2024年12月22日( 日 )

韓国の半導体産業 弱みはファブレス(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

ファブレスとは

半導体 回路設計 イメージ    半導体の重要性が再認識されているなか、米国、中国、台湾、韓国、日本は半導体分野における競争力を確保するため、熾烈な競争を繰り広げている。

 半導体産業では、開発や設計に専念する「ファブレス」と、製造専業の「ファウンドリ」との水平分業が進んでいる。

 ファブレスとは、半導体業界では工場(Fab)がなく(Less)、回路設計に専念し、チップ製造は外部に委託する半導体企業のことを指す。通常のメーカーは、生産設備に資金を投入して製造を行うが、半導体産業においては、生産設備への投資金額が少なくても数千億円規模になるため、優秀な人材を集めて、研究開発に資金を集中する方が、市場変化にも対応しやすく、リスクも少ない。

 ファブレス半導体企業は、IDM(設計と製造を手がける統合メーカー)よりも成長率が高く、工場をもたないという利点を最大限にいかし、高収益を達成している。その結果、ファブレス半導体企業は半導体売上高世界ランキングTOP10中、6位以降に複数の会社が入るほど成長した。また、ファブレスの上位3社は、全体の半導体企業のなかでもそれぞれ6位、7位、8位にランクインしている。

 台湾の調査・コンサル会社「TrendForce」によると、2021年の世界TOP10ファブレス企業の売上高は1,274億ドルで、前年に比べて48%も伸長した。昨年、半導体不足が世界的に発生し、半導体の価格が急騰したことで、設計企業の売上高も大きく増加したからだ。48%の成長率というのは半導体産業のなかでも突出した数字である。TOP10にはクアルコム(Qualcomm)、NVIDIA、Broadcom、AMDなど米国企業が6社、MediaTek、NovaTek、RealTekなど、台湾企業4社が名を連ねている。

 売上高1位にランクされたクアルコムのファブレス分野の売上高は、293億3,300万ドルで、前年対比で51%も伸びている。2位にランクされたNVIDIAの売上高もグラフィックカードとデータセンターの需要増加で前年対比で売上高が61%も成長している。全半導体産業の年平均成長率は21.1%であるのに比べ、ファブレス分野の成長率はその2倍で、驚異的な成長を続けている。台湾企業の成長も著しい。4位にランクされたMediaTekの売上高は176憶1,900万ドルで、売上高成長率は61%となっているし、NovaTek(79%)、 RealTek(43%)、 HiMax(74%)も記録的な成長を続けている。

半導体市場におけるファブレス市場

 高成長を続けているファブレス市場だが、世界のファブレス市場規模は1,100億ドルで、非メモリ市場の40%ほどを占めている。また、半導体産業全体では23%を占めている。

 昨年、世界で100億ドル以上の売上高をあげた半導体企業は17社あるが、そのなかで前年対比50%以上の成長をしたのは4社で、すべてファブレス企業である。

 ファブレス市場はこのように半導体産業のなかでもずば抜けた成長をしている分野だし、産業のなかで占める重要性もますます高まっている。ファブレス企業の成長こそがファウンドリへの需要喚起にもなるので、世界各国はファブレス市場に注目している。

 この分野においては米国と台湾が強い状況下、中国もファブレス企業の育成に国を挙げて力を入れている。一方、日本や韓国は存在感が薄く、世界シェアの1%くらいを占めているのが現状である。

(つづく)

(後)

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