2024年07月16日( 火 )

大統領執務室移転をめぐり賛否両論(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

移転反対の声が多い

青瓦台 イメージ    大統領府の移転に反対する理由として「安保の空白」が上げられている。数十年間にわたり構築してきた警護・軍事・指揮施設をそれほど短期間に移すのはどうしても無理で、安保の空白が発生するリスクが挙げられる。

 政権交代期というのは安保の空白が発生しやすい時期でもあるが、大統領府の移転は、それに拍車をかける公算が高い。最近北朝鮮の新型大陸間弾頭ミサイルの発射で、朝鮮半島に緊張が高まっている。また4月は米韓合同演習の時期で、ただでさえ、テンションが上がる時期であり、大統領府移転は時期的によろしくないという意見である。

 現職の文大統領もこのような安保の空白を懸念して大統領府の移転に反対。現在の設備を移転するには周到な準備と時間が必要で、大統領府の移転は急ぐべきではないとされている。それに、国防の心臓部である国防庁舎の施設を移転することも簡単なことではないらしい。

 2つ目には莫大な費用が発生するので、そのような予算があったらコロナ対策に使うべきだという意見である。大統領室の移転に必要な費用は352億3,100万ウォン、既存入居機関の移転に118億3,500万ウォン、漢南洞公館のリモデリング25億ウォンを加えた496億ウォンだという。だが、合同参謀本部が南泰嶺(ナムテリョン)の首都防衛司令部に連鎖移転する最小費用1,200億ウォンに続き「官邸新築費」まで加えれば、大統領執務室の移転費用は雪だるま式に増えることになる。このように移転費用をどの範囲まで算入するかによって費用金額は大きく違ってくる。与党では国防庁舎を移転する費用までを含めると、少なく見積もっても大統領府の移転に1兆ウォン近くの費用が発生するだろう推計している。

 3つ目に大統領府移転の理由として国民、それから参謀とのコミュニケーションが上げられている。しかし、移転に反対する側は別の主張をしている。以前米軍基地の跡地である龍山は公園を造成するためには土壌改善をしないといけないので、公園の完成までは少なくとも7年以上はかかるという。それはすなわち任期中には公園が使えないということである。それに国防庁舎があった龍山は軍事機密があるところだけに一般人のアクセスが制限された空間でもあった。国民と自由なコミュニケーションを取ろうとするなら、龍山は適していないという主張だ。国民の意見に耳を傾けたいといいながら、世論調査の結果を無視して移転を強行するのは話が矛盾するという指摘も上がっている。

 4つ目に時間的な制限を反対理由として挙げている。大統領の就任まで1カ月足らずで、その間に大統領府を移転するのは時間的に無理なので、まず現在の大統領府で執務を開始した上、そこから時間をもって準備をした上、大統領府の移転を推進するのが望ましいという意見である。以上のように反対する側もそれなりの論理をもって反対している。しかし、今のところ次期大統領の尹氏は執務室を別に設け、現在の大統領府には絶対に入らないという姿勢を取っているので、今後の推移がどうなるかをもう少し見守る必要がある。

(了)

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