2024年07月16日( 火 )

大統領執務室移転をめぐり賛否両論(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

次期大統領、執務室移転を発表

青瓦台 イメージ    韓国の大統領府は官邸の屋根が青い瓦で葺かれていることから「青瓦台」と呼ばれている。朴正照大統領時代には官邸が北朝鮮の特殊部隊に襲われるなど、歴史の痕跡が刻まれた韓国の代表的な場所でもある。また外国の首相などが韓国を訪問する際に必ず立ち寄る場所としても、有名である。

 次期大統領である尹錫悦氏は大統領の今までの権威的なイメージから脱却するため、大統領府を移転すると発表した。以前も移転を模索した時期があったが、警護や費用などが障害となり断念している。しかし、尹次期大統領は大統領府移転を強力に推進する意思を示しており、韓国では移転に関して賛否両論が巻き起こっている。

 尹次期大統領は当初、大統領執務室を光化門の政府庁舎に移転する計画だったが、突然計画を変更し、大統領府を龍山区にある国防部庁舎に移し、同年5月10日より「青瓦台」を国民に開放・返還すると発表した。

 大統領府を龍山に移す理由としては、龍山は周辺に高層ビルが少ないため警護が容易で、国防庁舎の施設が活用できるので費用的にもメリットがあることが挙げられるという。大統領府の移転計画に対し韓国ギャラップが世論調査を実施した結果、「大統領府は今のままで良い」という回答が53%、「龍山に移転した方良い」が36%だった。

 こうした世論にも関わらず、尹氏は現在の大統領府には絶対入らないという強硬姿勢を見せており、なぜ大統領の執務室移転にあれほど執着するのか疑問がもたれている。就任後にひとまず大統領府で業務を始め、落ち着いてから執務室の移転を準備しても良いのに、なぜ無理して就任前に大統領府を移転しようとしているのか。一部の政治家は、尹氏が移転を強行することによって、国民の信頼を失い、国政につまずくのではないかと懸念をしている。

移転計画の背景と中身

 韓国の大統領府は、大統領とその家族の住む場所である官邸を始め、大統領執務室などがある本館など、いくつかの建物で構成されている。ところが、現在の大統領府は国民とのコミュニケーションはもちろん、大統領を支えているスタッフとの意思疎通にも構造的に問題があるという。スタッフが仕事をする建物と大統領執務室とは500mくらい離れており、業務報告をするためには7、8分歩く必要があるという。今回の選挙公約通り、大統領府を龍山に移転することになったら、国防省は領内にある合同参謀本部の建物に移転を余儀なくされる。大統領府の移転をめぐって与野党間の攻防が続いているが、現在の大統領府で執務を開始した場合、大統領府の捜査に制限がかかるので、大統領府を移転したうえで、現在の大統領府に対する徹底的な捜査を進めるためではないかといううがった見方もある。

(つづく)

(後)

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