世界的音楽グループ「BTS」、突然の活動休止発表（前）

日韓ビジネスコンサルタント
劉 明鎬 氏

世界中で愛される「BTS」

　「BTS」は韓国ではビートルズに例えられるほどで、世界中に熱狂的なファンがいる。「BTS」はアジアだけではなく、アメリカ、ヨーロッパなど世界中にK-POPを広めており、韓国コンテンツ輸出の先鋒的な役割を担っている。また、「イカゲーム」を始めとした韓国のドラマも、Netflixの動画配信サービスのおかげで、世界中の人々から愛されており、まさに全盛期を謳歌しているといっても良いだろう。

　現在、韓国のエンターテインメント業界はNetflixでの動画配信コンテンツと、「BTS」コンテンツの両輪で成り立っている。音楽グループの場合、韓国国内をターゲットにすると、市場規模が小さすぎるため、はじめから海外進出を前提にして、世界基準のレベルに到達すべく養成されている。練習生を採り、トレーニングするという一連のシステムのなかで、音楽グループが誕生する。練習生は世界に通用するような素質を持つ人材が厳選され、歌やダンスに磨きがかけられていく。その期間は、3年から5年、トレーニングはとても厳しく、外国語も堪能になるように養成される。

   「BTS」は韓国を代表するような大きな事務所に入ったわけでもなく、最初はあまり注目される存在ではなかった。そこで、「BTS」は既存のライバルとは異なる広報戦略をとった。テレビに出演する代わりに、SNSをうまく活用したのである。

　ダンスやパフォーマンスレベルの高さ、世界の若者の心に響く歌詞などにより、「BTS」は世界中で熱狂的なファンを獲得していった。ファンの数は全世界で数千万人に上り、動画に歌詞を翻訳して字幕を付ける、広報活動に励むなど、とにかく熱狂的で、「世界最強のファン」で構成された「ARMY」の存在が「BTS」成功の要因のひとつだとされている。

　「BTS」がデビューしたのは2013年で、デビュー9周年を迎えたばかりだが、14日にグループ活動の休止を発表し、全世界のファンに動揺が広がっている。「BTS」は20年8月に「Dynamite」を発表し、全米ビルボードチャートのトップを獲得。韓国人アーティストとしては初めてで、アジアのアーティストとしては、63年の日本人歌手・坂本九に次ぐ、57年ぶりの快挙であった。21年にはグラミー賞に初めてノミネートされたり、「ビルボード・ミュージック・アワード」で4冠に輝いたりもした。それから「2022 ビルボード・ミュージック・アワード」で3部門を受賞、「アメリカン・ミュージック・アワード」ではアジア人アーティストとして初めて大賞を受賞している。

　「BTS」は、アメリカのバイデン大統領との会談や韓国での文化勲章受章など、これまで数多くの実績を残してきた。多くの熱狂的なファンを獲得し、ますます活躍が期待されるなかでの突然の活動休止発表にエンタメ界に大きな衝撃が走っている。

（つづく）