2024年11月21日( 木 )

福証IPOアンバサダー制度 上場を目指す経営者をサポート

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 福岡証券取引所(以下、福証)は、上場を目指す経営者に向けたサポート制度「福証IPOアンバサダー制度」を創設した。実際に上場をはたした経営者と1対1で相談できる場を構築することで、上場に対する不安の解消など主に「メンタルヘルスケアサポート」を提供する。

【IPOアンバサダー(企業名五十音順)】
(株)エムビーエス(山口)
 ── 代表取締役社長 山本 貴士 氏
(株)グランディーズ(大分)
 ── 代表取締役社長 亀井  浩 氏
(株)cotta(大分)
 ── 代表取締役会長 佐藤 成一 氏
(株)テノ.ホールディングス(福岡)
 ── 代表取締役社長 池内比呂子 氏
(株)ピー・ビーシステムズ(福岡)
 ── 代表取締役社長 冨田 和久 氏
(株)フロンティア(福岡)
 ── 代表取締役社長 山田 紀之 氏
(株)Lib Work(熊本)
 ── 代表取締役社長 瀬口  力 氏

上場志向企業の経営者をIPOに向けてサポート

 福証は、上場志向企業の経営者と上場企業の経営者をマッチングし、地域からの新規上場を増やすための取り組みとして、新たに「福証IPOアンバサダー制度」を創設した。もともと福証では、「上場までの実体験を聞きたい」「直面する課題を相談したい」と要望する上場志向の経営者に対し、相談役となる上場企業の経営者を紹介していた。今回、制度化した背景には、「株式上場を通じてさらなる成長を目指す企業をより一層支援していきたい」という思いがある。

 このアンバサダー制度は、1970年代にアメリカで発祥した「メンター制度」に類似している。日本でも厚生労働省が2012年度に「メンター制度導入・ロールモデル普及マニュアル」を作成しており、企業の新人教育をはじめとした多くのコミュニティで導入されている。(一社)日本スタートアップ支援協会では、東証プライム上場企業、東証グロース上場企業からメンター顧問を選出し、スタートアップ企業へのメンタリングを行っている。

 5月18日に発表されたアンバサダーには、福証本則、福証Q-Boardのいずれかに上場する7社(重複して東証プライム、東証グロースに上場する5社を含む)の代表が就任した。制度の概要は、IPOアンバサダーに就任した福証上場企業の経営者が、上場志向の経営者などからの相談に対し、先輩経営者として第三者の立場からアドバイスし、異なる視点から物事を考える機会、キャリア構築に役立つ知見などを提供していくというもの。基本的に相談者の依頼を受けた福証が相談内容をヒアリングし、その後アンバサダーへ取り次ぐことで、経営者同士が話し合える環境を整える。

 「メンタルヘルスケア」もこの制度におけるサポートの一部。上場志向の経営者のなかには、「上場の意思を固めて具体的に準備を進めていくにあたって、事業をうまく成長にもっていくことができず、心が折れてしまいそうになる」と相談する人も多いという。上場したからこそ伝えられる苦労や達成感など、経験談を赤裸々に話せる・聞ける機会を設けることで、上場前に直面する不安などを早期に解消し、地域に根差した上場企業の輩出を促進する。

努力をいとわない熱い経営者たち

 第1回IPOアンバサダーについて、福証担当者は「皆さん熱い気持ちをもった方ばかりで、上場企業が生まれることを地域にとってプラスであると考えてくださっています」と話す。今回、アンバサダーを依頼するうえで決め手となった条件は、上場に至るまでのストーリーがあること、上場を企業成長の通過点と考えていること、そして、上場に関して説明できることの3点であり、福証側から声をかけて決まったという。上場志向の経営者は無料で相談できる。7名のアンバサダーはボランティアで引き受けていることからも、地域に貢献したいという意識が読み取れる。

 この制度を進めていくなかでの付随効果として、「経営者同士の交流が図れる」ことも大きなメリットだろう。気軽に話せる先輩経営者の存在は、上場志向の経営者にとってとても心強いと考えられる。また、アンバサダーと相談者のマッチングは、業種に関係なく組み合わせが決まるため、互いが意見を交換し合うことにより、新たなビジネスのきっかけが生まれる可能性もある。

