2024年12月22日( 日 )

「双子の赤字」の危機が高まっている韓国経済(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

貿易赤字の原因とは?

韓国 貿易 イメージ    韓国では経常収支の赤字と財政収支の赤字、すなわち双子の赤字が懸念されているが、経常収支を左右する貿易赤字の原因について見てみよう。まず、貿易収支の第1の犯人は原油高である。韓国はほとんどのエネルギーを外国に依存している国なので、原油高になると、輸入額がどうしても増えることになる。

 先月30日を基準に、原油価格は1バレルあたり120ドルを上回っている。このような原油高になった背景には、EUのロシア産原油輸入禁止の可能性、米国人の移動需要の増加、中国・上海のロックダウンの解除、イランの革命防衛隊のギリシャタンカー2隻の押収などが挙げられる。ギリシャのタンカーが押収されたホルムズ海峡は、海上運送の原油の3分の1が通るところである。中国政府も6月1日から上海のロックダウンを2カ月ぶりに解除し、中国での原油需要の増加が見込まれている。

 韓国では夏場は、季節的には原油の需要が減少する時期なのだが、ウクライナ戦争のあおりを食って原油高が進んでいて、石油・ガス・石炭などのエネルギーの輸入額だけでも100億ドルを大きく上回るようになっている。

 原油高によって、その次に価格に影響を受けやすいのが原材料である。原材料の高騰が続いていて、製造現場では悲鳴が上がっている。原材料の価格は昨年初めと比べて50%以上上昇している。自動車、建設業などで幅広く使われている鉄鋼をはじめ、アルミニウム・ニッケル・コバルトなど軒並み価格が上昇している。原材料の価格の高騰は、とくに中小企業の存続を脅かすほど、大きな脅威となっている。それに加えてサプライチェーンの崩壊で、中国からの部品供給も円滑ではないため、工場が稼働を中止する危機に瀕している。

 鉄鋼の場合、鉄鉱石の値上がりに触発されて価格が高騰し、自動車業界、造船業界、建設業界に大きな影響をおよぼしている。韓国は原油だけでなく、非鉄金属の海外依存度も高く、輸入に頼っていて、原材料の高騰は韓国国内の物価上昇のトリガーにもなる。

 このように韓国の貿易環境は、ますます悪化していると言っても過言ではない。さらに、ただでさえ、原油高、原材料高で輸入額が膨らんでいるなか、ウォン安は価格高騰に追い打ちをかける。

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 かつては原油高になればドル安になって、ウォン高が価格高騰を相殺する役割をはたしていたが、今回はドル高、ウォン安なので、韓国経済は一層苦しくならざるを得ない状況にある。貿易収支の赤字が続けば、国の対外的な信用度も落ちる恐れがある。貿易赤字を放置すれば、韓国経済はますます悪循環に陥ることもあり得る。

 貿易赤字は韓国政府の喫緊の課題であるが、新型コロナウイルスの再流行、ウクライナ戦争の長期化、サプライチェーンの崩壊、貿易収支赤字の長期化など、不安定な要素もいくつもあり、予断を許さない状況にある。

 アジア通貨危機のような経済危機が再発しないように、韓国政府は米国との通貨スワップの締結などにも注力しているが、相手があるだけに簡単に解決できる課題でもない。現在の状況が、韓国経済にとって大きな試練であることは間違いない。

(了)

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