2024年11月22日( 金 )

【IR福岡誘致開発特別連載57】IR長崎、落札企業のオーストリア本国でのカジノ疑獄

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長崎県庁 イメージ IR長崎のRFP(事業者選定)の落札者カジノ・オーストリア・インターナショナル・ジャパン(林明男代表、林氏の妻は演歌歌手の小林幸子、以下、カジノ・オーストリア)に関して新たな問題を提起する報道が6日になされた。それは親会社であるカジノ・オーストリア・インターナショナル(オーストリア)のカジノ疑獄事件をめぐる問題であり、今回落選した中華系カジノ企業2社が訴えた審査過程での公正性への疑義とは別の問題が新たに加わったことになる。

 カジノ・オーストリア・インターナショナルは、オーストリア政府が一部の資本を所有している。同社はグローバルな企業であるものの、小規模のカジノ施設を展開しているのみで、IR開発という巨大なプロジェクトの経験はない。IR長崎の事業規模、投資総額3,500億円、年間集客予測840万人などと想定されるIRの中心事業者として疑問視する声は大きい。それゆえ、筆者は、この企業規模では、本件事業母体(コンソーシアム)の組織組成は難しいことを重ねて説明してきた。本来ならば、入札参加者が各自この組織を編成した後に、長崎県行政はRFP公開入札を実行すべきだった。今回のRFPは、カジノ企業のみを単に選抜したに等しい。

 しかし、長崎県行政は日米経済安全保障問題などの世界政治情勢には疎く、鈍感であった。遅ればせながら、いずれかの専門家のアドバイスからRFP公開入札時にそのことに気付き、中国系カジノ企業を「禁じ手」によりやむを得ず外したのである。

 この行政による“出来レース”が中華系カジノ企業の怒りを買い、訴訟問題に発展しかねない状況を引き起こしてしまったのだ。

 その後、長崎県行政は各入札参加者に対する“廉潔性”の調査結果を慌てて公表した。調査結果に基づき、中華系の2社には問題があったが、今回の落札者であるカジノ・オーストリアはオーストリア政府系で、営業面はクリーンであり、一切の問題がなかったとしたのだ。

 カジノ・オーストリア・インターナショナルは、オーストリアの財務大臣の汚職関与疑惑などで政界スキャンダルの真っ只中にあり、同国内の報道は加熱している。長崎県行政に対して、どのように“廉潔性”を証明するのか、誰が何を調査したのかなどが不明という問題が提起されたが、長崎県行政は調査会社との守秘義務契約を盾にして、一切の説明責任をはたしていない。

 中華系カジノ企業も、日米経済安全保障問題が理由であるならば、最初からそう説明してくれれば、巨額な経費を無駄に使う必要がなかったと、回答を厳しく県に求めている。

 しかし、長崎県行政は、あくまで“公明正大”な公開入札であり、廉潔性にも問題なく、RFPを実行した結果としてのカジノ・オーストリアとの基本協定締結だったとして、これらすべてのことを認めていない。こ今後も、これを認めることは頑なにしないだろう。

 長崎県行政は自ら墓穴を掘っている。これらの問題を引きずったままで国内の大手企業や地元財界が参加するはずはなく、政府が指導する本件事業母体(コンソーシアム)の組織組成ができるはずはない。国への申請も不可能となり、申請しても認可されることはない。今回の秋元司被告の贈収賄問題(一審で有罪判決)と同様の問題であり、国外のカジノ企業事件であることは問題から逃れる理由にはならない。

 衆議院議員総選挙後、間違いなくIR東京が表に出てくるうえに、IR福岡も米国IR企業との連携で表に出てくるだろう。北海道、和歌山、長崎いずれにもIR実現の可能性は最初からない。繰り返しになるが、後背地人口が少ない地方の中堅都市では、採算は間違いなく合わないためだ。

【青木 義彦】

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