2024年12月21日( 土 )

「三重苦」に苦悶する韓国経済(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

中国経済の停滞と家計負債

韓国 貿易 イメージ

 韓国は貿易依存度の高い国だが、そのなかでも中国は輸出の4分1ほどを占める貿易の最重要相手国だ。ところが、中国経済が低迷し始め、先行きが懸念されるようになった。中国は恒大集団のデフォルトなどによる不動産市場の委縮、中国政府の各種規制、米中衝突リスクなどによって、今年の経済展望はそれほど明るくない。

 国際通貨基金(IMF)は中国のGDP成長率予測を5.6%から4.8%に下方修正した。シティバンクとJPモルガンの予想も4.7%で、ゴールドマン・サックスと野村証券はこれより低い4.3%にとどまると予測した。中国への依存度が高い韓国経済にとって中国経済の失速は大きなマイナス要因である。

 もう1つ韓国経済の重荷となっているのが家計負債である。韓国の家計負債規模はすでに1,800兆ウォンを上回っており、間もなく1,900兆ウォンに達する勢いである。韓国銀行によると、昨年の第3四半期を基準とした家計と企業の負債合計比率は219.9%で、前年対比で9.4%上昇し、史上最高となった。また、自営業者の負債規模は887兆5,000億ウォンにも達する。コロナ禍により、満期になっても返済を猶予する措置が取られていたが、今年3月にその制度も撤廃されるので、自営業者の悩みは深まるばかりだ。返済猶予されている貸付金額規模は約130兆ウォン(韓国銀行統計)で、その返済が焦げ付く可能性も高い。

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 これまで低金利時代が続いたため不動産を無理して購入していた人が多かったが、コロナ禍で失業した人が増えているし、自営業者は、営業規制などで売上が大幅に落ち込んでおり、今後の金利上昇は頭痛の種となっている。

 バランスシートの縮小はドルの供給が減ることを意味し、成長には欠かせない資金が不足しがちになるので、経済が失速せざるを得ず、収入が減っているのに、銀行への利子負担が増えていってしまう。また、韓国では資産の85%ほどを不動産で保有しているケースが多いのだが、今後、利子の負担に耐えられず、不動産が売りに出されるようになると、不動産価格が暴落しかねない。

 世界金融危機や新型コロナウイルス発生時に政府は大量のお金を“じゃぶじゃぶ”供給してきたが、回収を急ぐということになれば、かつて経験したことのない「未知の世界」に突入することになってしまうだろう。

(了)

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