地域の活性化を目指して

 今はまだ動き始めたばかりの「福証IPOアンバサダー制度」。同制度の活用を通し、「上場を目指している企業の悩みを早期に解決できる場を福証から提供することにより、上場を達成する支援ができれば」と福証の担当者は語る。福証では同制度のほか、3~5年以内の上場を目標とし、集中的なサポートを受けられる「九州IPO挑戦隊」や、「福証IPOセミナー」をはじめとした各種講演会の定期開催など、さまざまな取り組みが行われている。

 ここで忘れてはならないのが、「上場はゴールではなく、通過点である」ということだろう。株式の公開により、たくさんの投資家の目に触れる機会が増える。なかには厳しい目ももちろんあるだろう。しかし、「見られる意識」をもつことで、常に前向きに物事を捉え、事業の成長を促進できるようになるとも考えられる。

 上場企業が誕生すれば、地域活性化が促進されることはいうまでもない。「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」が推進されている福岡では、この政策が上場企業誕生の追い風になることも十分に考えられる。地域に根差した上場企業の輩出をサポートする福証の取り組みが、九州・山口、ひいては日本全体の活力となることに期待したい。

【立野 夏海】

福証IPOアンバサダーのコメント
(企業名五十音順)

(株)エムビーエス
代表取締役社長 山本 貴士 氏

    福岡証券取引所さまより設立の経緯や思いをおうかがいし、地方上場企業の当社の今までの経緯や取り組みが少しでもお役に立てられるのではないかと思い、就任させていただきました。やるからには名ばかりにならぬよう、しっかりやらねばという責任も感じています。
 就任にあたり、今までの経験で培ったすべてを生かし、問題解決や相談事に真摯に向き合いながら、しっかりサポートできるよう努めたいと思います。とくに「ピンチピンチ、チャンスチャンス、ランランラン♬」の精神を共有できるように!

(株)グランディーズ
代表取締役社長 亀井 浩 氏

    当社が2012年にQ-Boardに上場した際には、福証関係者の皆さまやIPO関係の皆さまには大変お世話になりました。その恩返しの意味でも、また九州から多くの上場企業が誕生し活気がつけばと思い、微力ながらアンバサダーをお引き受けしました。
 形式的な基準や実務の面では、私どもでなくともさまざまなサポートができる方々がいると思います。そこで、経営者としての判断基準や心構え、考え方など、経営者にしかわからない面でのサポートができればと思います。

(株)ピー・ビーシステムズ
代表取締役社長 冨田 和久 氏

    これまで地元上場予備軍の企業へのセミナー講師などをやってきましたが、個別の相談にはなかなか応じることができていませんでした。今回IPOアンバサダー就任の依頼を承諾し、個別相談に応じる機会ができたことで、より本音を伝えられ、上場に向けて良いアドバイスができると考えています。

(株)フロンティア
代表取締役社長 山田 紀之 氏

    私自身、福証のIPO支援プログラムの「九州IPO挑戦隊」に第3期生として2010年から参加していました。昨年11月に福証Q-Boardに株式を上場した経緯もあり、あとに続かれる方に少しでも役立てばと、福証さまからのアンバサダー就任の要請を応諾しました。
 当社は、02年の創業以来20年でIPOをはたしたのですが、その間にも紆余曲折がありました。そのなかで私なりに大切にしてきた事業経営に対する思いや企業理念を、経験に基づきながらお話ししたいと考えています。そのなかから何か参考になることがあれば幸甚です。

(株)Lib Work
代表取締役社長 瀬口 力 氏

    当社も福証に上場をはたし、その上場が当社の成長に大きく寄与したため、少しでもご協力できればと思い、福証の方からの就任要請を引き受けました。
 地方からの上場は情報が少ないため、直近で上場した経験を基に寄り添ったかたちで、上場を目指す方々にアドバイスできればと考えています。

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