2024年09月29日( 日 )

特金法改正で、韓国の仮想通貨取引所は上位4社以外の40数社が営業停止に追い込まれる(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 仮想通貨に対する関心が、世界的に高まっている。IT強国の韓国でも例外ではない。ある国会議員の発表によると、仮想通貨取引所に登録している会員数は1,000万人以上で、取引のために預けた金額は62兆ウォン(約5兆8,186億円)に上るという。一方、韓国政府は投資家の保護を旗印に「特別金融取引情報法(以下、特金法)」を改正したため、仮想通貨取引所業界だけでなく、コイン発行会社、投資家に一大波乱が起こることが予想されている。

特別金融情報法改正の施行で、どうなるのか

仮想通貨 イメージ 「特別金融取引情報法(以下、特金法)」の改正案は、今年3月25日から施行された。健全な市場を助成し、マネーロンダリング防止、テロ資金の調達防止などを実現し、透明な取引秩序を確立し、仮想通貨取引所を証券取引所のように大きく進歩させるという狙いがある。

 同法によると、既存の仮想通貨取引所が取引業務を継続するためには、9月24日までISMS認証(ISO27001)取得と、銀行と提携した実名の口座開設を行わなければならない。金融情報分析院に書類を提出し、審査にパスして正式に政府に登録されないと、取引所の営業は継続できない。

 仮想通貨取引所は3つに分類される。1つ目は、アップビット、ビットサム、コインワン、コルビットの4社で、上記の要件を満たしている取引所である。2つ目は、ISMS認証を取得できたが、実名口座開設の銀行との提携ができていない取引所で、17社ある。このような取引所は、9月24日以降にはウォンでの入出金はできなくなる代わりに、コイン取引(コイン同士を交換すること)は可能だ。

 3つ目は残りの42社で、ISMS認証取得も実名の銀行口座も確保できていない取引所である。このような取引所は9月25日以降には営業ができなくなるが、韓国政府は混乱を避けるため、投資家に24日の1週間前である17日までに取引所の営業が終了することを、インタネットやモバイルを使って事前に告示するよう仮想通貨取引所に指示を出した。加えて、投資家の被害を少しでも減らすため、2つ目と3つ目の取引所のウォンの出金を営業停止から30日間延長することも許可した。そのような配慮にも関わらず、投資家への被害は避けられないと懸念する声が多い。

 まず、小規模の取引所が営業停止となると、そこに投資をした投資家の被害は少なく見積もっても数千億ウォンに上るとされる。コインの世界では取引所の営業停止が噂されただけでも、コインは暴落し、営業停止が決まるとコインの価値はほぼゼロとなることが間違いないからだ。とくにこのような取引所に上場されているコインは海外取引所には上場されておらず、ほとんどが韓国の取引所1カ所のみに上場されているコインだ。取引所の関係者は、別の取引所に今後、上場を検討しているコインでも、投資家がその間に大きな被害を受けることを懸念している。

 金融庁の統計によると、3つ目の取引所を利用している利用者数は約50万名に上り、韓国の仮想通貨取引所に上場されているコインのうち約60%を占める、800以上のコインは1カ所のみの取引所に上場されている仮想通貨であることが明らかとなった。

 韓国の金融当局も特金法の施行の「後遺症」を少しでも緩和するため、市場の動向に神経を尖らせている。また、野党代議士を中心に、9月24日までの期限を6カ月延長するという法案の発議も行われているが、仮想通貨の健全な成長のためには乗り越えないといけないハードルだと前向きに評価する声もある。今後はどのような展開となるのか。投資家を始め、金融当局もその動向に注目している。

(了)

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