2024年12月22日( 日 )

中国経済新聞に学ぶ~キヤノン、なぜ中国のカメラ工場を閉鎖するのか(後)

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デジタルカメラ敗れたり、「被害者」はキヤノン以外にも

デジカメ イメージ    キヤノン珠海を閉鎖に至らしめた「元凶」を挙げるならば、それは間違いなくスマートフォンである。2000年に世界で初めてウェブカメラ付きの携帯電話・シャープJISH04が登場し、のちの数年間でカメラ機能が携帯の標準装備になっていったが、デジタルカメラに大打撃をもたらした一番の原因はiPhoneを代表とするスマートフォンである。

 スマートフォンの豊富な機能やその後のモバイルインターネットにより、撮影やシェア、画像閲覧の方法が一変した。一般の人たちにとって、スマートフォンのウェブカメラがごく当たり前の「カメラ」となり、結局はデジタルカメラの「天敵」となったのである。

 市場調査会社のカウンターポイントリサーチによると、世界のスマートフォン出貨台数は2011年には5億2,100万台であったが、2017年には15億6,600万台まで伸びた。その後いくらか減ったものの、2020年でも13億3,100万台を数えている。その一方で、デジタルカメラの出貨台数は以前の1億2,000万台から1,000万台以下にまで落ち込んでいる。

 2020年以降、コロナの影響でロックダウンや旅行禁止などといった措置がとられ、観光業が世界的に落ち込んだことも、カメラ業界に追い打ちをかけた。カメラ映像機器工業会(CIPA)によると、2020年のカメラ生産台数は前年比4割減の874万台であり、この数字は2015年の4分の1で、2000年とほぼ同じである。

 業界が衰えたことで、大手各社の業績も落ち込んでいる。マンモス企業であるソニーはともかく、キヤノン、ニコンという大手2社がカメラ需要の不振にあえいでおり、キヤノンの決算発表を見ると売上高が3年連続でダウンしているほか、利益も2年連続でダウン、2018年の3,425億円から2020年には1,105億円(約62億元)になっている。

事務機器、医療設備は引き続き中国で生産

 キヤノン珠海工場の閉鎖を受け、ネット上で「キヤノンが中国から撤退」との噂が流れたが、これはデマである。キヤノン中国によると、中国は間違いなく「大切な市場の1つ」であるとしている。

 キヤノン中国の広報担当は、「業務としてはカメラのほか、事務機器や医療機器の製造、また半導体もある。いずれもラインナップや産業チェーンが幅広く、中国にも研究所や工場がある。大連にはコピー機や医療設備の工場、および研究所があるほか、蘇州に複合機の工場があり、また中山にも生産企業を抱えている。営業面では、医療設備や光学設備、半導体設備の販売会社を有している」と話している。

 さらに、中国では研究開発から生産、販売、およびサービスという一貫体制があるとも強調した。「コロナに見舞われて世界的に売上も利益も落ち込んだ2020年、中国では増収増益をはたした。珠海は中国における生産拠点の1つに過ぎず、製品も高級タイプではなく小型のデジカメが中心である。(閉鎖は)単に会社の戦略的プロセスに過ぎず、マーケットの状況に合わせて生産を調整していくことはごく普通の経営行為である」と指摘している。

 キヤノンというブランドで最も印象が強いのがデジタルカメラであるが、会社として業務分野はかなり多岐にわたっている。最も新しい2020年の企業レポートを見ると、目下最大の業務は事務機器関連(事務用デジタル複合機、デジタルカットプリント用の複合機、レーザープリンター、消耗品)で、売上高は映像関連品の2倍以上、グループ全体の50%近くを占めている。

 映像関連の各大手がスマートフォンの勢いに押されて業務の見直しを進めるなか、小型デジタルカメラはあえなく「捨て子」となったのである。

(了)


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