2024年11月23日( 土 )

確かな技術に大手ゼネコンも一目置く 専門建設業のプロ集団としての実績と誇り(後)

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中村工業(株) 代表取締役 中村 隆元 氏

 1906年の創業から100年以上にわたり、福岡の成長をたしかな技術で支え続けてきた中村工業(株)。とび職人たちが集まってスタートした同社は、今や建設業全般を幅広くカバーする一流の専門建設企業として存在感を示している。九州大学伊都キャンパスや福岡高裁庁舎などの公共施設、MARK IS(マークイズ)福岡ももちなど、幅広く手がける実績はほかの追随を許さない。また、近年頻発する自然災害の復旧工事でも、同社土木部門のたしかな手腕が高く評価されている。2015年、この名門企業の5代目トップに就いた中村隆元氏に、同社の強みとこだわりについて聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役 児玉 直)

職人文化継承には雇用の維持が不可欠

中村工業(株) ――この20年を振り返って、経営上のターニングポイントはどこにあったのでしょうか。福岡の建設景気や地価は1999年から2003年はどん底で、そこから持ち直してきたと思ったらリーマン・ショックにぶちあたりました。

 中村 07年までは良かったですね。外資が一斉に入ってきた時期もありました。リーマン・ショックの際は当社も売上高が40%落ちるという事態になりました。09年が最悪でしたね。当時、同業の経営者たちは「やはり我々の仕事は受注産業だから、こういうことがある」と、景気の波が低い状態に合わせて事業規模や人員を削減していきました。リーマン・ショック以降、雇用を維持してきた会社は2割以下でした。

 しかし、当社としては反対に雇用を維持する決断をしました。「社長の私が若いうちに採用しておかないと、人が来なくなる」という危機感もあったので、毎年10人程度の採用を続けてきました。当時、「わざわざ人を雇うから金がかかるんだ」と言われたこともあります。ですが、そのおかげで需要が高まっている現在、仕事をお請けすることができるのですが、リーマン・ショックの時期に絞ってしまった会社は人材の確保が難しくなっています。社員の雇用を止めて外注扱いにしていると、いざ人手が足りない時期になると高い人件費を払わなければ人を確保できなくなってしまいます。

 当社は以前からずっと学校回りを欠かさずに、人材の確保に力を注いでいます。それだけ、「建設業界にはなかなか人が入ってこない」という認識を強くもっているのですが、同じ専門建設業はもちろん、ゼネコンでもこの認識をもっている会社は多くはないですね。

 ――採算が合わなくなると、すぐ「労賃を下げろ」という会社も多いですね。

 中村 「発注価格の安定こそが、安定した雇用につながる」という原則を業界全体で改めて認識してほしいですね。結局、そこで労賃を惜しむことは、自分たちの手足を食べるタコのようですから。

 ――コンビニの店員が外国人の仕事になって久しいですが、建設業もそうなりかねないですね。そうなると余計に日本人の若者は入ってきません。

 中村 職人の技術や文化の継承という意味でも、大きな危機だと思います。ドイツのマイスター制度や、欧米のユニオンを通じた価格交渉などを参考にして、一朝一夕には難しいですが、建設業界自体が変わっていかなければ、今後は成り立たなくなるのではないかという危機感をもっています。

 ――ゼネコンは3月まで「史上最高益」と言っていても、年度が変わって4月になると、いきなり「発注価格を20%下げろ」と言ってきたりしますからね。大企業の社長もサラリーマンですから、目先の数字ばかりにこだわってしまいます。

 中村 そういうやり方は、お互いにとって良くないと思います。上場企業なら単年度の収支を考えるのもわかりますが、業界全体の未来も考えてほしいですね。技術者の育成には長い時間がかかります。土木の分野でいえば、高度経済成長期につくられたインフラ設備の更新や、ここ数年、毎年のように起きる災害の復旧など、働きどころはこれからもたくさんあります。

 ――貴社は「200年企業」を目指していますが、職人の技術と文化をぜひ継承していってください。

 中村 そうですね、200年は私の孫の世代くらいになりますが、これからも頑張って続けていきたいと思います。

(了)

【文・構成:深水 央】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:中村 隆元
所在地:福岡市中央区舞鶴3-2-6
設 立:1947年5月
資本金:6,000万円
売上高:(21/3)79億7,641万円


中村工業(株) 代表取締役 中村 隆元 氏<プロフィール>
中村 隆元
(なかむら・りゅうげん)
1975年1月生まれ、福岡県春日市出身。中村学園三陽高校、福岡建設専門学校卒。学生時代はラグビーに勤しむ。2015年に中村工業(株)の代表取締役に就任。趣味は水泳、マラソン、仲間との酒飲み。

(中)

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