2024年11月06日( 水 )

劇団わらび座が民事再生法申請 一般社団法人として再出発

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 「劇団わらび座」を運営する(株)わらび座(秋田県仙北市)は10月28日、東京地裁に民事再生法の適用を申請、11月2日、同地裁から再生手続き開始の決定を受けた。70年にわたり人々に感動を与えてきたが、コロナ禍に屈した。今後は新たに一般社団法人を設立して事業継続を目指す。

芸術とリゾートの融合で 経済的自立もコロナ禍に屈す

わらび劇場 わらび座は1951年東京で創業。2年後に「民俗芸能の宝庫」秋田県田沢湖に活動拠点を移した。71年に法人化。74年に常設の「わらび劇場」を開設し、民俗芸能や民謡を舞台化したミュージカル公演を実施してきた。全国ツアーでは年間25万人を動員し、アジアやヨーロッパなど16カ国の公演でも喝采を浴びた。

 常設劇場に加えて、温泉ホテル、地ビール製造、木工体験施設、体験型農園の運営など多様な事業を展開する「あきた芸術村」を構築。芸術とリゾートを融合させ、地域経済や雇用面でも大きな役割をはたした。2011年に発生した東日本大震災では、被災地で慰問公演を実施。震災からの復興を描いたミュージカル「ジパング青春記」は福岡公演でも感動を呼んだ。

 しかし、20年2月以降のコロナ禍により、常設劇場や全国ツアーの公演中止を余儀なくされたことに加え、修学旅行もキャンセルが重なり売上が激減した。打開に向けて会員制導入や宿泊施設の売却などで資金調達を行う一方、可能な範囲で公演を継続。21年には創立70周年作品「北斎マンガ」を制作。福岡公演では出演者らが劇団存続へ向けて強い決意を示した。「北斎マンガ」を含む(株)データ・マックス主催公演で4度の来福を実現。遠隔地の九州地区でも固定ファンをつかみ始めていた。

 しかし、コロナ禍が長期化するなかで現状の事業存続が困難となり、今回の措置となった。今後は一般社団法人わらび座を設立。代表理事に(株)わらび座取締役事業本部長・今村晋介氏が就任。(株)わらび座からの従業員や事業の譲渡を進め、活動継続を目指す。(株)わらび座の社長・山川龍巳氏は経営責任を取り、一線を退く。山川氏は「非常に多くの方々の支援を受けながら債権放棄をお願いする事態に陥ったのは痛恨の極み。お詫びのしようもない」とする一方で、「文化芸術を通して人々の生きる力になれるわらび座を何とか継続させていただきたい」と事業存続を強く望んでいる。

【鹿島 譲二】

関連キーワード

関連記事