日本初、全ゲノム解析でがん・心臓病リスク検査~遺伝子検査で病気がわかる日は近い?(前)
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がんや心臓疾患のリスクを調べるため、健常者を対象とした人の全ゲノム(遺伝情報)解析による遺伝子検査が今年7月にスタートした。国内初の取り組みという。筑波大学附属病院つくば予防医学研究センターが、個々人への最適な医療提供を行う「プレシジョン・メディスン(個別化精密医療)」の実現を目指すベンチャー企業(株)iLAC、同大学プレシジョン・メディスン開発研究センターと共同で実施している。遺伝子の影響が大きい病気にかかるリスクは人の遺伝子からわかるため、今回の取り組みは遺伝子検査や遺伝子医療にとって大きな一歩となる。
がんや心臓病に関わる195遺伝子を検査
遺伝子は人の体をつくる設計図。ゲノムは人のすべての遺伝情報のことで、DNA(デオキシリボ核酸)でできており、遺伝情報を伝えるA、T、G、Cで表したゲノムの文字列(塩基配列)はおよそ30億にも上る。A、T、G、Cの文字列の並び順に変化(変異)が起こると、病気の原因になる可能性があるとされる。
今回の検査では、健康な人の血液からDNAを抽出して遺伝子を調べる。現在は、心筋症や不整脈、遺伝性腫瘍(遺伝性のがん)などのがんや心臓病に関わる195の遺伝子を対象に、約100人の解析を予定している。検査結果は、筑波大学附属病院の遺伝や各疾患の専門医で組織する「ゲノミックボード」で審査した後に、参加者に報告する。
たとえば、乳がん患者の4%を占めるとされる「遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)」は、遺伝性のがんでは「BRCA1」または「BRCA2」という遺伝子に病的な変化が見られる。これらの遺伝子に病的な変化がある場合には、乳がんや卵巣がんにかかるリスクが一般人よりも高まるという。
遺伝性のがんのリスクがあると判定された場合は、参加者への報告時に定期的な検査(サーベイランス)を勧め、健康管理に役立てる。つくば予防医学研究センター部長・鈴木英雄病院教授は、「リスクがある場合は検診間隔を短くすることで早期に対応できるため、がんの予防につながる可能性があります」と話す。
あるいは、難聴に関わる遺伝子をもっていると判定された場合は、精密な聴覚検査を行うように勧めたり、薬剤治療が役立つ疾患には早期発見と適切な治療の提供へ向けて専門医に紹介したりする。一方、難病に関わる遺伝子をもっている場合でも、多くの人が軽症やほぼ無症状で済むと報告されている遺伝子の変化の場合は、過剰に懸念する必要はないことを検査結果報告時に伝えているという。
つくば予防医学研究センター副部長・右田王介准教授は、「ゲノム解析では、遺伝子の病的な変化から病名を推定できますが、ある遺伝子の変化をもっていても必ず病気になるとは限りません。実際には、遺伝子のみではなく生活習慣や暮らしている環境も病気を引き起こす大きな要因となります」と説明している。
(つづく)
【石井 ゆかり】
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