2024年11月22日( 金 )

縄文社会に戻れば人類は救われる(前)

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(一社)縄文道研究所 代表理事 加藤 春一 氏

縄文遺跡が世界遺産に登録

(一社)縄文道研究所 代表理事 加藤 春一 氏
(一社)縄文道研究所 代表理事
加藤 春一 氏

 5月27日の主要新聞の朝刊に、北海道と東北3県の17カ所の縄文遺跡が世界遺産に正式に登録される方向でユネスコが勧告を出したという記事が掲載されていた。筆者にとっては30年来の縄文文化への取り組みがようやく具体化されたとの思いだ。ただし縄文文化は北海道、東北3県だけでなく、日本全国が対象とされるべきとの思いだ。尊敬する日本の代表的考古学者の小林達雄先生も、全日本の縄文遺跡を対象とすべきとのスタンスであり、今後の課題だ。ちなみに日本全国で約9万カ所の縄文遺跡があり、現在も毎年千カ所以上の発掘がある。日本は縄文遺跡の宝庫なのだ。

 現在、世界は新型コロナウイルスの蔓延により人類の根源的な生き方が問われている。世界の人間の動きを止め、接触の機会を減らして、ウイルスの動きを抑え込むべく世界中の政府が必死に取り組んでいる。感染を防止する手段はワクチンの接種で、先進国を中心にワクチン接種による防衛策が実施されつつある。

 現代社会は科学技術の発展により産業革命以降急激に人口が増加し、航空機の発達などで世界はまさに1つに結ばれた。21世紀に入ると情報通信革命によって世界は瞬時に人と人が結ばれる時代に突入した。このような時代のなかでの新型コロナの蔓延は、まさに人類全体の根源的な生き方を問うていると思う。世界的な哲学者で文明論者のイスラエル人、ユバール・ノア・ハラリ博士はこのように高度に発達した文明のなかで人類は「本来、狩猟や漁労時代にもっていた五感や六感を失った。人間がこれらの本能的な能力や感性を取り戻す必要がある」と論じている。

 「故きを温ねて新しきを知る」という言葉がある。人類の歴史を振り返る視点として、人の動きを知ることは今後の世界を予見するうえで重要だ。世界の人口動態と、狩猟漁労採集生活時代の縄文時代の人口を考え、改めて人間の根源的な生き方を考えたい。

 この人口比較表からいえることは、世界は産業革命以降、また日本は明治維新以降に急速に人口が増えたということである。産業革命以前、世界の人口は約200年で、7.7倍強の77億人になり、日本は明治時代3,481万人が約3.6倍の1億2,800万人に急激に増加した。

人口比較表

 ホモサピエンス(現生人類)がアフリカで誕生し、約20万年前にアフリカを出てヨーロッパ大陸に渡り、ユーラシア大陸を東方めがけて移動し、最後に東端の日本列島に到達したのは約3万8,000年前であることが考古学の旧石器遺跡の発掘で判明している。発掘されたのは九州の熊本であるが、旧石器時代も北海道から沖縄まで広く遺跡が発掘されている。ホモサピエンスはユーラシア大陸を大自然や野生動物からのさまざまな生命の危険に晒されながら、約16万年かけて日本列島に辿り着いたのだ。海沿いにカヌーを使いながら辿り着いた海洋民族集団が存在していたという説もある。(沖縄・港川遺跡)。

 日本列島に到着した旧石器人は、その後約1万年も続く氷河期を生き抜いてきた。旧石器人は打製石器を使用した狩猟漁労民族で、彼らはすでに厳しい自然のなかで生き抜く知恵を身に付けていたと推察できる。この旧石器時代人が約1万6,500年前に火と土と水を使用して縄文土器を作成したのだ。人類の最古の土器群としては青森県大平山元遺跡がある。草創期の土器からは炭素分析で魚介類の焦げが検出されているので、海水、淡水の魚を土器で煮炊きしていたといわれる。

 縄文時代は土器の分類から、草創期、早期、前期、中期、後期、晩期の6つの期間で約1万4,000年間続いた、世界のなかでも稀有なる長期、連続性をもった文化といえる。日本列島で旧石器時代のナウマン象、マンモス等の巨大動物を狩っていた狩猟民族のDNAを持つ人々が土器を発明し、狩猟を中心とした移動型から、竪穴式の定住型に進化したのが縄文人である。

(つづく)


<プロフィール>
加藤 春一
(かとう・はるいち)
(一社) 縄文道研究所 代表理事・(株)APIコンサルタンツマネージングパートナー。1944年満州大連にて日本の陶祖 加藤藤四郎景正の末裔(23代)として生まれる。1968年上智大学経済学部卒業後 大手商社・日商岩井にて資源ビジネスに30年間従事。西豪州代表、ベルギー・ブリュッセル製鉄原料部門欧州代表、この間5大陸56カ国訪問。1998~2016年、東京エグゼクティブ・サーチ勤務(2000年から2008年まで社長)、世界のサーチファームITPグループ日本代表。2016年(一社)縄文道研究所創設 代表理事に就任。著書として、『能力Q セルフプロデュース』(ビジネス社)、『グローバル人財養成塾』(生産性出版)、『世界一美しいまち―オーストラリア‐パースへのいざない』(「国会図書館永久保存版」。

(後)

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