【倒産を追う】(株)総合電商～先行投資費用が負担に

創業者の逝去で形勢急変か？

    「総合電商は優れた事業スキームで、現在の我が国の時流にマッチし、将来性が期待されていたのだが…。経営破綻は、大変残念だ」と語る地元の経済アナリスト。

　同社は、2005年6月に北海道帯広市で設立された電気設備販売業者。創業者・中保人氏の前職での経験を生かし、キュービクルの販売およびメンテナンスを手がけるほか、同設備を利用した電力販売事業も実施。12年7月には東京に本社を移転するほか、全国に営業拠点を構えるなど業容を拡大していった。

　主力のキュービクルのアウトソーシング事業では、同設備を同社が買い取ることで維持・管理コストを負担する代わりに、電力契約を同社提携先の新電力に切り替え、高圧から低圧に変電することで生じる電気料金の価格差や電力販売などを組み合わせたビジネスモデルで収益を得ていた。また、キュービクル等の改修工事やLED照明の販売・施工なども手がけ、21年5月期には過去最高となる売上高59億1,194万円を計上していた。しかし、キュービクルの買い取り費用など多額の先行投資が負担となっていたことに加え、キュービクルオーナーへの賃料支払いが増加していた。

　そんな状況下、創業者で前代表取締役・中保人氏が「同年12月8日に逝去した」（総合電商からのコメント、なお法人登記の変更はなされていない）ことで、同社の動向が注目されていた。「総合電商は中保人前社長自らが、営業を牽引していた。約1年前から中保人氏の健康状態が芳しくなく、経営の最前線に立つことができなかった。その影響で営業が苦戦していたことは明らかだ」（前出地元経済アナリスト）。

電気供給は大丈夫か？の問い合わせ

　同社の倒産により、顧客から「電気の供給は大丈夫なのか？」という問い合わせが多数寄せられた。顧客である福岡市内の幼稚園の担当者は、「総合電商から経営破綻したとの通知が郵送されてきました。今後は、総合電商と取引関係の新電力会社へ〈電気料金をお支払いください〉と書かれていました。しかし、引き落としでの電気料金支払いを行っていたので、二重に支払いが発生するのではないかと疑問をもちました。そして電気の供給は、本当に大丈夫なのかと不安になりました。総合電商の担当弁護士と同社の現代表に確認したところ、電気の供給は問題ないとのことでしたが…。ご家庭のお子さんの命をお預かりしているので、電気が止まると大変なことになりますから」と不安を語り、「キュービクル管理（同）より“12月27日に今後についての説明会をオンラインで開催する”旨の通知が届きました。私は都合がつかず欠席しました。そして12月27日の説明会の内容について、送ってもらうようにお願いしましたが、現時点で同社より回答はありません。早急に連絡をいただきたいです」と訴える。

　 キュービクル管理（同）（東京都中央区、中啓人氏）は、総合電商の倒産隔離のために設立されたSPCで、総合電商の業務を引き継いでいる。今後の電気供給などについて尋ねるべく、同社の中代表に連絡を入れたものの、応答はなかった。

不明瞭な事象多数

　総合電商の100％出資子会社だった、電気設備工事会社の(株)建商（福岡市博多区、田中智之氏）は、21年11月に総合電商と資本関係を解消した。建商に取材したところ「田中代表が11月3日に総合電商が保有していた建商の全株を取得済み。以前より資金繰りはそれぞれ独自で行っていた。総合電商の債権は100万円程度で、建商の経営における影響は軽微」という回答があった。しかし、判明した債権額は約2億3,000万円（変動の可能性あり）。当初回答の債権額と大きな隔たりがある。この件について確認するために建商の田中代表に再三連絡を入れたものの、応答はなかった。総合電商からの受注は債権額から計算すると、約15％前後と推測される。

　総合電商の現代表・加藤晋氏からは「倒産後の残務整理のために代表に就任しましたので、詳細についてはまだわかりません。お客さまに多大なご迷惑をかけておりますことは、心よりお詫び申し上げます。ですが電気供給を含め、今後の事業再生と継続は、キュービクル管理（同）に移行しているという以外の回答はできません」とのコメントが得られた。

【河原　清明】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：加藤　普ほか1名
所在地：東京都中央区日本橋茅場町1-13-21
設　立：2005年6月
資本金：2,500万円
売上高：（21/5）59億1,194万円 

▼関連リンク
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