2024年11月20日( 水 )

企業法務で起業をバックアップ 独自のネットワークで世界をつかむ

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明倫国際法律事務所

 スタートアップ企業支援を主要事業として手がける法律事務所は少ない。そうしたなか、「スタートアップチーム」を組織して、数々のスタートアップ企業に関わってきた明倫国際法律事務所は、福岡市内だけでなく全国的にサービス展開を行っている。インセンティブが少なく複雑な同事業を推進していくために同事務所が大切にしているマインドについて、田中雅敏代表弁護士とスタートアップチーム・リーダーの松浦駿弁護士に話を聞いた。

明倫国際法律事務所 スタートアップチーム
スタートアップチーム 

海外も視野に起業を支援する国内有数の法律事務所

 明倫国際法律事務所は福岡市天神に拠点を置き、東京、上海、ベトナム(ハノイ、ホーチミン)、香港、シンガポールにもオフィスを構える。これに加えて、提携現地法律事務所は全世界に約50カ所あり、海外ビジネスを含む広い分野で、専門的な相談をワンストップで行える仕組みとなっている。

 最終的にIPO(新規公開株)、M&A(合併・買収)達成をゴールとするスタートアップ企業を対象としたサービス展開は、対象業務が多岐にわたるうえ、リスクコントロールにおける線引きが難しいこと、また、規模が小さくサービスの対価が十分でないこともあり、進んで取り組む法律事務所はそれほど多くない。

 しかし、明倫国際法律事務所は2017年、本格的に「スタートアップチーム」を発足させた。「“スタートアップ”という概念が存在していなかった20年ほど前から、このような企業を支援していました。社会に変革を起こせるような尖った考えを生み出せる人が好きで、そのお手伝いをできるということは、私たちにとって金銭的な対価に代えがたいやりがいとなっています」と代表弁護士の田中雅敏氏は話す。

 さらに同事務所では、完全無償で顧問契約を結ぶことができる「エンジェルプラン」を19年から開始した。シードステージでは、事業主は起業前の資金を自己資金で賄う場合も多く、法律事務所への費用を払える段階にないことが多い。そこで、「やる気・ビジネスプラン・明確なゴール」を兼ね備え、社会的意義を有すると思われる事業主をスタートアップチームで選定し、半年間無償で顧問のフルサービスを提供している。対象企業の枠は2社までだが、当プランに関する問い合わせは絶えない。

日本から世界へ

 「創業の点ではやはり東京、大阪に劣ってしまう部分もあるにせよ、福岡のどこにも負けないメリットとして感じているのは、“都市全体でスタートアップ企業を応援して行こう”という熱意と、それによって形成される人のコミュニティです」(田中氏)。

 14年に国家戦略特区として「グローバル創業・雇用創出特区」に指定された福岡市は、自治体、経営者とつながりやすく、起業するための情報交換も手軽に行える利点をもっている。韓国、中国に近く、九州の玄関口としての役割を持つ福岡市には、創業を目的とした外国人の流入も多い。福岡市での創業をスタート地点として基盤を固め、日本から世界を見据えた新たなマーケットを開拓できれば、福岡市とバックアップを受けた創業者の双方にとってメリットがあるのではないだろうか。

 資金調達については、日本の投資家は決して多くないが、日本で資金調達することに固執する必要もないと田中氏は話す。

 「日本で資金調達が難しいなら、海外に目を向けてみるとよいでしょう。シリコンバレーや深圳に会社がなくても、こうした場所でピッチを行い、資金調達することも可能です。現在は新型コロナウイルス感染症の影響で実際に現地に行くのは難しいかもしれませんが、それは各国も同じです。逆に、ウェブをうまく活用すれば、コロナ前よりも効率的に自身の構想を世界の投資家に向けてアピールできるのではないでしょうか」。

 一例として、今まで東京や海外に赴かなければ参加できなかったピッチイベントが、リモートで参加できるようになったことがある。国内外に広くネットワークを持つ同事務所は、顧問先に海外進出を見据えた支援サービスを展開していくことにより、広範囲からの資金調達を可能にしている。

当初からリスクへの対策を

 スタートアップには、技術革新を起こせるような視点が必要不可欠である。新しい事業を推し進めていくと、法的に問題となり得る事項も多く出てくる。その1つに「法整備が追いついていない」ことが挙げられる。

 法的にグレーゾーンであることをないがしろにして事業を進めてしまい、いざ最終段階のIPO、M&Aでイグジット(Exit)しようとした際に、上場できなかったり、合併先に買いたたかれたりするリスクがある。また、会社を長く持続させることが目的のゼブラ企業などでは、法令違反の項目が出てくると、それだけで社会的信用を失ってしまうようなケースもある。起業し、事業を推進するにあたって、目先の損益にとらわれてしまうこともあるかもしれないが、長い目で見るならば早期のリスク回避は必須である。

 一方、グレーゾーンに対し、「この法律に引っかかってしまいそうだから止めましょう」とアドバイスするだけなら簡単である。それはネットで調べればできることだ。「確実な正解がない法の世界で、ビジネスの状況に即した“事業を前に進める方策“を提案し、一緒に壁を乗り越えることが難しさであり、楽しさでもあります」(松浦駿氏)。

 起業当初から、法的なリスクコントロールの観点から成功しやすい、持続しやすいビジネスモデルを模索し、検討する。そのために専門家に相談することは、チャンスをより確実にものにするための第一歩といえるだろう。

【立野 夏海】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:田中 雅敏
所在地:福岡市中央区天神1-6-8
開 業:2010年1月
URL:https://www.meilin-law.jp

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