2024年12月21日( 土 )

韓国で新規感染爆増、5人に1人が感染(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

ワクチン対策の失敗

ワクチン イメージ    新規感染者が激増した理由の2つ目には、抗体持続性の高いワクチンの早期確保の失敗がある。韓国ではファイザーやモデルナのワクチンの確保が大幅に遅れた。ワクチンの早期確保に失敗した韓国では、初期に接種対象だった60代以上に、ファイザーやモデルナの代わりに、韓国で委託生産されたアストラゼネカのワクチンを接種した。

 このアストラゼネカのワクチンは接種から3カ月経つと、予防効果が急減するという研究結果が出ている。加えて、その有効性は2回目の接種から5カ月間という英保健当局の発表もあった。つまり、韓国政府はワクチン確保の遅れにより、有効性と接種期間の短縮を確保することに失敗し、このような結果を招いたと専門家は分析している。

 ただ、韓国の人口5,200万人の約87%がワクチン接種を完了し、63%がブースター(追加)接種も済ませているため、死亡率はほかの多くの国よりもはるかに低く、0.13%に過ぎないことは注目に値する。

 3つ目は、児童・青年のワクチン接種の遅れである。小中高生の登校が始まったことによって、小中高生の感染者が続出しているが、青少年の接種率は15%程度に過ぎず、学校が集団感染の危険にさらされている。

 日本の10代のワクチン接種率が72.6%であるのに比べ、韓国は接種開始時期も日本に遅れを取り、接種率もかなり低い。韓国中央防疫対策本部によると、24日の新規感染者のうち小児と小中高生は38.9%を占め、高齢者よりも格段に高いことがわかる。小児などの感染対策を疎かにしたことが、現在の感染爆発の原因の1つとなっている。

深刻化する子どもの治療体制の不備

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 韓国は少子高齢化社会になりつつある。子どもの出産率が世界最低水準になった現在、小児科や産婦人科の医師不足は深刻な状況となっている。そのような状況下で、子どもが新型コロナに感染すると、大人よりは症状が軽いというものの、新規感染者が急増するにつれて、子どもの患者もおのずと増えている。その結果、子ども用の解熱剤が品切れ状態になり、また子どもを入院させようとしても、担当してくれる専門医が相当不足している状況にある。

 韓国政府に子ども専門の新型コロナ治療を行う病院を設けるように促しても、現在のところ実現しておらず、子どもは新型コロナに罹っても専門的に治療してもらえる状況にない。

 また、新型コロナウイルスの変異は続いていて、今後、新たな強力な変異種が発生するかもしれない。オミクロン株とデルタ株が一緒になった変異株や、オミクロン株とステルス・オミクロン株が一緒になって変異したものなど、どのようなスーパーウイルスが出現するかはわからない。

 韓国では死亡者が増加すると、火葬場の需要が高まり、その増設などが急がれている。コロナ感染で患者が死亡すると、感染を恐れて、家族であっても面会できず、医療関係者によってすべて処理され、最後に家族に報告されるだけとなっている。早期に感染拡大が終息し、正常な日常に戻ることを祈ってやまない。

(了)

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