2024年11月22日( 金 )

中国電池メーカーCATLの独走と競合他社の対応(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 ドイツ、英国による2030年を期限としたガソリン・ディーゼル車の新規販売禁止や、多くの国の政府が競うように高い脱炭素目標を表明したことにより、 国内外でEV(電気自動車)へのシフトが一段と加速しはじめた。次世代電池である「全固体電池」に対する期待はますます高まっているが、「全固体電池」の商用化には課題もある。今回は「全固体電池」の商用化の動きと、商業化の実現に向けた各国の対応戦略について取り上げる。

世界電池市場ランキング1~10位は日中韓の企業

電気自動車 イメージ ブルームバーグによると、現在電池の主流であるリチウムイオン電池(LIB)の需要は、今年の269GWhから2030年には2.6TWhに10倍近く急増すると見込まれている。半導体に次ぐ未来の成長産業として注目されている電池産業であるが、世界電池市場ランキングは日中韓の企業で10位までを占め、中国が6社、韓国が3社、日本が1社、名を連ねている。

 SNEリサーチの27日の発表によると、電気自動車用バッテリー市場1位は、中国CATL(使用量は33.8GWh)である。CATLの電気自動車用バッテリー使用量は前年比231.7%増、上半期の売上高は440億7,500人民元(約7,506億円)と前年比134.1%も伸びている。

 CATLが世界電池市場でこのように独走を続けている要因としては、中国の大きな内需市場と、コバルトを使わないためバッテリーの価格が安く、発火などが起こりにくく安全なリチウムリン酸鉄(LFP)バッテリーに注力した結果だ。リチウムリン酸鉄バッテリーは価格が安く、より安全であり、需要が一定して伸びている。中国の電気自動車へのリチウムリン酸鉄バッテリーの昨年の搭載率は33%であったが、今年は38%に増加している。リチウムリン酸鉄バッテリーの価格メリットが奏功して、現在、中国でリチウムリン酸鉄バッテリーがシェアを伸ばしている。

リチウムイオン電池の限界

 現在主流であるリチウムイオン電池は、発熱の問題や大容量化、加えて原料の価格上昇など、さまざまな限界を抱えており、性能の技術革新も限界に近づきつつある。まず、安全性を脅かす発火事故は、リチウムイオン電池は、電解液に有機化合物の液体が使われていることが要因となっている。有機化合物の電解液は可燃性のため、外部から力が加わったり、過重な負荷がかかったりして、電池の温度が上昇すると、最悪の場合には爆発、発火する可能性がある。そのような発火事故は残念ながら、いまだに頻繁に報告されている。

 加えて、エネルギー密度を高めて、電池を高容量化する必要にも迫られている。さらに、リチウムイオン電池の需要が伸びていくと、原料の価格上昇により、リチウムイオン電池コストが上昇し、電気自動車に導入する際のネックになる可能性を秘めている。たとえば、リチウムイオン電池の正極の材料であるコバルトの価格は、今年の第1四半期の間に約57%も急騰した。電池は電気自動車のコストの約4割を占めているため、コバルトの使用量を減らす必要に迫られている。リチウムイオン電池には、充電時間の短縮、電池の寿命などの課題もある。

(つづく)

(後)

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