熊本産アサリ、輸入牛の不当表示 繰り返される食品偽装(3)
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安くて、安全でないと売れない…
国産至上主義に加えてもう1つ、我が国の絶対的な価値に「見た目良し」の信仰がある。形や色つやの悪いものをいやがる。それだけではない。正常商品のなかにたった1つ不良品が混じっていると、その商品全部にマイナスイメージをもつ。不良品を買わなければいいだけの話だが、そうはならない。そんな販売環境だから、小売側は必要以上に商品の状態に気をつかわざるを得ない。それは生産者や卸業者に伝播する。彼らにとって、消費者の評価は絶対で、それを外すと生きていけない。そのために必死の努力をする。
小売の側も消費者にこたえるためにその要求に少しでも近づこうとする。それはいうまでもなく高コストを生む。しかし、消費者はより安く、より安全に、より美しく、より新鮮を求める。そのなかで、最優先は「より安く」だ。いくら豊かになったといっても、我が国の2人以上の年間食費支出は100万円に満たない。1人あたりにすると年間30万円余りだ。価格が高ければ消費者は買えない。
たとえばアサリは国産なら産地価格(浜値)は1kgあたり600円を超える。一方、外国産なら200円程度だという。これが小売価格になると、国産は3.000円前後、外国産なら800円程度になるはずだ。偽装はこの価格差のなかに生まれる。
普通の消費者が抵抗なく買うことができるアサリの値段はワンパック300~500円だ。それを超える価格だと販売量は急激に落ちる。アサリの大きさは1個7g~12g。300gパックなら30個前後ということになる。1個あたりにすれば15円程度だ。国産品なら1パック価格は1.000円近くになる。外国産なら特売価格300円で販売可能だ。
偽装はその隙間に潜り込む。原価が200円程度のアサリを398円で売れば、卸も小売もそれなりの利益を確保できる。
アサリに限らず、食品には値ごろという表現がある。いわゆる価格に抵抗なく買える価格だ。消費者の購入物差しともいえる。
たとえばリンゴ一個の重さは300g程度だが、一個100円で売れば極めてよく売れる。148円ならその半分も売れない。198円となればさらにその半分になる。それ以上の価格ではリンゴは高級品になり、ほぼ売れない。そう考えると1g当たりの限界価格は0.6円程度ということになる。
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小売こぼれ話(1)何をやるか、いかにやるか卵の場合は1パック100円なら限りなく大量に売れる。もちろん店は大きく原価を割っての販売だ。198円なら原価割れはないものの、売れ行きは極端に落ちる。スーパーの卵の価格は平均200円程度だ。それ以上の価格になると特殊卵という位置づけでブランド卵ということになるが、その販売量は極めて少ない。この場合、限界1g単価は0.3円ということになる。この価格は60年前の価格とほぼ同じだ。卵は物価の優等生。インフレ時代の標語がいまだに生きている特殊ケースだ。しかし、決して褒められることではない。
消費頻度が高く、嗜好性が平均的なものほど、価格競争は厳しい。そうでない食品も似たようなもので総菜は1g当たり1円で売ると大量販売が可能だが、2円になると販売量は半減する。デパートの総菜、1g7~9円以上の価格の総菜は一般家庭の食卓から見ると、ハレの食品でしかない。いくらおいしくてもスーパーでは絶対に売れない価格だ。
(つづく)
【神戸 彲】
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