【視点】韓国人が子どもを産まない理由 苛烈を極める競争社会(前)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏合計特殊出生率が世界最低
国の経済が豊かになると、出生率が減少すると言われている。それは韓国においても同様で、女性1人が一生のうちに産むと見込まれる子どもの数を示す合計特殊出生率は、2021年が0.81(暫定値)と4年連続(18年0.98人、19年0.92人、20年0.84人)で1人を下回り、OECD加盟国で最低となった。また、出産者数は27万2,000人(20年)で、15年の43万8,000人に比べると、39.9%も減少している。
このように出生率が低下し、人口減少の危機に直面している韓国だが、1970年代までは産児制限を促進するほどだった。ところが、1983年に合計出生率が2.1人に下がり、02年にはOECD加盟国のなかで最低水準となる1.17人を記録。これに韓国政府は危機感をもち、本格的にこの課題に取り組み始めたものの、これまでのところ、それほど効果は上がっていない。
韓国では低出生率の問題に加え、高齢化問題も深刻である。「高齢化社会」(65歳以上の高齢者が人口の7%)から「高齢社会」(65歳以上の高齢者が人口の14%)への移行に要した期間は18年で、一足先に高齢社会を迎えた日本と比較しても期間が短い(日本は24年)。なお、2020年の韓国の高齢化率は15.7%、2025年には20.3%になると予測されている。
人口が減少するということは、生産年齢人口の減少と消費の縮小をもたらす。また、人口減が急ピッチで進んだ場合、企業の成長および国の経済成長にとっての足かせとなる。また、生産年齢人口が減少しているのに高齢者が増えていくので、将来若い世代の負担が重くなるのは目に見えている。従って、少子高齢化問題は国家的に解決すべき重要な課題であり、解決できないと、国家存亡の危機に立たされることになる。
なぜ韓国人は子どもを産まない
少子高齢化問題について論じる前に、韓国の現状についておさらいしておこう。韓国では全人口の約3分の1が首都圏に住んでおり、人口が首都圏に一極集中している。もちろん世界的に都市化は進んでいるものの、韓国ほど首都周辺に人口が集中している国は少ないだろう。
筆者の世代は3つの大学(ソウル大学、延世大学、高麗大学)を目指して受験勉強をしたものだが、現在はさらに熾烈な受験戦争がくり広げられている。運よく大学を卒業しても、財閥企業に入社できるのは、上位3つの大学出身の一握りと狭き門である。
そのような状況下、不動産は高騰を続けており、ソウルで10億ウォンを下回るマンションを探すのが難しくなっている。このように経済的な問題がハードルとなって結婚しない若者が増えるのは容易に想像できる。
財閥企業に入れば晴れて結婚もできるだろうが、就職難の状況で、何とか中小企業に就職できたとしても、給料が少ないし、雇用も安定していないので、結婚ができない。結婚したら住む家が必要だが、親が面倒を見てくれない限り、マンションを購入しようとすると、先述のように何十億ウォンも必要となる。就職して、住む家を用意できたとしても、その先には育児という試練が待ち構えている。
(つづく)
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