2024年11月28日( 木 )

熊本産アサリ、輸入牛の不当表示 繰り返される食品偽装(4)

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生産者、納入業者の苦悩

漁業 イメージ    農業の効率的な生産にはビニールハウスや化学肥料、農薬も必要だ。曲がったキュウリや傷ついた果物を小売業者は買ってくれない。お客が買わないからだ。売れない商品の生産はかけたコストがそのまま損になる。だから生産者はなるべくきれいなものをつくらなければならない。それはそのままさらなる高コストへとつながる。
 水産業も同じだ。燃料費や漁具、養殖施設や餌代は高騰の一途だ。しかし、そのコストをそのまま出荷価格に転嫁すれば、売上に影響する。

 高頻度消費品の食品は、経費から見て利幅が小さい。100円の売上のなかに占める利益の割合は、たかだか1~2円に過ぎない。小売に商品を提供するメーカーや市場、生産者も基本的な構造は同じだ。

 多くの小売業者は極めて厳しい納入条件を卸に要求する。指定した期間に、指定した量を欠品なく納品せよ。できなければ取引をやめるといったたぐいのものだ。それをローコストで実行しようとすれば、そこに産地偽装や不正な品質表示の素地が生まれる。とくに経営基盤の弱い企業はやりたくはないが、食うためについやってしまうというケースが発生するのだ。

 言い換えれば、消費者、メーカー、市場、卸といった。四者の都合が偽装や不当表示を生むともいえる。

 消費者にコスト負担なしの安心、安全希求がある限り、偽装の基本構図は地下水脈のように流れ続け途切れることはない。

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 「安全で、健康的な食品を私たちは求めています。ただし、豊富に安い価格で」。消費者からすれば当たり前のことだが、高コスト下でそれを実現するのは、逆立ちしてコップの水を飲むのと同様、容易なことではない。安心、安全を求めるならば、相応のコスト負担が発生するのが当たり前なのだ。安心安全のための当たり前のコストを拒否する限り、おそらく、偽装や改ざんなどの不当、不正表示は必ず、忘れたころにまたやって来る。

 生鮮食品の偽装や添加物を見た目だけで判断するのはほぼ不可能だ。アサリを見て、それが中国産か有明海産かわかる人はいない。スイカを見ただけで熊本産か鳥取産かわかる人もいない。8月のスーパーマーケットの青果売り場で熊本・植木産スイカとの表示を疑うのは業界関係者だけだ。一般の消費者がそれを疑うことはない。

(了)

【神戸 彲】

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