2024年12月23日( 月 )

上越新幹線活性化の必要性-新潟空港における航空機と新幹線の連携(後)

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運輸評論家 堀内 重人 氏

新潟空港への乗り入れと効果

新潟空港 イメージ 羽越・奥羽新幹線が完成すれば、大幅な所要時間の短縮が期待できるが、新潟~青森間には、県庁所在地である秋田を除けば、人口が30万人を超えるような都市はない。そうなると、フル規格で建設した場合は、「採算性」で問題がある。この場合、主に公的資金で建設し、鉄道建設・運輸施設整備支援機構がインフラを所有し、JR東日本はリース料を支払うかたちで、「公有民営」の上下分離経営が採用されることにはなる。事実、東北新幹線の盛岡~新青森間などは、インフラは鉄道建設・運輸施設整備支援機構が所有しており、JR東日本はリース料を支払いながら、営業を行っている。

 ミニ新幹線で建設するとなれば、日本海側の羽越本線・奥羽本線は、京阪神と北海道を結ぶ貨物列車が多く運行されるため、貨物輸送では大動脈である。そうなると三線軌条にせざるを得なくなる。それにはトンネルや橋梁の大幅な改良工事をともない、場合によれば新規に建設した方が得策とも成り兼ねない。そして工事にともなう運休が生じるにも関わらず、その割には所要時間の短縮効果はわずかである。

 それならば新潟空港への延伸のほうが、費用対効果を考えた場合、得策であるだけでなく、優先順位が上ではないかと筆者は考える。現在は、新潟空港へアクセスするとなれば、新潟駅からはバスやタクシーを利用しなければならず、不便ではある。

 新潟空港は、新潟駅から直線距離では6.4kmの位置にあるが、新潟駅の先には新幹線の車両基地があるため、その線路を活用しながら延伸を行うとなれば、5.0km強の新線を建設すればアクセスが可能となる。

 ただし、新潟空港へ延伸するとなれば、空港ターミナルの前をA滑走路が横切っていたりするため、新幹線のホームを地下に設ける必要が生じる。そうなると建設費が高くなり、JR東日本単独の事業では、採算が取れないと言われている。

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 筆者は、鉄道建設・運輸施設整備支援機構が建設を行い、JR東日本が施設を借りて運行するかたちで、「公有民営」の上下分離経営を行うことで、採算性をクリアすることが可能だと考えている。

 もし新潟空港へ新幹線が乗り入れたならば、慢性的な混雑が続いている羽田空港・成田空港の代替空港として、新潟空港が活用できる可能性が出て来る。現状では、とくに群馬県や新潟県の南部、埼玉県の北部に在住の人にとれば、新幹線で東京まで出て、羽田空港や成田空港へアクセスする必要があり、不便であるといえる。

 その点でいえば、新潟空港へ新幹線が乗り入れれば、群馬県や新潟県南部、埼玉県北部在住の人にとれば、羽田空港や成田空港へのアクセスよりも、新潟空港へのアクセスのほうが、所要時間も短く、かつ価格面でも割安となる。

 新潟空港には、国内便として新千歳、国際線の接続便として成田、中部、小牧、伊丹、関空、福岡、那覇に就航している。そして国際線として、ソウル、上海、ハルビン、台北に就航している。かつては東ロシアへのゲートウェーとして、ウラジオストック、ハバロフスク、イルクーツクに就航していただけでなく、ホノルル、中国の西安、香港にも就航していた。
既存の上越新幹線を延伸すれば、慢性的な混雑のため、増便が難しい羽田空港、成田空港の機能の一部を、新潟空港へシフトさせることが可能となる。

 そのように考えると、上越新幹線の新潟空港への延伸は、国家の交通体系の在り方にも関わる問題にもなるから、JR東日本に採算性をベースとして建設、そして運営させるのではなく、公設民営方式で建設を行い、完成後は「公有民営」の上下分離経営を実施するのが、望ましいといえる。

 欧州では、高速鉄道と航空機が連携することで、高速交通手段のネットワークが構築されている。この場合、高速鉄道の駅で航空機のチェックインを実施するだけでなく、高速鉄道に航空会社の自社便名を付け、マイレージサービスまで実施するなど、欧州では高速鉄道と航空機は、連携した輸送が提供されている。

 首都圏で、新規に空港を建設することが難しく、茨城空港も東京からのアクセスが、片道2時間近く要することから、上越新幹線を少し延伸しただけで、アクセスが大幅に改善する新潟空港への乗り入れは、検討すべき課題であるといえる。

 これにより上越新幹線の利用者数が増えるだけでなく、羽田空港・成田空港の混雑緩和にも貢献するため、一石二鳥といえるだろう。

(了)

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