露呈し始めたDeFi(分散型金融)のリスク(後)
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日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏盛り上がりの背景は
最初のDeFiブームは、2020年夏頃だった。高い収益性が話題を呼び、連日DeFiに資金が殺到するようになった。仮想通貨の交換サービスの場合、銀行のように何種類かの仮想通貨を用意するわけではない。その結果、当初は流動性が低いという問題を抱えていたため、これに対処すべくプールという仕組みが採用された。
預け入れる人は、仮想通貨を直接借り手に貸すのではなく、まずプールに資金を提供する。この仕組みで流動性の問題が解決され、より資金が集まるようになった。
DeFiブームの背景として、預けた仮想通貨に対して利子が得られるだけでなく、トークンが付与され、トークンが値上がりしたことで大きなリターンをもたらされることが挙げられる。これが話題になってブームの起爆剤となった。現在は仮想通貨の交換だけだが、今後、現実の通貨との交換が可能になれば、DeFiの利用範囲は一挙に拡大するだろう。
どのようなリスクがあるのか
高い収益性が話題になって仮想通貨業界の牽引役をはたしたDeFiだが、ステーブルコインの1つであるテラの大暴落などが影響し、DeFi市場のリスクも露呈し始めた。仮想通貨が暴落したことで、担保の価値が目減りし、強制清算されるケースが多々発生、投資家に損失をもたらした。また、DeFiでは本人確認が行われないため、マネーロンダリングやテロ資金としての取引など、さまざまな問題がついてまわり、政府当局では規制をしようと動いている。
被害が発生した際の法的責任の曖昧さや消費者保護に関する不確実性などもあり、課題となっている。また、コードの設定ミスやバグといったスマートコントラクトの欠陥によって、DeFiに預けられた巨額の資金が流出する事件が相次ぐなど、スマートコントラクトの脆弱性を標的にする外部からの攻撃も頻発している。
たとえば、21年8月10日、DeFiを手がけるポリ・ネットワークが、ハッカー攻撃により約6億ドル(約660億円)相当の仮想通貨が流出したと発表。被害額は18年のコインチェック事件を上回る額であった。さらにトークンセールをした運営側が資金を持ち逃げする事件や、DeFiサービスを立ち上げた他社のコードをそのままコピーして、サイトを立ち上げ、資金だけ集めてサービスを中断し、持ち逃げするなどの事件などが発生している。
DeFiの高い収益性の裏には、高いリスクが潜んでおり、初心者には向かない投資であるともいえる。革新的な技術を活用したDeFiではあるが、今後、実施される規制を乗り越えて成長していくのか、それとも市場が縮小していくのか、誰にもわからない。
現在は被害が発生した際の保険制度も整備されていないが、いつかはそのような制度も整備される日が来るだろう。DeFiが既存の金融と並立するのか、それとも一時のブームに終わるのか、もう少し様子を見ていく必要があるだろう。
(了)
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