確かな技術に大手ゼネコンも一目置く 専門建設業のプロ集団としての実績と誇り(前)
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中村工業(株) 代表取締役 中村 隆元 氏
1906年の創業から100年以上にわたり、福岡の成長をたしかな技術で支え続けてきた中村工業(株)。とび職人たちが集まってスタートした同社は、今や建設業全般を幅広くカバーする一流の専門建設企業として存在感を示している。九州大学伊都キャンパスや福岡高裁庁舎などの公共施設、MARK IS(マークイズ)福岡ももちなど、幅広く手がける実績はほかの追随を許さない。また、近年頻発する自然災害の復旧工事でも、同社土木部門のたしかな手腕が高く評価されている。2015年、この名門企業の5代目トップに就いた中村隆元氏に、同社の強みとこだわりについて聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)
九州トップの専門建設企業
――年商80億円といえば、元請のゼネコンに換算すれば約800億円になります。
中村隆元氏(以下、中村) 単純に置き換えることはできませんが、感覚的にはそれに近いでしょう。今期はありがたいことに、売上高100億円が見えてきました。現在の売上高の内訳はとび・土工が約40%、PC(プレキャスト)の納品が約25%、土木部門が約25%。残りがリニューアル工事などになります。
――貴社は職人を社員として雇用するスタイルを取っています。他社では職人を抱えずにアウトソーシングする手法が主流ですが、雇用を維持していくのは大変なのではないでしょうか。
中村 働き方改革や社会保障制度の厳格な適用など、企業に求められることが増えているのは事実なので、社内に人を抱えないという考え方があるのはわかります。しかし、私たちはこれまで当社で培ってきた技術・技能を未来に向けて伝承していくという覚悟の下で、職人さんたちを雇用するという選択肢を取っています。これからも職人・技術者については“雇用第一”です。
――今は福岡都市圏もそうですが、九州全体で仕事がたくさんある時期です。「九州の仕事は中村工業さんに」という声も多いのでは?
中村 ありがたいことに、そういった声をたくさんいただいています。福岡都市圏の再開発や半導体工場など、とび・土工、PC、土木のすべての部門で、「中村工業でどれだけ施工可能か?やってもらわなければ困る」とお声がけいただいている状況です。
――ゼネコン各社は貴社がどのくらいリソースを割けるのかを見てから、他社での手配を考えるわけですね。「九州はまず中村工業さんに」と頼られています。天神再開発の華々しい現場ばかりでなく、本当にいろいろなところで動いています。
中村 九州各地、沖縄本島や宮古島、石垣島などでも仕事をいただいています。しかし、基本的に福岡を拠点にして動いていくことは変わりません。福岡での仕事量があることで、九州各地に飛ぶ機動力も生まれます。福岡で雇用を生むことも大事だと考えています。
時間的な余裕が少ない都市再開発
――近年、スーパーゼネコンとの仕事で変化してきたことはありますか。
中村 リーマン・ショック以降、スーパーゼネコンと地場ゼネコンとのJV(ジョイント・ベンチャー)が少なくなっていました。これは、スーパーゼネコン側が首都圏での売上が足りないときに地方に進出してくるという傾向が出てきたためで、結果的に施工準備のための時間が短くなっています。地場ゼネコンとしっかり話し合ってJVを組む時間も少ないわけですね。当社としても、仕事量がどれくらい発生するのかがギリギリまでわからないケースもあります。
――スーパーゼネコンの社員もいわゆるサラリーマン化して、地元との関係性が希薄になっていますね。コンプライアンスも大切ですが、地元とのギャップが生まれてしまうのでは?
中村 もちろんすべてのスーパーゼネコンがそうではありませんが、意識のズレが出る場合もあるようですね。
――その一方で、スーパーゼネコンの九州支店は過去最高益を毎月のように更新しています。東京オリンピックが1年延期になった影響もありますか。
中村 そうですね、大きいと思います。再開発はまず解体工事があって、それから新築工事ですから、その工程のギャップを埋めるために、スーパーゼネコンは九州など地方の案件に進出してきています。もともと、オリンピック前の2019年には一度冷え込んで、オリンピック後の21年から爆発的に需要が高まると言われていましたが、これが丸1年ずれたわけです。東京の案件は、1,500億円や2,000億円規模のプロジェクトがこれからいくつも控えていますから。
(つづく)
【文・構成:深水 央】
<COMPANY INFORMATION>
代 表:中村 隆元
所在地:福岡市中央区舞鶴3-2-6
設 立:1947年5月
資本金:6,000万円
売上高:(21/3)79億7,641万円
<プロフィール>
中村 隆元(なかむら・りゅうげん)
1975年1月生まれ、福岡県春日市出身。中村学園三陽高校、福岡建設専門学校卒。学生時代はラグビーに勤しむ。2015年に中村工業(株)の代表取締役に就任。趣味は水泳、マラソン、仲間との酒飲み。関連記事
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