10倍以上膨らんで、1,149億ドルに達している。

ステーブルコインはどのように活用されているか

 ステーブルコインは仮想通貨市場が爆発的に成長したことにより、その需要が伸びて、仮想通貨市場のなかでますます存在感が高まっている。たとえば、韓国の仮想通貨交換所で仮想通貨を売買する場合、韓国では基本的にウォンで仮想通貨を購入できるため、ステーブルコインの出番はあまりない。しかし、海外取引所の場合、ステーブルコインを媒介にして、ビットコインなどを売買することが多い。ステーブルコインはビットコインとイーサリアム、ドージコインなど価格変動の激しい既存の仮想通貨と法定通貨の橋渡しをする場合が多く、仮想通貨を活用した金融サービスの拡大にも大きく寄与した。加えて、ステーブルコインは市場が急激に拡大している分散型金融(DeFi)においても、金融商品として広く活用されている。

 一方、ステーブルコインは他の仮想通貨の変動性を補完する仮想通貨として活用されているが、今後各国の中央銀行が発行を計画しているデジタル通貨(CBDC)と違いがないため、デジタル通貨の発行を推進している米国当局などは、ステーブルコインへの強力な規制の導入を主張している。デジタルドルを発行するうえで、ビットコインなどよりステーブルコインが強力なライバルになり得ると考えているためだ。ステーブルコインを活用すると銀行を経由せずに、迅速かつ安価な手数料で海外送金もできるため、中国政府などは資産の海外フライト(資産の海外への逃避)にステーブルコインが使われるのではないかと神経を尖らせている。

 さらに、2つの取引所での暗号資産価格が異なる場合に、裁定取引のチャンスが発生するため、取引所間で素早く資金を移動させるときにもステーブルコインが利用されることがある。

(つづく)

(後)

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