2024年12月21日( 土 )

SWIFT排除のロシア 事実上のデフォルト(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

波及効果は?

ルーブル イメージ    SWIFTからロシアが排除されると、まずルーブルが暴落する。ルーブルの価値は下落を続け、通常の60%程度まで暴落している。経済制裁により、ロシアが保有する73兆円相当の外貨準備高のうち、その8割強に当たる60兆円の利用が制限されたことになり、外貨準備高も使えず、為替介入もできないため、価格の調整機能が失われ、ルーブルはさらに下落する可能性もある。

 通貨だけでなく、ロシア債券の多くが取引不能の状態に陥っている。SWIFTからの排除やそれにともなうルーブルの暴落を受けて、ロシアの金融は加速度的に不安定化したのだ。このような状況下、16日に期限を迎えたドル建て国債の利払いが履行されたが、その後も外貨建て債務の返済がいくつもあり、デフォルトの可能性が高まっている。国債だけでなく社債も巻き込み、外貨建て債務の連鎖的なデフォルトが起きる可能性も排除できない。

 しかし、ロシア国債のデフォルトが生じても、世界の金融市場に与える打撃は甚大にはならないという指摘もある。ロシアの外貨建て国債の発行残高の比率は、世界基準で見ると3.1%に過ぎず、その影響は限定的という。

ロシアの対応と今後の行方

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 SWIFTからの排除に対するロシアのもう1つの対応策として、中国独自の国際銀行間決済システム「CIPS」に接続することも考えられる。しかし、CIPSは人民元建て決済にしか利用できないため、その有用性は限られると言われている。ロシアがデフォルトに陥っても、豊富な資源と食糧をもつことから、今すぐ国が存亡の危機に立たされることはない。かといって戦争を継続すれば、ロシア経済は疲弊し、世界経済にも甚大な被害をおよぼすことは間違いない。

 SWIFTからの排除が戦争を終結させる手段になるのか、それとも、「窮鼠猫を噛む」という結果になって事態を悪化させるのか。もう少し様子を見る必要がある。

(了)

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