家計負債の急増で韓国経済に黄信号が灯る(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
世界はインフレ圧力に見舞われている
中国の電力不足により、全世界のサプライチェーンの崩壊と、インフレ圧力の上昇がもたらされる可能性が高い。
中国では石炭の供給が円滑に行われておらず、コロナ禍終息への期待感で工場稼働率が上がるにつれて電力不足が発生している。中国は全世界の「工場」であるだけに、中国の電力不足は中国経済だけでなく、全世界の経済に影響を与えている。
電力不足は供給不足を引き起こし、その結果、市場では物価の上昇、すなわちインフレ懸念が高まっている。とくに、中国の製造業の中心地である広東省では、電力消費のピーク時間帯の電気料金が25%も引き上げられ、今後、製造コストアップへとつながることになるだろう。
石炭不足は電気料金の値上げを引き起こしただけではない。中国政府では電力不足に備え、電力の使用制限を設けたので、工場の稼働率が従来の3分の1にまで低下すると予想されている。ただでさえ半導体不足によって操業停止などに追い込まれている状況下、中国の電力不足は、さらなる半導体不足を招くことになりかねず、事態は長引きそうだ。
このような中国の電力不足は結果的に物の供給を制限し、その結果、全世界にインフレ到来をもたらしそうだ。すでに、そうした兆しはみられており、米国でも今年5月~8月の物価が4か月連続で上昇、上昇率は5%を上回った。ドイツも9月の物価上昇率が4.1%を記録し、29年ぶりの高い水準となった。このようなインフレ上昇圧力を解決するため、米国のFRBは資産買い入れの段階的縮小(テーパリング)や利上げに踏み込もうとしている。テーパリングは早ければ11月からスタートすることが予想されている。
家計負債の急増
米国の利上げやインフレ圧力が高まっているなか、韓国の家計負債は増加を続け、初めて1,800兆ウォンを上回ったことが明らかとなった。韓国銀行の発表によると、韓国の家計負債は今年6月末を基準に1,805兆9,000億ウォンとなり、1,800兆ウォンを初めて上回った。1年間に168兆ウォンも急増したことが明らかになり、韓国政府は警戒を強めている。
家計負債とは、家計が抱える債務を指す言葉で、銀行などからの借り入れとクレジットカード使用額などの販売信用を合わせたものだ。家計負債の危険度を測る基準として、家計負債の対GDP比率を引き合いに出す場合が多いが、韓国の家計負債は韓国の昨年のGDPである1,836兆8,811ウォンと比較すると、対GDP比率が98.3%に上ることがわかる。国際決済銀行(BIS)は家計負債がGDP対比で80%を超えると、負債が経済に悪い影響をもたらす可能性があるとしている。
韓国の家計負債のもう1つの特徴は、家計債務の増加スピードが速い点だ。韓国の最近の家計債務の割合の増加スピードは、主要43カ国のなかで3番目に速いことがわかった。韓国の家計債務がこのように急増した結果、家計が負担しないといけない利子の金額が大きく膨らんでいる。韓国銀行の推計によると、来年家計債務の利子だけで66兆ウォンに上ると推計されている。この金額は史上最高で、家計にとって大きな負担となりそうだ。ちなみにこれまでの利子の最高額は、2018年の60兆4,000億ウォンだった。
(つづく)
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